2019 Fiscal Year Annual Research Report
震災アーカイブズを基盤とする複合型災害プラットフォームの日本国モデル構築
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18H03600
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
山川 充夫 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 客員教授 (00094285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 彰彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (00634974)
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
瀬戸 真之 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 客員准教授 (10386518)
三村 悟 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 客員教授 (10648926)
大平 佳男 法政大学, 経済学部, 助教 (10649651)
高木 亨 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20329014)
吉田 樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60457819)
柳沼 賢治 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任教授 (60783074)
深谷 直弘 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任助教 (60817667)
中村 洋介 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (80386515)
天野 和彦 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任教授 (80649533)
藤本 典嗣 東洋大学, 国際学部, 教授 (90455907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 震災アーカイブズ / 東日本大震災 / 原子力災害 / ふくしま復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
①総括的には、東日本大震災・原発災害アーカイブズのプラットフォーム構築の前提となる災害経験知・復興支援知の体系化の基本的な考え方を「ふくしまグランドデザイン再考」として取りまとめ、日本学術会議防災学術連携体主催や経済基礎科学研究所・経済理論学会・経済地理学会・日本地域経済学会共催による公開シンポジウムで報告した。 ②防災では、自然災害科学の有効性とその限界についての理論的検討を深め、事前防災のあり方を問う仙台市の公共施設立地と活断層の問題を研究した。 ③被災者支援では、「さすけなぶる」手法を活用して川内村でのコミュニティ形成の実装的支援活動を進めた。また復旧復興における除染作業・復興作業員と被災地のコミュニティとの連携活動に係る調査研究を行った。さらによりよい緊急時対応を目指し、イタリア中部地震被災地を現地調査した。 ④経済地理では、東日本大震災・熊本地震・台風19号災害による被災地の建設業・製造業・宿泊業・商店街の復興・変容過程を分析し、運輸業(タクシー・乗合バス)の新サービス導入可能性を調査した。また日本の震災復興政策が除染集約型となったのは予算制約要因によること、原子力損害賠償や官民合同チーム支援では中小企業の再開が半数以下にとどまること、ふくしまイノベーションコースト構想による廃炉・ロボット産業等の立地推進は地域産業と産業連関をもたないことを明らかにした。 ⑤災害アーカイブズでは、東日本大震災・原子力災害の遺構・被災物・記憶を残す視点の議論を進め、福島県「伝承館」と連携して収集・整理など震災アーカイブズの調査研究を行った。また2018年度開催シンポジウム「震災・復興資料の収集とアーカイブズ化の現状と今後の課題」での報告を『学術の動向』2019年9月号特集「震災の記憶と記録」に「学術調査研究アーカイブ」や「災害資料のアーカイブズ化とその役割」の2本を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①東日本大震災・原発災害アーカイブズのプラットフォーム構築の前提となる災害経験知・復興支援知の体系化に関わる基本的な考え方について、「ふくしまグランドデザイン再考」として日本学術会議防災学術連携体主催や経済基礎科学研究所・経済理論学会・経済地理学会・日本地域経済学会共催の公開シンポジウムで報告し、マスコミ等の社会的関心も強かった。 ②防災については、自然災害科学の有効性とその限界について、具体的に仙台市の公共施設立地と活断層問題として提起し、事前防災の実装研究の方途を示した。 ③被災者支援については、コミュニティづくりの実装的支援に有効な「さすけなぶる」手法は基盤Aオリジナルであり、川内村において横展開をすることができた。また復旧復興における除染作業・復興作業員と被災地コミュニティとの連携活動の調査研究は国内では他にないオリジナル性を持つ。 ④経済地理については、南相馬市の企業調査は震災直後から8年連続で実施されており、原子力災害被災地の企業・産業復興過程を分析している唯一の学術研究である。また運輸業(タクシー・乗合バス)の新サービス導入可能性を調査した。また福島相双復興機構の官民合同チーム分析やふくしまイノベーションコースト構想による廃炉・ロボット産業等の地域経済分析も他にはない。 ⑤災害アーカイブズについては、『学術の動向』2019年9月号特集「震災の記憶と記録」に「学術調査研究アーカイブ」や「災害資料のアーカイブズ化とその役割」などとして2本を寄稿した。震災アーカイブズのプラットフォーム構築にとって重要な拠点となる可能性のある福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館に本研究分担者1名がそれまでの調査研究実績を評価されて2019年4月に学芸員として、またもう1名が福島県郡山市に開設予定の震災関連アーカイブズ館の準備室長として赴任したのは、本研究のアウトカムである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、災害経験知・復興支援知・アーカイブ知などの「福島復興学」体系の進化を図り、その成果を書籍出版やIGU等国際学会・日本学術会議防災学術連携体・日本地域経済学会等国内学会、他科研プロジェクト連携シンポジウムなどで発出する。 第1は福島第一原発等の廃炉制度・工程の国際比較研究であり、「チェルノブイリ廃炉法」(1998年)と福島第一原発廃炉をめぐる日本の制度・工程の比較、巨大災害からの復興政策とマクロ予算制約の国際比較などを行う。第2は原発被災地の産業経済復興であり、福島イノベーションコースト構想に係る諸事業、再エネ導入による地域活性化事例、地震・津波・原発被災地の中小企業の再建の事例、及び東北中央自動車道・相馬港の交通インフラ整備や統合型モビリティサービス等の調査研究を行う。 第3は原発被災自治体の復興計画と地域再生の調査研究である。具体的には復興計画に盛り込まれた政策的意図や住民意向、長期避難者の被災原地とのかかわり変容、福島県川内村におけるコミュニティ形成、住民復興プロセスにおける復興従事者と地域コミュニティ関係、などの調査研究を行う。第4は防災研究である。具体的には東日本大震災被災自治体の経験を開発途上国の持続可能な開発・防災・復興に普及・適用する調査研究、大地震やそれに伴う津波の被害を受けやすい首都圏や大阪湾沿岸での災害発生前の調査研究、東日本大震災の教訓を活かした防災教育教材の開発プロジェクトの調査研究などである。 第5は災害アーカイブズの構築に関する調査研究である。具体的には過去の災害記録が以後の災害に活かされたかの検証やモザイクモデルの適用実験、震災後に生じた地域文化を残す活動や震災遺構の保存条件に係る長崎被爆遺構や広島原爆資料館の調査研究、福島・岩手・宮城県における可視化し教訓や減災へと繋がる震災関連資料の収集と伝え方の調査研究などである。
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Research Products
(70 results)