2018 Fiscal Year Annual Research Report
伊能図の成立過程に関する学際的研究-忠敬没後200年目の地図学史的検証-
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18H03603
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
平井 松午 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (20156631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 宏夫 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00167222)
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 教授 (00420414)
杉本 史子 (山田史子) 東京大学, 史料編纂所, 教授 (10187669)
礒永 和貴 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (10201922)
早川 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 部長等 (20290869)
小田 匡保 駒澤大学, 文学部, 教授 (70224243)
小野寺 淳 茨城大学, 教育学部, 教授 (90204263)
塚本 章宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (90608712)
佐藤 賢一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90323873)
酒井 一輔 聖心女子大学, 文学部, 講師 (30823794)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伊能図 / 伊能忠敬 / 地図学史 / GIS解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊能忠敬(1745-1818)の業績や日本図に関する研究報告は数多いが、最終版伊能図とされる文政4年(1821)の「大日本沿海輿地全図」完成以前に、忠敬が直接作製に携わった測量下図・定稿図と大名家献上本伊能図との関係や、現在各地に残る伊能図(副本・写本類)の地図仕立てについてはほとんど検証されていない。 伊能図は極めて高度な技法で作製されていることから、本研究課題では、大名家献上本伊能図や測量下図・定稿図等の料紙・彩色・針孔(針穴)・記載内容を、超高精細画像データや非破壊調査などの最新技術を用いて科学的に検証し、伊能図の作成・編集過程を明らかにするとともに、すでに原本が失われている「大日本沿海輿地全図」の実像に迫る。併せて、近年解明が進む長久保赤水・シーボルト研究の成果の下に忠敬収集絵図や諸記録についても分析し、日本地図学史上で最も特出した「伊能図」の学術的意義について再検証することにある。そのため、本科研の遂行に際しては、古地図・絵図研究やGIS解析、絵図・絵画等の科学分析に精通した、専門分野の異なる共同研究者による学際的な研究アプローチをとっている。 本研究では、まず2018・19年度には最終版以前の伊能図(副本)、2020・21年度には最終版以降の伊能図(副本・写本)の共同調査・科学調査を計画している。また、必要に応じて伊能図(副本など)の超高精細画像データも作成する。さらに、伊能忠敬記念館には国宝に一括指定されている定稿図・測量下図などの地図類や大量の記録・文書のほか、伊能忠敬が収集した各種の地図・絵図が所蔵されていることから、これらの文書・絵図類の分析を進めることで、「伊能図」成立過程の全容解明に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年6月に伊能忠敬記念館(千葉県香取市)において、研究協力者の同記念館職員(紺野氏ほか)と研究代表の平井らが研究打合せを行った。9月11~13日の3日間、国立歴史民俗博物館において科研メンバー合同(参加者14名)により、伊能忠敬記念館所蔵伊能図21点および国立歴史民俗博物館館所蔵伊能図4点について原本調査(非破壊調査)を実施した。また、2019年3月7日には早稲田大学図書館に所蔵される伊能図6点についても原本調査(参加者14名)を実施した。これらの調査成果については現在集約中であるが、調査時に撮影した画像データ等については科研メンバー全員がすでに共有済みである。なお、9月11日および3月8日には研究集会も開催して情報を共有した。 10月12日には平井ほかが神戸市立博物館所蔵の伊能図、2019年3月29日には平井が京都大学附属図書館所蔵の伊能図についての予備調査を行った。また、長崎歴史文化博物館・松浦史料博物館(平戸市)ともメールによる協議を進め、2019年度の合同調査(非破壊調査)の実施日程を調整した。 この間、徳島大学附属図書館所蔵の伊能図6点について、800dpi相当の高精細画像データ作成のための写真撮影(2018年9月)を行った。針孔の確認できる徳島大学所蔵の伊能図については2019年5月頃を目途に徳島大学附属図書館HPにアップし、本研究における示準史料として活用の予定である。また、神戸市立博物館所蔵伊能図のうち「近江図及附近絵図」(琵琶湖図)1点についても800dpi相当の高精細画像データを作成し、5点についてポジフィルムのスキャニングを行った。さらに、伊能忠敬記念館所蔵の伊能図関連地図類のポジフィルム約500点についてもスキャニングして画像データを作成した。 以上のように、本研究については予定の計画はほぼすべて順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画(研究実績の概要)にあるように、2019年度についても、最終版以前の伊能図(副本)を中心に合同調査・科学調査(非破壊調査)を計画している。 5月13・14日には長崎歴史文化博物館に所蔵される伊能図(峰源助による写本等)、5月15・16・17日には松浦史料博物館(平戸市)に所蔵される伊能図(松浦藩主家伝来の針孔のある副本)の原本調査がすでに決定している。併せて、5月12日には本科研の分担者である青山宏夫氏による伊能図科研・れきぶん長崎学連携講座「伊能日本図からシーボルト日本図へ」、5月15日には同じく塚本章宏氏による平戸オランダ商館市民講座「伊能図の針孔」の2講演が予定されている。こうした試みは、本科研の目的にもあげている社会貢献の取組の一環でもある。 本科研による伊能図調査としてはこの他に、9月頃に京都大学附属図書館を予定しているが、日程の詳細については今後調整することになっている。また、国立国会図書館や宮城県図書館等における予備調査も計画している。また、合同調査に合わせて研究集会も実施する。 こうした伊能図原本調査と並行して、2019年度は伊能忠敬記念館所蔵の伊能図、定稿図、測量下図の高精細画像データ作成や文書関係資料の画像デジタル化を計画している。さらに、徳島大学附属図書館所蔵の伊能図については、高精細画像データをもとに針孔のGIS分析を進める。 これらの原本調査やデータ作成により、本科研を推進する上での研究基盤が整うことになる。
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Research Products
(5 results)