2020 Fiscal Year Annual Research Report
Conversion of Wooden Documents Recovered from the Nara Palace and Capital and Their Historic Context into a Global Resource
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18H03597
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 客員研究員 (30212319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10126295)
耒代 誠仁 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (00401456)
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (20290934)
高田 祐一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 研究員 (50708576)
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
北村 優季 青山学院大学, 文学部, 教授 (20177869)
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (20302656)
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
白井 啓一郎 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (00447723)
前川 歩 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60711984)
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (70332195)
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 上席研究員 (00359449)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 平城宮 / 平城京 / 木簡 / 出土文字資料 / 漢字 / データベース / 東アジア / 文字文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
A、平城宮・京出土木簡の歴史環境の資源化 (1) WEBGISシステムβ版(Heijo Heritagemap)の改良 第一に、奈文研の遺跡データベースに基づく全国規模の文化財情報検索システムと連携し、「全国文化財情報・古代都城WEBGIS」として、より汎用性の高いシステムにヴァージョンアップした。全国規模の遺跡の地理情報とリンクさせることで、平城宮・京跡だけでなく、全国出土木簡の情報を表示できるようになった。当面は平城宮・京出土木簡のみを対象とするが、木簡以外の遺物も検索できるようにさらに改良を加え、全国規模の遺跡・遺物検索システムのプラットフォーム機能が期待できるものに仕上がった。第二は、木簡検索システムの結果表示方法の改良である。平城宮跡部分に既発掘区を表示し、遺跡名・地区名・木簡本文の語句・発掘調査次数をテキスト入力することで、小地区ごとに出土木簡を一覧できる。また、改良点として特記すべきは、上記のテキスト入力による検索に加え、地図上の任意の地点を範囲指定することで、そこから出土した木簡を検索できる、地図による木簡検索システムを開発したことである。これにより木簡のテキストデータと地図の双方向検索が可能になり、WEBGISシステムとしての利便性が一層高まった。(2)『平城宮編年史料集成(稿)』の増補のための資料収集、(3)平城京関係史料の資料収集と綱文作成作業などを、昨年度に引き続き継続して実施した。 B、平城宮、平城京出土木簡のグローバル資源化 (1)海外機関との連携は、COVID-19の感染拡大のもと、台湾中央研究院歴史語言研究所など奈文研を通じた限定的な交流にとどまった。(2)東アジア世界の木簡・簡牘の研究、都城制研究を初め日本古代史研究と木簡の連携研究など、平城宮・京跡出土木簡のグローバル資料としての総合的検討の深化に寄与すべく、引き続き個別に研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においてWEBGISシステムの構築に見通しが付けられたことで、この研究の最大の目的は実現できるようになったと考える。全体として、概ね順調な進捗状況といえる。 平城宮・京跡出土木簡の出土地点情報を木簡データベース「木簡庫」にリンクさせ、共伴木簡やその他の共伴遺物、ひいては出土遺構など、発掘調査の成果全体の中で木簡を理解するためのシステムづくりは、奈良文化財研究所の遺跡情報のデータベースと連携することで、情報空間を平城宮・京跡から日本全国、ひいては東アジア地域を見据えたものとすることができた。平城宮・京出土木簡のグローバル化という点で大きな成果といえよう。 ただ、課題も残されている。公開がまだ奈良文化財研究所の所内のみの限定的なものとなっていること、及び共伴遺物の検索機能が未完成であることである。いずれもこの研究にとっては重要な目標であるため、最終年度の実現をめざしたい。 また、もう一つの課題として、開始当初から30年近くにわたって使用されていた平城座標という局地座標系をいかに処理するかが、なおクリアできていない点が挙げられる。最終年度に是非とも解決しなければならない課題である。 平城宮編年史料集成(稿)の改訂、及び平城京編年史料集成(稿)の作成作業も継続して実施した。COVID-19の感染拡大に伴う業務過多によって、今年度は限定的な作業に留めざるを得なかったが、引き続き継続的に作業を進め最終的に当初の予定通りの成果をまとめることができると考える。 海外の機関との連携については、昨年度までの日韓関係の悪化に加えてCOVID-19の感染拡大に伴い交流に支障が生じたままである。今後も困難な状況が続くことが予想されるので、引き続きメールなどで意思疎通を図りながら、具体的な連携の方法についてさらに研究交流を深めながら検討を進めていくことで、所期の目標の達成を図りたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
A、平城宮・京跡出土木簡の歴史環境の資源化 (1) 「全国文化財情報・古代都城WEBGIS」としてヴァージョン・アップしたWEBGISシステムの木簡検索部分について、a)局地座標系(平城座標)を用いて発掘調査を行った調査区のデータの表示の実現、b)範囲検索として実現した地図上の地点から出土木簡を検索するシステムの改良、c)墨書土器や木製品などの共伴遺物の検索表示機能の追加、d)ヒットした木簡の表示方法の改善など、ユーザインタフェイスにも配慮したものとして完成させる。その際平城宮・京跡の、ひいては日本全国の発掘調査成果(遺物・遺構)の総合的なプラットフォームとして、汎用性の高い遺物管理システムとなり得るよう留意したい。その上で、できるだけ早く一般公開を実現したい。(2)『平城宮編年史料集成(稿)』の確認・増補のための資料収集を継続して行ったうえで、これを増補する。(3)平城京関係史料について、『平城宮編年史料集成(稿)』に倣った体裁で綱文を立て『平城京編年資料集成(稿)』を編集する作業を継続して行い、(稿)を完成させる。(4)個々の木簡に関する研究文献と、平城宮・京に関する研究文献の収集を継続して行い、奈文研の木簡データベース「木簡庫」のデータの充実を図る。 B、平城宮、平城京出土木簡のグローバル資源化 (1)韓国・中国など海外の出土文字資料研究機関との木簡(簡牘)に関する研究交流を推進し、共同研究の枠組みを構築すべく引き続き交流を深める。この点についてはCOVID-19の感染拡大下で直接対話が困難な状況にあるため難航が予想されるが、引き続き奈文研を通じた機関交流の一翼を担えればと考える。(2)東アジア世界における木簡・簡牘を共通の俎上に乗せた比較検討の議論を研究分担者とともに実施し、出版、あるいはシンポジウムなど、何らかの形での研究成果公開を実現する。
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