2019 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少社会におけるコンパクトシティの健康への影響に関する疫学研究
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18H03047
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20387749)
相田 潤 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (80463777)
中川 雅貴 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第3室長 (80571736)
近藤 克則 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 部長 (20298558)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人口減少 / コンパクトシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、(1) 地域の人口減少の健康への影響及びその機序、(2) 転居の健康への正及び負の影響、(3) 都市機能充実の健康への影響及び人口減少との交互作用をそれぞれ明らかにすることの3点を目的として実施している。交互作用については、人口減少が健康への負の影響をもたらし、市町村全体の人口が減少していても、中心市街地の都市機能が充実することによって健康への負の影響が抑制されるかをみる。 2019年度は、地域在住高齢者への大規模郵送調査を実施した。今後、データクリーニング及び分析を進めて行く。また、前年度から進めていた、本研究の対象地域について、国勢調査による人口データの整理を行った。さらに、これまでに蓄積したデータを分析し、「コンパクトシティの検討のための市町村内転居に関する研究」として学会発表を行った。具体的には、2010年度、2013年度、2016年度に継続的に郵送調査を行ったデータを用いて、2013年度に現在地での居住年数が3年以下と回答した人を転居群、3年超と回答した人を非転居群と操作的に定義した。転居群か否かを説明変数、2016年度の抑うつ傾向、主観的健康観を目的変数、性、年齢、等価所得、2013年度の抑うつ傾向または主観的健康観を調整変数としてロジスティック回帰分析を行った。転居の2016年度の抑うつ傾向へのオッズ比(OR)は、1.41 (p=0.02)と有意に高かった。種々の属性別に見ると、2013年度におけるスポーツのグループ等への参加頻度が週1~月1回参加群でORが0.745と有意ではないが抑うつリスクが低い傾向であった。転居の2016年度の主観的健康観良好へのORは1.284と有意ではないが良い傾向であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、初年度の2018年度は、文献等の情報収集、既存データの整理、追跡と予備的分析、新規調査項目の検討等の4本柱を進めた。文献等の情報収集としては、人口減少、コンパクトシティなどに関する国内外の文献収集、またそれらに対する各市町村での取り組み状況の情報収集を行った。 2019年度は、地域在住高齢者への大規模郵送調査について、計画通り実施した。この調査は、高齢者の健康状態等のアウトカムの把握と、今後の追跡に向けてのベースライン状態の把握という大きく2つの意義をもつ。アウトカムの把握に関しては、これまでの調査に回答してコホート研究に参加している高齢者の現在の健康状態等の調査となる。健康状態に関する調査項目としては、治療中疾患の有無及び種類、主観的健康観、Geriatric Depression Scale (GDS)による抑うつ状態の程度、老研式活動能力指標による手段的日常生活動作(IADL)などである。また、健康状態と関連が強い要因として、痩せ(身長・体重)、過去1年間の転倒、外出頻度、歩行時間、趣味の会・スポーツの会など種々の活動への参加状況などが含まれる。一方で、ベースラインの変数としては、最近の転居の有無(現在地の居住年数)、持ち家の状況、所得、家族構成、近所づきあいの程度、友人・知人と会う頻度、社会的支援の受領及び提供の状況、自動車の運転を始めとした利用している交通手段、公共交通機関・商店の充実度等の地域の状況などが含まれる。 また、これまでに蓄積したデータを分析し、「コンパクトシティの検討のための市町村内転居に関する研究」として学会発表を行った。転居は全体としては高齢者のメンタルヘルスに好ましくないが、高齢者の状況によって、また健康指標の種類によっては良い影響の可能性があるという結果を示すことができ、研究計画に沿って研究実績を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度に実施した大規模調査のデータクリーニング及び分析が主要な実施内容である。前年度の大規模調査は、前述のように高齢者の健康状態等のアウトカムの把握と、今後の追跡に向けてのベースライン状態の把握という大きく2つの意義をもつ。アウトカムの把握に関しては、我々は、日本老年学的評価研究(JAGES)の一貫として、2010年度、2013年、2016年に、自記式郵送調査を行っている。この調査の参加者の2019年度における状況とデータを結合し、分析を進めて行く。また、2019年度調査をベースラインとした研究については、以前からの追跡対象者を含めて、市町村の介護保険賦課情報の提供を受け要介護認定、死亡、転居等の追跡を継続的に行っていく。死亡については、死因別の死亡状況との関連の分析に向けての準備を進める。さらに、地域の都市機能データや国勢調査データを活用した分析等を進める。 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、人口や生活行動への影響や都市のあり方についての価値観の変化などが起こる可能性があるため、状況によりそれらの検討も行う。
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