2020 Fiscal Year Annual Research Report
琉球帝国からみた東アジア海域世界の流動的様態と国家
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18H03592
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
村木 二郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50321542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 康之 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (10733272)
関 周一 宮崎大学, 教育学部, 教授 (30725940)
小出 麻友美 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (30828794)
池田 栄史 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (40150627)
松田 睦彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40554415)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50205663)
中島 圭一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50251476)
荒木 和憲 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50516276)
渡辺 美季 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60548642)
田中 大喜 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70740637)
黒嶋 敏 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (90323659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 琉球 / 集落 / 陶磁器 / 八重山 / 宮古 / 奄美 / 先島 / 中世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琉球の周辺地域から古琉球史を見つめ直すことを目的としている。そのため、周辺地域の資料を渉猟・蓄積し、研究メンバー間で情報を共有する。研究メンバーは考古学と文献史学の専門家が中心である。当該研究分野を牽引してきたのは文献史学であるが、新出資料は考古学の方が圧倒的に多いため、考古班の現地調査情報を文献史班に提供し、これまでの研究と照応させて解釈を重ねていくことになる。 第3年度である2020年度は新型コロナ禍のために沖縄島や八重山・宮古での調査が著しく制限され、陶磁器の悉皆調査は奄美地域の与論島与論城出土資料で実施するのみであった。しかし昨年度までの調査をもとに資料を選定してとりまとめ、2021年3月に国立歴史民俗博物館にて特集展示「海の帝国琉球-八重山・宮古・奄美からみた中世-」を開催し、研究成果を公開した。 メールやオンラインを駆使して議論をしたうえで編集した展示図録には、黒嶋敏「古見島の港」、関周一「朝鮮人漂流民のみた八重山・宮古」、鈴木康之「喜界島と石鍋」、池田榮史「夜光貝」、田中大喜「千竃氏」、齋藤努「琉球王国の銭貨」、荒木和憲「古琉球の王権」、小出麻友美「八重山における仏教」、中島圭一「太田行頼奉書」、渡辺美季「康熙帝勅諭琉球国王尚貞宛」、松田睦彦「八重山のツカサとオン」、村木二郎「八重山・宮古の遠見番所」などの論考を掲載した。また展示に際してはフォーラム等での公開ができなかったため、ギャラリー討論「描かれた琉球」「八重山・宮古の時代」「境界領域としての奄美」「琉球統一と中央集権」「那覇港と島々を結ぶ」「中国と日本のはざまで」を実施し、動画を配信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第3年度である2020年度は、考古班の陶磁器調査としては奄美地域の与論島与論城跡出土資料を対象に実施し、城塞化する以前の集落遺跡の情報を抽出し、昨年度までに実施した喜界島集落遺跡資料との対比を可能にした。文献班が調査した鹿児島県長島町所在の千竃家文書「千竃時家処分状」「千竃時家譲状(熊夜叉丸宛)」「千竃時家譲状(経家宛)」や東京大学史料編纂所所蔵島津家文書「藤原頼経袖判下文」「足利義詮袖判下文」「島津道鑑譲状案」から分析した南九州勢力の奄美への影響と、文献には記されていない琉球からの影響を比較することが可能となり、琉球のより強い影響力が明らかとなった。奄美地域には手久津久遺跡群川寺遺跡等の良好な出土資料群があるため、今後の調査方針が定められた。 またコロナ禍で予算を繰越して実施した2021年度の調査では、琉球と直接交渉をもった南九州の勢力である相良氏関連遺跡を踏査し、出土陶磁器の全点調査も実施した。島々の資料調査と併行して他地域の資料調査も実施することで、それらの特徴がより際立つことが認識された。翌年度も同様の方針で調査を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では琉球を周辺の島々から見直すが、文献資料が希薄な地域であることから、それを補うために考古資料を蓄積することに研究展開がかかっている。これまで、八重山・宮古に残る細胞状集落遺跡や石囲集落遺跡を踏査し、一部図化してきたが、これらの資料から当該地域の特徴が浮び上った。またその集落の消長を探るためには出土陶磁器の全点分類・カウント調査が有効であることもわかった。この方針を継続して資料蓄積をはかるため、未調査の集落遺跡である宮古島市与那覇遺跡、喜界町手久津久遺跡群川寺遺跡出土の陶磁器調査を実施する必要がある。所蔵機関との連携は取れているため、コロナ禍の合間を縫って調査を実施したい。 また、良好な発掘調査資料を増やすために、宮古島市上比屋山遺跡のトレンチ調査を実施する。この調査はコロナ禍のために実現せずにきている。宮古島市教育委員会や地元の地権者との調整もできており、コロナ禍が鎮まり次第実施する予定である。
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