2019 Fiscal Year Annual Research Report
A case study research method for developing knowledge of expert care practices
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18H03069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 則子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (90280924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 智代枝 大正大学, 人間学部, 教授 (00317645)
宮本 有紀 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10292616)
榊原 哲也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20205727)
石原 孝二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30291991)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
山花 令子 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (40642012)
野口 麻衣子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60734530)
池田 真理 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (70610210)
齋藤 凡 東京大学, 医学部附属病院, 看護師 (80710748)
柄澤 清美 新潟青陵大学, 看護学部, 教授 (90339945)
吉田 滋子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (90565996)
家高 洋 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 准教授 (70456937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実践知 / 事例研究 / 現象学 / 質的研究 / 研究方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き看護実践の事例研究にとりくみつつ、事例研究セミナー、研究会、文献抄読会、学会交流集会での意見交換と協働を進めた。事例研究は10本程度検討を継続し、うち研究代表者、研究分担者が支援した論文3編を投稿中である。7月・11月に2日連続の事例研究セミナーを計2回開催し、研究方法の普及に努めるとともに、新たな事例研究の開始を支援した。文献学習会では、現象学やオートエスノグラフィに関する文献を抄読し、本研究で開発中の「ケアの意味を見つめる事例研究」方法との関連について考察した。これらの成果を日本看護科学学会「看護における事例研究の査読基準を考える」および日本在宅看護学会「訪問看護実践の見える化をしてみよう!訪問看護の最前線で取り組む事例研究」の2つの交流集会で共有し、参加者とディスカッションした。 開発中の「ケアの意味を見つめる事例研究」方法の学問性を整理したり、個別の事例研究の学術的厳密性を評価したりする上では、実証主義に基づく従来の研究活動の評価基準を参照しつつ、この事例研究の特徴に合わせた内容を詳細に検討する必要がある。「ケアの意味を見つめる事例研究」の特徴は実際に事例研究に取り組みつつわかってゆく部分も多く、この整理がいまだ途上である。投稿した事例研究論文の査読においては、①客観性、②再現可能性(信頼性)、③一般化可能性(外的妥当性)、④新規性に関する疑義が述べられることが多い。これらの一部は事例研究でも必要である一方、一回性を特徴とする対人の実践である看護の検討には当てはまらないものある。看護師と患者の共同体験である個別の事例から、次なる実践のために何をどのように他者が学ぶか。「ケアの意味をみつめる事例研究」の学問性を検討する上では、そのような事例研究からの学びのプロセスを整理し説明することが課題と思われる。特に論文読者の立場からの学びの様相を今後検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)事例研究論文の蓄積を進めたいが、投稿に至る事例研究論文への数は予定ほど増えていない。実践者にとって、「ケアの意味を見つめる事例研究」の枠組みで事例を検討し、そこからの気づきを得ることは有意義なようだが、そこから不特定多数の読者に宛てた研究論文にまとめるには、現在の研究方法の説明枠組みでは、まだ説明が不足しているためではないかと推察される。 2)1)の状況であるために、事例研究のメタ統合の試みがまだ開始できていない。事例検討会を複数回実施する中では、複数事例に共通する、「うまくいったと感じられる」看護実践の要素があり、それを端的な言葉でとりあげ、共有可能にすることはできるような印象がある。そのような「共有可能な看護実践の要素」がどのような性質をもつのか、なぜ、複数事例にまたがって共通する要素だと感じられるのか、の検討が今後必要であるが、十分な数の事例研究論文が作成できないことから、その検討が十分にできない。 3)事例研究論文の投稿に際しては、多様な査読意見があるが、事例研究の学問性に関する疑義も多い。研究の学問性に関しては、実証主義的科学観と自然主義的なそれとの基本的な共約不可能性(incommensurability)に帰される場合も多く、この点について査読者の理解を得ることがしばしば困難である。 4)事例研究の学問性に関して、文献抄読会を開催しているが、文献の学習が遅れ気味である。定期的に抄読会を開催しているが、その内容と「ケアの意味を見つめる事例研究」との関連に関する検討が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)事例研究論文をまとめ上げるための、より簡便なプロセスづくりを試みたい。また、学術誌への掲載にはかなりの時間を要するため、学術誌以外の論文公表方法を考えていきたい。 2)「ケアの意味を見つめる事例研究」と、既存の研究方法、哲学文献との関係については、抄読会における検討を進め、看護学研究に関連する雑誌等をプラットフォームとして継続的に論考を発表したい。
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Research Products
(5 results)