2021 Fiscal Year Annual Research Report
量子論的生体認証:生体情報の新たな物理的様相に踏み込む微細生体認証技術
Project/Area Number |
18H03239
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西垣 正勝 静岡大学, 情報学部, 教授 (20283335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 哲史 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80537407)
大塚 玲 情報セキュリティ大学院大学, その他の研究科, 教授 (50415650)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 微細生体 / 爪 / 肌理 / なりすまし / プライバシ |
Outline of Annual Research Achievements |
生体認証には、「生体情報は生涯不変であり、任意に更新できない」という物理的性質に起因する、なりすましと追跡可能性の問題が存在する。本研究では、微細生体部位の利用というアプローチによって生体情報の「生涯不変であり、任意に更新できない」という物理的性質の壁を突破し、なりすましに関する問題(問題1)と追跡可能性に関する問題(問題2)を解決する生体認証技術の確立を目指す。 問題1の解決:一般に、模倣品をより細部まで作り込むにつれて、その製造にかかる手間が非常に高くなるが、(光の波長程度までのサイズの物体であれば)ズームレンズを使って対象物の細部を撮影することは、模造に比べはるかに容易である。この「撮影と偽造のコストの非対称性」を利用し、ある微細部位の生体情報を認証情報とすることによって、たとえその部位の情報が盗まれたとしても偽造に大きなコストを要する生体認証が実現される。 問題2の解決:我々の身体は、指紋のパターンや骨格の形状などは比較的長期に渡って変化しないが、皮膚組織や骨組織のレベルでは新陳代謝によって日々入れ替わっている。このように、生体情報も、取り扱うサイズが微細になれば、その物理的様相が変わる。ユーザがある時点で生体情報を登録したとしても、生体部位が入れ替わる度に、その生体情報自体が消滅し、追跡可能性が分断されることになる。 拡大鏡によって撮影される微細「爪」画像、微細「皮膚」画像を用いた生体認証システムの設計・実装・評価と、利便性・安全性の強化を行う。物理的な生体情報そのものの保護を達成する本研究に、既存のテンプレート保護技術(ビット列に符号化された生体情報を保護する技術)および生体検知技術を融合し、利便性とプライバシを保ちながら生体認証の安全性を確保する。 IDレス認証(1:N認証)化を含む、マイクロ生体認証の更なる応用先についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、μmレベルの微細生体部位の利用によって、問題1(なりすまし耐性:偽造生体作成の困難化)と問題2(追跡困難性:登録生体部位の消失)を同時に達成する生体認証技術の実現を検討した。具体的には、1mm角の爪の表面の微細凹凸模様を200倍に拡大した画像を用いた生体認証(爪マイクロ生体認証)システムを実装し、実証実験を通じてその性能を評価した。その成果については国際会議および国内研究会にて発表を行った。 2019年度は、爪マイクロ生体認証の認証精度の向上を検討した。具体的には、認証精度の劣化を引き起こす原因となっていた爪表面の半鏡面反射と高倍率撮影の際の手ブレの問題を、3Dプリンタを活用して撮影用治具を開発することによって改善した。その成果を国内シンポジウムにて発表し、優秀デモンストレーション賞を受賞した。 2020年度は、爪マイクロ生体認証システムに対する2019年度の成果を国際会議にて発表した。また、高倍率撮影の手ブレ問題を緩和するために、爪マイクロ生体認証に生体検知を融合させる方法を検討した。更に、爪マイクロ生体認証システムに、テンプレート保護技術(ビット列に符号化された生体情報を保護する技術)を融合させる方法を検討した。その成果を国内シンポジウムにて発表した。 2021年度は、爪マイクロ生体認証システムに、生体検知技術およびテンプレート保護技術の両者を融合させる方式を検討した。その成果を国内ジャーナルにて発表した。また、掌紋をモダリティとして、マイクロ生体認証のIDレス認証(1:N認証)化に関する検討を開始した。その成果を国内研究会にて発表した。 以上より、達成度は「概ね順調に進展している」に区分されると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は前年度の研究成果を引き継いで、以下の研究を推進する。 (1)マイクロ生体認証システムの改良:2021年度までに実装した「生体検知技術およびテンプレート保護技術を融合させた爪マイクロ生体認証システム」に対する更なる改良を検討する。 (2)IDレス型マイクロ生体認証の検討:掌紋をモダリティとして、マイクロ生体認証のIDレス認証(1:N認証)化を実現する方法について、2020年からの検討を継続して実施する。IDレス認証の高速化と高精度のためのフィルタリング方式について検討する。 (3)マイクロ生体認証の応用先の検討:皮膚や爪以外のモダリティへのマイクロ生体認証の適用や、既存の実サービスへのマイクロ生体認証の適用など、マイクロ生体認証の新たな応用先を検討していく。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Improving Rank-N Identification Rate of Palmprint Identification Using Permutation-based Indexing2022
Author(s)
Mizuho Yoshihira, Ayumi Serizawa, Ryosuke Okudera, Yumo Ouchi, Yuya Shiomi, Naoya Nitta, Masataka Nakahara, Akira Baba, Yutaka Miyake, Tetsushi Ohki, Masakatsu Nishigaki
Organizer
Proceedings of 2022 International Conference on Human-Computer Interaction(採録決定)
Int'l Joint Research
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