2019 Fiscal Year Annual Research Report
女性農林漁業者の社会参画をめぐる地域の「壁」に関する経験的研究
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18H03465
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤井 和佐 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (90324954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小内 純子 札幌学院大学, 法学部, 教授 (80202000)
小林 みずき 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50802823)
佐藤 洋子 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 講師 (60627561)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 「農業女子」ネットワーク / 「林業女子」 / 農協女性部・フレッシュミズ部会 / 開拓農家 / 農業委員 / 家族経営参画 / 世代 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究成果は、以下のとおりである。 ①岡山調査:開拓の歴史においては前面に出てこない開拓農家女性が、家族経営や地域農業において女性を意識した役割をはたしている。また、「おかやま農業女子」などのネットワーク設立の背景には、地理的に農家同士が離れているという状況があった。県内のJA女性部・フレッシュミズ部会の活動の持続可能性は、メンバーの子どもの年齢と都市近郊地域か中山間地域かによって異なる。②高知調査:「林業女子会@高知」の「現場部」の活動が、林業に女性が参入する際の障壁を取り除くための活動や提言を行っていると同時に林業における「女の仕事」を新たに生成し、女性たちがそれを受容する場として機能している。③沖縄調査:地域活動・政治活動を行なってきた多世代にわたる女性たちの生活史調査を実施し、第1次の文章化ができた。④長野調査:「NAGANO農業女子」などの地域版ネットワーク参加者への聞きとり調査を通して、家族内における女性の地位の世代的連続性と非連続性及び社会参画指向の可能性をとらえた。⑤北海道調査:酪農家と畑作農家にたいする聞きとり調査の結果、経営参画が地域参画に連動していないのではないかという点が得られた。 また、北海道農業会議の協力を得て、2019年10月~2020年1月に道内の農業委員・農地利用最適化推進委員に対する郵送による質問紙調査を実施し(配票 604、回収率 50.6%)、入力作業を進めた。ジェンダー分析のできるサンプル設計をしたため、その観点から分析を進めていくことになる。 以上から今後の研究に対して2つの示唆を得た。ひとつは、家族内あるいは地域内における位置どりと、林業あるいは農業に従事する女性たちをめぐる社会関係のあり方が活動指向の背景となっていること。もうひとつは、そこに世代差が交差することによって「壁」のパターンとなっているのではないかという点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり調査研究を進めることができ、最終的に研究実施計画が達成されている。調査が進んだトピックスに関しては、研究発表欄に記載したとおり、中間報告的な論文発表や学会発表もできた。他方で、聞きとり調査時期として適切な農閑期とコロナ禍とが重なったため、2020年3月に予定していた北海道におけるフィールド調査が実施できず、オンラインインタビューという形で実施できたのが2022年1月であった。インタビューにおいて把握できる範囲の調査計画は達成できているが、フィールド調査において現地の状況を把握するという方法を北海道調査においては達成できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施したインタビュー調査の録音データを文字化する作業を行い、今後の調査で掘り下げる点を明確化していくこととする。とりわけ、各事例地域における地域性と世代差の両側面をとらえていくようにし、女性が社会参画にいたるルートのあり方から地域の壁を明らかにしていく。 また、2019年度後半に実施した農業委員・農地利用最適化推進委員に対する郵送調査の分析を行い、研究会で議論し、その後、報告書にまとめ、農業会議や調査対象となった農業委員会に還元する。 この北海道における農業委員等に対する質問紙調査が現場においても歓迎されたことから、コロナ禍によってフィールド調査が十分に実施できそうにない場合は、他の事例地域においても同様の質問紙調査の実施を検討していくこととした。 現地調査が困難な場合は、Zoom等によるオンラインでのインタビュー調査などの代替方法もやむを得ないと考えている。生活史調査については、すでに文章化されている資料を探索するとともに、対面によるインタビューが望ましいため、タイミングをみて現地入りを試みたい。当初計画では、複数地域に同一メンバーが入ることによって、対象とするトピックスを対照し、理解を深めることとしていたが、県外移動が難しい期間においては現地調査を可能な限り実施するために、メンバーの所属大学のある道県内の調査を優先することとした。
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Remarks |
藤井和佐①「文化を活かした地域づくり」総社観光大学講義,講演・②「『農業女子』にみる時代の画期」,岡山大学先端研究講座,講演. 「農業女子ファームミーティング実行委 意見交換活発に」『日本農業新聞』(2020年1月13日). 澁谷美紀①「伝統行事・祭り・芸能」農業経済学会編『農業経済学事典』丸善出版・②書評「秋津元輝・佐藤洋一郎・竹之内裕文『食と農の新しい倫理』」,『農業経営研究』57(3),98.
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Research Products
(20 results)