2018 Fiscal Year Annual Research Report
多元的音情報に基づく口腔機能・摂食嚥下機能評価システムの開発と検証
Project/Area Number |
18H03260
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西村 雅史 静岡大学, 情報学部, 教授 (60740363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒岩 眞吾 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20333510)
森野 智子 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 講師 (20582703)
津賀 一弘 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60217289)
西田 昌史 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80361442)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 摂食嚥下機能 / 行動認識 / 嚥下障害 / 嚥下音 / 咀嚼音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では音情報処理の研究者と,口腔,摂食嚥下のそれぞれの医療に関わる研究者が連携し,音情報を活用した非侵襲で簡便な摂食嚥下機能評価技術の開発を目指している.具体的には,音を中心とした多元的なセンサー情報と,機械学習に基づく情報の統合・識別によって,摂食行動に関連するメタ情報を自動抽出する方法を開発すること.また,医学的な見地から,高齢者の摂食嚥下機能の変化を評価可能な特徴量(バイオマーカ)の選定,検証を行い,医療従事者だけでなく,高齢者自身やその家族が機能低下による変化に気づくことが可能な測定システムの開発につなげること,を目標としている. 研究計画に則り,本年度は1)摂食嚥下行動に関わる情報収集プラットフォームの開発ならびにデータベース構築,2)嚥下障害者の音声特徴の分析,3)摂食嚥下に関わる行動メタ情報の自動抽出の検討を行った.1の情報収集については,通常の接話マイクに加え,主に嚥下音を対象として咽喉部上下に装着するステレオマイク,また,咀嚼音を対象として首の左右に装着するステレオマイクを新たに提案し,嚥下障害者の嚥下音聴診,健常者の咀嚼回数検出,さらには音声認識にも利用して,摂食嚥下行動に関わる様々な音に対して高品質なデータが収集できることを確認した.データベース構築についてはマイク等の検証を待って開始したことから当初予定した量のデータ整備は年度内には完了できなかった.また,2については,嚥下障害者の声に含まれる特徴を明らかにするため,梨状窩付近に残留物がある状況を模して,その音響特徴の変化を調査した.3については強ラベルを必要としない新しい学習方法を適用することで,時間とコストをかけて強ラベルを大量に用意しないでも高い認識性能を得られる見通しを得た. 上記の研究活動の中で得られた成果については,国内学会で6件の成果発表を行い,うち2件が奨励賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摂食嚥下行動に関する音データの収集手段についての検討を行い,多チャンネルマイクでの生体音収集が,被験者への負担も小さく,簡便に行えること,さらには,そこで得られる情報が,咀嚼音や嚥下音,さらには音声や咳嗽といった生体から発せられる音情報を正確に取得する上で有効であることを,咀嚼や嚥下の自動検出,さらには音声認識などの性能評価実験を通して確認することができた.新しいデータ収集方法を確定でき,その有効性を確認できたことは今後本研究を進める上で大変大きな成果だと考えている.なお,データ収集用のマイクの性能評価・検証に時間を要したため,2018年度末の段階では摂食嚥下行動関連データの収集ならびにデータベース構築作業に3ヶ月ほどの遅れが出ていた.ただ,その状況は既に解消されている. 音声や嚥下音から嚥下障害の特徴を見出す研究についても,梨状窩における食物残留状態を模擬することでその特徴を見出す方法を検討し,特徴がスペクトル形状に現れることを確認することができた. 摂食嚥下行動の行動メタ情報の自動検出についても検討を進めた.従来の機械学習方法では,通常,強ラベルと呼ばれる正確な時間情報のついたラベルを人手で付与する必要がある.上記のデータベース構築においてはその作業を行なっているが,一分程度のラベリングに1時間といった時間がかかる場合もあり,その作業コストは非常に大きい.この問題に対処するため,弱ラベルと呼ばれる,時間情報のない音イベント列情報だけで一連の摂食嚥下行動を認識できる方法を開発し,強ラベルを大量に用意しなくても高い性能が得られる見通しを得ることができた.これによって今後の研究開発を一層加速できるものと確信している.
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Strategy for Future Research Activity |
摂食嚥下行動データベースの構築を今後も継続して行う.特に,これまでの健常者に加え,義歯装着高齢者のデータ収集を行い,データベースの拡充を図る.また,嚥下については検診や診察時のデータに加え,高齢者の長期的な嚥下機能の低下を調査するためのデータ収集プラットフォームを新たに開発する.特に,嚥下機能低下の簡便な指標として,食事中のむせ(咳嗽)の回数に着目し,嚥下音や咳嗽音を在宅のままオンライン収集してサーバー上で分析するシステムを提供し,運用を行う予定である.このデータは協力病院に診療補助データとして役立ててもらうとともに,研究用にもデータベース化を行い,咳嗽の自動検出方法を検討する. 嚥下障害に関する音響分析としては,嚥下造影時の映像と収録音との対比の分析を進めることで,産生部位に対する音響特徴を明らかにするとともに,音声に現れる特徴についても声道モデルを使った分析などを実施する予定である. また,摂食行動については,多チャンネル収録データの情報を生かして,左右咀嚼位置を含めた検出可能性の検討を進めるとともに,時系列としての性質を考慮するため,Attention機構の導入を検討する予定である.
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Research Products
(6 results)