2018 Fiscal Year Annual Research Report
Sustainable Tourism promoting Sustainable Development Goals: Resilience Theory as a Foundation
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18H03460
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
加藤 久美 和歌山大学, 観光学部, 教授 (30511365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 泉 明治学院大学, 国際学部, 教授 (20339576)
LAM LAIMING 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (60618502)
間中 光 追手門学院大学, 地域創造学部, 講師 (30823546)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レジリエンス / サステナビリティ / 女性 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
観光ガバナンスのあり方を検討し、そこにSDGsの視点がどのように生かされるか理論的検討を行なった。観光は世界のGDPの11%を占める国際基幹産業だが、経済、社会、環境への負荷も大きく、サステナビリティを根本的に再検討する際、「地域レジリエンス」の視点が着目される。地域を「社会・生態系システム」とみなした場合、これは災害復興、貧困撲滅、人権擁護、伝統文化維持など、社会の持続可能性維持に必要なコミュニティが内包する力(「社会・生態系レジリエンス(SER)」)となる。今日、地域ガバナンスにおいては、その評価基準を「持続可能性」とし、持続可能な発展の手段として観光の視点を取り入れることができる。観光では、①気候変動や政治・経済など不確実性の高い環境において、インバウンドを含むあらゆるステークホルダーが、様々な目的で観光資源に接するため、予測できない事象が発生しやすいこと、②透明性、公平性等の評価軸が必要な、地域関係者の意思決定や合意形成が必要なこと、③既存のマネジメントと共存し、状況に合わせてマネジメントを拡張させることが可能であることがわかる。以上のことから、観光の視点を持ってのガバナンスは持続可能な地域づくりの概念として優位性があると結論づけられる。今後、レジリエンス、地域ガバナンス、観光、という研究分野を合わせる場合、必要なのは、第一に、地域レジリエンスを経済、社会、環境の複合的結果と考える、第二に、地域を多様なステークホルダーで構成される複雑なシステムとして捉えること、第三に、持続可能なガバナンスは評価指標、人材育成など、実践的アプローチを持って、行うこと、であると結論づけた。ここに、特に女性の視点や伝統知など、多様な視点が生かされる必要があり、継続した検討が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レジリエンスの強化に女性の視点や活動をどのように活かすことができるか、政策に積極的に伝統文化の継承、伝統知の尊重・価値付けなどを行なっている国の政策に注目、そこに女性の視点がどのように活かされているのかについて検討を行なった。先進例はニュージーランド、アイスランド、パラオの3カ国である。それぞれ人口500、35、2万人の島国であり、気候変動の影響から、大きな環境変化が明らかであり持続性対応への意識が高いことで共通している。Palau Pledge Iceland Pledge, Tiaki Promiseでは現地の文化、環境に関する尊重事項を明言し、積極的な行動指針「誓約」(Pledge/Promise)を示す手法を採用しているが、そこに女性の視点がどのように生かされるかは、継続した検討課題であり、今後の課題に記載するGSTC-D(SDGsと関連)とも関連する。また、これら今後の観光プロモーションのあり方(映像・画像やブランディングフレーズを含む)にも関連する。従来のプロモーションとは異なり、現地の文化・環境の特徴の紹介や提案も含む。来訪者への要望(責任ある行動、文化・自然の尊重)、注意喚起(交通、天候や災害への対応)など、地域主導型の「責任ある」観光行動を要求するものとなる。その基盤は「地域の幸せ(Wellbeing)」にあると考え、そこに女性の視点がどのように生かされるか継続して検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
持続可能な地域ガバナンスの方策の実践的アプローチとして、SDGsとも密接に関連するGSTCの「持続可能な観光地評価基準」(GSTC-D)を例に、観光によるSDGsへの貢献、その評価方法について検討する。GSTC-Dは、信頼性あるデータに基づきながら単に数値に頼らず地域の包括的な理解の推進を目標としている。マネジメント(分野A)、経済(分野B)、社会・文化(分野C)、環境(分野D)の4分野、計38項目からなり、それぞれがSDGsと関連づけられている。特にアジア地域のニーズに沿い、伝統的価値を反映し得る項目、その指標に注目する。 1) 多様性(GSTC-D指標B5, C1, 2, 3); SDG5, 11: 社会的弱者支援 (少数民族、女性、社会経済的弱者、高齢者、障がい者、マイノリティ)。多様性に関与する項目を通して、地域レジリエンスを考察する。 2)環境変化への対応 (GSTC-D指標D1, 3, 5, 6, 12; SDGs 11, 12, 13, 14, 15)。 気候変動、多様性喪失など、環境危機への対応に伝統自然資源利用(農林水産)の従事者が持つ知識、技術、倫理観、環境変化の観察などを重視し、特に、現地の歴史、生態系に熟知する人々の関わりに注目する。 3)無形文化(GSTC-D指標B5, B8, C1, 2, 3; SDGs 5, 11, 12, 16, 17) 。地域コミュニティのアイデンティティとしての無形文化(伝統知、技術、祭事等)は、地域環境と人、人と人とのつながりを維持する基盤、地域の多様性を育み、重要な観光資源ともなる。また、文化継承は、地域社会の理解、コミュニティの発展にリ-ダーとして寄与する人材育成の機会ともなる。これらの視点をもとに、観光を手段としての地域ガバナンスが持続性にどのように寄与するかを検討する。
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