2019 Fiscal Year Annual Research Report
Cognition and preference of the job and social securities: A panelized cognition and conjoint experiment
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18H03630
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中林 真幸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60302676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 恵介 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40622345)
森本 真世 東京大学, 社会科学研究所, 講師 (20782311)
MCELWAIN KENNETH 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80768896)
飯田 高 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70345247)
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
藤原 翔 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60609676)
大久保 将貴 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (90807835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 完全無作為化コンジョイント実験 / 完全無作為化認知実験 / 雇用の実態と認知 / 社会保障の認知 / 政治的傾向 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画は2段構えとなっている。すなわち、回答者の背景属性を尋ねるパネルデータを長期的に構築しつつ、それと並行して、2~3回のパネル型コンジョイント実験分析を行うものである。パネル型コンジョイント実験分析については、実験における介入の効果の持続性を確かめるために十分な期間、1年半から2年を確保しつつ、新しい課題に組み替えていく。パネルデータの長期的な構築は、それ自体が、本計画の第一の目的であるが、コンジョイント実験分析を行う際の制御変数を提供する役割も持つ。 2019年度には、2018年度に引き続いて福祉国家の予算措置に関する大まかな選好を調べる情報介入付きのコンジョイント実験分析を行い、完了した。実験の手順は以下の通りである。まず、全員に日本の相対的貧困に関する認識を問い、ランダムに相対的貧困に関する情報を提供する。続いて、消費税増税分の使い道として、教育補助、失業給付や公営住宅等の貧困対策、医療・年金、公共投資、国債の償還(財政再建)の組み合わせをランダムに発生させ、より望ましい組み合わせを選んでもらう。 主たる結果は以下の通りである。(1)情報提供を受けることによって政策選好が変わる人々もいれば変わらない人々もいる。(2)情報提供を受けることによって政策選好が変わる人々の場合、失業給付や公営住宅等の貧困対策への選好が強まった。(3)情報提供を受けることによって政策選好が変わる人々の場合、公共投資への選好が低下し、他の政策の選好への影響は微弱であった。(4)情報提供による認識の改訂は半年後の調査においても維持されていた。(5)情報提供を受けたことによる政策選好の変化は1年半経っても維持されていた。 これは、情報提供が、福祉政策の選好に及ぼす影響が短期にとどまらず、1年を超える持続性を持つことを初めて明らかにした研究成果であり、政策立案のための議論の重要性を浮き彫りにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前に本年度の調査・実験を終えていたため、順調に年度を閉じることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
長期パネルデータの構築は引き続き、計画通りに実施する。 一方、2020年初以来の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は、現代福祉国家の能力を様々な角度から試しつつある。COVID-19は、先進国経済において大きな構成比を占めるサービス業の集積を直撃することによって、成長と生命のトレードオフという、平時の福祉国家にとって前代未聞の挑戦となっている。世界恐慌後に勃発した第二次世界大戦のように、死亡者の増える活動が結果として景気を回復させることはあったが、政府、すなわち、国民が、成長と生命を明示的に選択させられたことはかつてない。さらに、犠牲者が高齢者に偏る特性は、高齢化という、現代福祉国家が抱える課題を先鋭化させている。加えて、感染拡大を防ぐ政策の効果は個人の協力に大きく依存しており、行政機構と社会との協調の深さも問われている。 すなわち、COVID-19は、同時に対応しなくてはならない問題の組み合わせという点において全く新しい福祉国家像を求めると同時に、、それぞれの福祉国家がこれまでに蓄えてきた総合的な能力の高低を残酷に暴き出しつつある。 そのような状況認識から、2020-2021年度においては、COVID-19対応に関わる福祉政策の選好を調べるコンジョイント実験分析を実施する。 我が国においても、COVID-19は、広い階層に感染し、あるいは間接的に影響を及ぼしている。そのような性格を持つCOVID-19に対応する政策の選好を探る上で、本計画の大きなパネル標本数は重要な強みとなる。
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Research Products
(23 results)