2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sustainable Tourism promoting Sustainable Development Goals: Resilience Theory as a Foundation
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18H03460
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
加藤 久美 和歌山大学, 観光学部, 教授 (30511365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 泉 明治学院大学, 国際学部, 教授 (20339576)
間中 光 追手門学院大学, 地域創造学部, 講師 (30823546)
LAM LAIMING 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (60618502)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レジリエンス / 女性 / 災害復興 / クリエイティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)福島被災地復興に関する活動:女性アーティスト 2名との共同により、福島県相馬郡飯舘村他各沿岸地域で創作活動を行い、復興としての持続可能な地域づくりに女性の視点、活動がどのように活かせるかを検討した。 地域レジリエンスは、特に伝統産業を通じての土地とのつながり、そこから派生する地域社会、文化的行事、食文化、習慣、神事祭事など多様、かつ複雑なネットワークによって構成される。それらをつなぐ役割を女性が果たすことが多いことがわかった。2)Critical Tourism Studies- Asia Pacific (和歌山大学、2020年2月17~19日) At an international conference, 2nd Critical Tourism Studies-Asia Pacific(Wakayama University). Panel session: Resilience, Women & Sustainability;Women & Sustainability: an ecohumanities perspectives (Kato); How tourism effects on resilience from devastating disaster? The case of Nepal earthquake in 2015 (Morimoto) 3)発表論文・出版:森本泉、「講演要旨 グローバル化する世界に暮らす:現代ネパールの諸相」『お茶の水地理』、第58号,2019年5月,pp.107-109; 間中光(2019)「観光をめぐるブリコラージュ実践とダークネス : インドネシア・ドーム型復興住宅群における観光活動を事例に」『立命館大学人文科学研究所紀要』 121:103-127; 間中光・藤山一郎(2020)「インドネシアにおけるノンフォーマル教育の模索ーブカシ市廃棄物処分場周辺のPKBM を事例にー」『追手門学院大学地域創造学部紀要』5:21-43; Sharpley, R., & Kato, K. (in press). Tourism in Japan: Communities and regions. Routledge.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今期はCOVIDによる大きな社会変化を踏まえ、SDGsの社会における役割もその解釈が変化し、観光という経済活動を積極的な方策と見ることになった。COVIDは、ヒト・モノ・コトの過度な移動、気候変動ほか多様な環境リスクの複合的作用による社会生態系レジリエンスの喪失の一つの現れとも考えられ、「ポストコロナ」を見据えた様々な議論では、「無限の成長モデルは今や有り得ず、大きなパラダイムシフトが求められる」こと、そして、その「基盤は持続可能性である」という認識が共通認識となった。ここでは、この「基盤」は、伝統価値に基づく地域の回復力(レジリエンス)、そしてその方策は「地域ガバナンス」にあると考える。そこに女性の視点をどのように活かすかは、伝統知や多様な視点を生かしていくアプローチに合致している。今回の議論では、レジリエンス・地域のサステナビリティ研究には、いくつか欠落があることがわかった。特に、ビジョンの共有、地域キャパシティ、リーダーシップなど、地域の力を育てるという実社会への還元、地域に根ざした多様な視点に基づくグローバルなコンセプトの構築、またその国際的連携の仕組みなどに寄与する取り組み、特に女性の力を育てる理論的力がない。また、社会・環境の共生に関する研究は、その多くにおいて社会活動を経済活動として位置付けていない。ここでは観光地域の視点を取り入れた地域ガバナンスの視点、そこでの女性の役割に注目する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
SDGsとも密接に関連するGSTCの「持続可能な観光地評価基準」(GSTC-D)を例に、観光によるSDGsへの貢献、その評価方法について検討する。GSTC-Dは、信頼性あるデータに基づきながら単に数値に頼らず地域の包括的な理解の推進を目標としている。マネジメント(分野A)、経済(分野B)、社会・文化(分野C)、環境(分野D)の4分野、計38項目からなり、それぞれがSDGsと関連づけられている。特にアジア地域のニーズに沿い、伝統的価値を反映し得る項目、その指標に注目する。 1) 多様性(GSTC-D指標B5, C1, 2, 3); SDG5, 11: 社会的弱者支援 (少数民族、女性、社会経済的弱者、高齢者、障がい者、マイノリティ)。多様性に関与する項目を通して、地域レジリエンスを考察する。 2)環境変化への対応 (GSTC-D指標D1, 3, 5, 6, 12; SDGs 11, 12, 13, 14, 15)。 気候変動、多様性喪失など、環境危機への対応に伝統自然資源利用(農林水産)の従事者が持つ知識、技術、倫理観、環境変化の観察などを重視し、特に、現地の歴史、生態系に熟知する人々の関わりに注目する。 3)無形文化(GSTC-D指標B5, B8, C1,2,3; SDGs 5,11, 12, 16, 17) 。地域コミュニティのアイデンティティとしての無形文化(伝統知、技術、祭事等)は、地域環境と人、人と人とのつながりを維持する基盤、地域の多様性を育み、重要な観光資源ともなる。また、文化継承は、地域社会の理解、コミュニティの発展にリ-ダーとして寄与する人材育成の機会ともなる。これらの視点をもとに、観光がどのようにSDGsに寄与するかを検討する。
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