2018 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of climate effects of black carbon over the Arctic with an advanced earth system model
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18H03363
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
大島 長 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50590064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (10515026)
青木 輝夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30354492)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エアロゾル / 黒色炭素粒子 / 気候変動 / 環境変動 / 北極 / 気候モデル / 雪氷 / 大気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに開発・改良を行ってきた気象研究所地球システムモデルを用いて、観測が充実する近年(2008-2015年)を対象とした計算を実施した。既存の地上・航空機・衛星・積雪等の観測結果を用いて、モデル計算結果の検証を実施したところ、北極域・東アジア域の地上で観測された大気中ブラックカーボン濃度の季節変化、北極域・東アジア域・太平洋上等で観測された大気中ブラックカーボン濃度の鉛直分布、北極域での積雪中ブラックカーボン(積雪不純物)濃度の広域分布等の再現性が従来よりも大きく向上した。積雪のアルベドは積雪粒径と積雪不純物(光吸収性粒子)濃度に強く依存する。グリーンランド氷床上のこれら積雪物理量の変動実態を把握するため、2000-2018年におけるMODISデータから表層積雪粒径(Rs1)、積雪不純物濃度(Cs)を抽出し、それらの時空間変動を調べた結果、Rs1の経年変化は7-8月に増加トレンドを示したが、2012年に観測期間の最大値を記録した後、2013年、2017-18年に観測初期と同程度の小粒径を記録し、統計的には有意な増加トレンドではなかった。7月のRs1とNorth Atlantic Oscillation (NAO)インデックスとの関係を調べた結果、有意な相関が見られ、Rs1は気温変動に支配されていることが示唆された。一方、Csは僅かな増加トレンドが見られたが、衛星による測定限界付近の濃度のため衛星センサー感度変動などの影響を受けている可能性がある。また、地球システムモデルの計算結果を入力として、積雪変質モデルSMAPを駆動するための予備調査と計算フレームワーク構築のための試行を行うとともに、時空間的に高解像度な極域気候モデルNHM-SMAP v1.0による1980年から現在にかけてのグリーンランド気候計算を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気象研究所地球システムモデルおよび積雪変質モデルの検証・高度化を実施した。とくに北極域の多点での地上観測により得られた積雪不純物(ブラックカーボン)濃度について、観測結果とモデル計算結果の比較・検証を実施した。また、北半球で最も大きな氷床であり、近年表面融解が顕著に進んでいるグリーンランド氷床で、衛星観測から近年の積雪アルベド低下に影響を与える積雪粒径の変動実態が明らかになった。積雪のアルベドは積雪不純物濃度と積雪粒径に強く依存するため、観測により得られた新たな知見は、今後のモデルの検証・高度化を行う上で必要不可欠な成果である。また、時空間的に高解像度な極域気候モデルNHM-SMAP v1.0による1980年から現在にかけてのグリーンランド気候計算結果は、地球システムモデルによる気候計算結果のリファレンス情報として活用できるため、今後の地球システムモデルの検証・高度化を行う上で重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
気象研究所地球システムモデルによる計算結果と観測結果との比較を引き続き実施する。とくに、衛星によるグリーンランドの氷床上の積雪物理量の抽出を継続して実施することで、モデルで計算される積雪変質過程の検証を実施する。さらに、グリーンランド氷床のアイスコアから求めたブラックカーボン濃度と衛星抽出積雪粒径データから過去20年間におけるブラックカーボンによる放射強制力の時空間分布を求める。また、地球システムモデルの計算結果を積雪変質モデルSMAPに入力し、極域における雪氷物理状態の変化を詳細に計算し、収集した観測データによる検証を実施する。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] NHM-Chem, the Japan Meteorological Agency’s Regional Meteorology - Chemistry Model: Model Evaluations toward the Consistent Predictions of the Chemical, Physical, and Optical Properties of Aerosols2019
Author(s)
Kajino, M., M. Deushi, T. T. Sekiyama, N. Oshima, K. Yumimoto, T. Y. Tanaka, J. Ching, A. Hashimoto, T. Yamamoto, M. Ikegami, A. Kamada, M. Miyashita, Y. Inomata, S. Shima, K. Adachi, Y. Zaizen, Y. Igarashi, H. Ueda, T. Maki, M. Mikami
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Journal Title
J. Meteor. Soc. Japan
Volume: 97(2)
Pages: 337-374
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Field activities at the SIGMA-A site, northwestern Greenland Ice Sheet, 20172018
Author(s)
Matoba, S., M. Niwano, T. Tanikawa, Y. Iizuka, T. Yamasaki, Y. Kurosaki, T. Aoki, A. Hashimoto, M. Hosaka, and S. Sugiyama
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Journal Title
Bull. Glaciol. Res.
Volume: 36
Pages: 15-22
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] GCOM-C data validation plan for land, atmosphere, ocean, and cryosphere2018
Author(s)
Hori, M., H. Murakami, R. Miyazaki, Y. Honda, K. Nasahara, K. Kajiwara, T. Y. Nakajima, H. Irie, M. Toritani, T. Hirawake, and T. Aoki
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Journal Title
Transactions of JSASS, Aerospace Technology Japan “ISTS Special Issue”
Volume: 16(3)
Pages: 218-223
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Improvement of GCOM-C/SGLI snow/ice algorithms, and their validation with in-situ measurements and a numerical model2019
Author(s)
Aoki, T., T. Tanikawa, M. Niwano, R. Shimada, M. Hori, S. Matoba, H. Ishimoto, A. Hachikubo, K. Stamnes, W. Li, and N. Chen
Organizer
Joint PI Meeting of Global Environment Observation Mission FY2018
Int'l Joint Research
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[Presentation] 気象研究所地球システムモデルによる北極域におけるブラックカーボンの評価2018
Author(s)
大島長, 田中泰宙, 神代剛, 保坂征宏, 吉村裕正, 出牛真, 川合秀明, 行本誠史, 青木輝夫, 飯塚芳徳, 東久美子, 近藤豊, 小池真
Organizer
日本気象学会2018年度秋季大会
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[Presentation] 気象研究所地球システムモデルによる北極域におけるブラックカーボンの放射影響評価2018
Author(s)
大島長, 庭野匡思, 青木輝夫, 保坂征宏, 田中泰宙, 神代剛, 吉村裕正, 行本誠史, 東久美子, 近藤豊, 小池真
Organizer
日本気象学会2018年度春季大会
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[Presentation] High resolution polar regional climate model NHM-SMAP for the Greenland Ice Sheet2018
Author(s)
Niwano, M., T. Aoki, A. Hashimoto, S. Matoba, S. Yamaguchi, T. Tanikawa, K. Fujita, A. Tsushima, Y. Iizuka, R. Shimada, and M. Hori
Organizer
2018 AGU Fall Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] グリーンランド氷床上における温度上昇に伴う積雪粒径成長と近赤外域アルベド低下2018
Author(s)
青木輝夫, 庭野匡思, 谷川朋範, 石元裕史, 堀雅裕, 島田利元, 的場澄人, 山崎哲秀, 山口悟, 藤田耕史, 飯塚芳徳, 本山秀明
Organizer
日本地球惑星科学連合2018年度連合大会
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