2019 Fiscal Year Annual Research Report
運動トレーニングによる代謝恒常性に及ぼす視床下部の強化基盤
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18H03152
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
志内 哲也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (70372729)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運動習慣 / 視床下部 / サイトカイン / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部は自律神経系や内分泌系を司り、生体内のエネルギーバランスを一定に保つため のセットポイントを規定する。視床下部のエネルギー代謝調節システムは、神経細胞レベルでの不可逆的な変化を伴う可能性がある。視床下部の神経幹細胞(hNSC)は、神経新生に寄与する。それゆえ、視床下部ニューロンに入れ替わりは、生体内のエネルギーバランスのセットポイントに大きく影響する。そこで本研究では、運動によるhyNSCの増殖が視床下部によるエネルギー代謝調節システムを是正すると仮定し、そのメカニズムと生理学的意義の解明を目的とした。 今年度は、マウスの自発運動により、視床下部におけるレプチンの感受性が亢進することを見出した。この作用は、オレキシンニューロンの活性化をともなって、レプチンが末梢から中枢へ移行が促進することによる。さらに、median eminenceを含む、内側基底部の視床下部におけるErkのリン酸化がレプチンの中枢への移行を促進している可能性が示唆された。このことは、運動が視床下部ニューロンに大きく影響を与える可能性を示唆する。 一方、継続した自発的運動により、マウスのhNSCが増加することを見出した。神経幹細胞を増殖させる刺激として、脳内のサイトカインが知られているが、運動によりhNSC に作用するサイトカインは不明である。そこで、回転かごを用いた自発的な運動トレーニングを用いて、運動中および運動終了後のマウス内側視床下部(hNSC が存在する第三脳室と隣接する部分)を採取した。サンプルをホモジナイズした抽出液を用いてサイトカインアレイ解析を行い、運動により増減したサイトカインを網羅的に探索した。現在、結果を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究協力者の体調不良による研究開始遅れがそのままスライドしている。加えて、新型コロナ対策として大学運営にも時間をとられているため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
hyNSC はニューロンに分化する。運動により増殖したhyNSC がニューロンに分化して視床下部における既存の神経回路に融合するのかを調べるため、増殖細胞マーカーであるBrdU 抗体と神経細胞マーカーであるNeuN 抗体を用いて、免疫組織化学染色法により共染色する。また、視床下部ニューロンは発現する神経ペプチドにより生理作用が異なるため、各神経ペプチドに対する抗体を用いて、どのような神経ペプチドを産生するニューロンに分化したのかを同定する。 また、昨年度までに得られた運動由来サイトカインが神経分化に関与するかについて、中和抗体や阻害薬を脳室内に投与しながら運動トレーニングを行う。トレーニング後、全身のエネルギー代謝や糖代謝、および骨格筋のインスリン感受性を評価する。さらに、視床下部のレプチン感受性も調べることで、運動トレーニングによるエネルギー代謝亢進作用に対する増殖・分化したhyNSC の重要性が明らかになる。
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