2020 Fiscal Year Annual Research Report
拡張精緻化見込モデルによる東アジア・インバウンド観光者の情報消費行動研究
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18H03456
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 直哉 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (60261228)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精緻化見込みモデル / リスク / COVID-19 / パンデミック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2018年度よりデータによる検証年に入り、データ収集、分析、結果のまとめ、学会発表、論文作成を繰り返してきた。このような実証研究サイクルは、国際学会の停滞と、海外への移動不可というネガティブな側面をもたらしたが、研究テーマとしては、リスク項目要因の深化拡張という千載一遇の好機をもたらし、多くのデータ収集とテーマ発掘の機会をもたらした。 当初、精緻化見込みモデルを基にした基礎比較研究を中心に行ってきたが、2019年後半に入ると、新型コロナウイルスによるパンデミックにより、その影響が世界全体へと広がっていった。この状況下において、一般的精緻化見込みモデルにおける「議論の質」と「情報源信頼性」の二つのルートに対し、「リスク」変数が、大きな調節変数として働いていることが想定された。したがって、2019年度以降、大きく研究方向性を修正し、新型コロナウイルス・パンデミック状況下における精緻化見込みモデルの可能性と限界の探求に、研究目的の方向性を修正して現在に至っている。 2019年度後半のコロナ対応調査に引き続き、本年度も同様に、日本国内3か所、中国2か所、シンガポール等、計6か所の調査を実施した。精緻化見込みモデルにおけるリスクの調整機能、およびルート選択の支配性等、各都市の特徴に関しての分析を開始した。本調査の分析結果は、2020年の国際学会、IFITT等で既に口頭発表されている。2021年段階、未だにパンデミックの影響は大きく、多くの国際学会はオンラインで開催されているが、コロナ初期にお行ける分析研究も出版されはじめ、本研究とともに、新たなリスク研究の方向性が模索されている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、2019年度より本格的実証調査が始まり、当初は観光消費行動とリスク、社会関係資本の関係を考察する予定であった。しかしながら、2019年終盤より、アジアより始まったパンデミックは、世界的パンデミックへと連鎖が拡大し、2020年に入ると、グローバル・パンデミックの様相を呈してきた。本研究が主として研究対象としてきた消費行動、特に観光消費行動は、大きなリスク要因にさらされ、ほとんど産業としては機能しておらず、消費者の消費行動意図も完全に変貌した。 以上の突発的社会背景をもとに、当初想定していたELMの中におけるリスク受容を大幅に拡張深化し、リスク認知、中でもとりわけウイルス関連リスクに焦点を当て、新型コロナウイルスのリスク認知と観光消費行動調査へと調査トピックをシフトし、パンデミック中でしか収集することのできない高リスクデータの収集に奔走した。 その結果、当初予定していた調査件数より多くのリスク調査を実施することとなり、その帰結として、本研究課題が当初想定していた焦点の方向は多少ズレたものの、調査に関するボリュームと深度は格段に向上した。また、当初の計画以上に、国際比較研究の側面が拡大されたという特徴も有している。 本研究は、パンデミックリスク化における精緻化見込みモデルの変貌という、かつてない調査テーマ領域を開拓し、その未知領域に立ち入る研究となっている。国際学会の本格的復活とともに、研究発表と成果に関する機会が待たれているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記載した第一期アジアパンデミック状況を踏まえ、今後は第二期グローバルパンデミック状況を想定した調査を、修正精緻化見込みモデルを活用しながら、新たな方向性を模索しつつ、実証調査中心の本研究を継続的に行う予定である。 第二期グローバル・パンデミックの特徴を考慮すると、第一期調査の精緻化見込みモデルをそのまま使うには限界が生じ、リスクやSelf-Congruity概念を媒介変数とした新らたな精緻化見込みモデルの発展が期待されているところである。両者のモデル構造の相違は、受容されたリスクや態度の質的相違と想定され、第一期と第二期のパンデミックの相違を、態度や行動の変容要因として究明を試みる。このモデルシフトの妥当性向上のため、今後の研究発展の方向性として、媒介変数、調整変数の導入が大きく貢献するものと期待している。 なお、調査対象地域は、第一期の調査対象地に加え、欧米パンデミックの影響を直接的に受けている場所を調査地域に加える予定である。また、台湾のように、社会変容が上手く行った国の事例、シンガポールのように社会変容が遅れた国の比較を行い、日本型モデルがどちらに近かったのかという考察も行う予定である。 以上、精緻化見込みモデルの調整・媒介変数介入による発展深化と、広く背景社会を考慮した社会対応と消費者の変化等、モデルと背景社会の両方向への研究拡大深化が大きく期待されているところである。
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