2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本の大学入試制度の役割と問題点:人材の育成と選別の観点から
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18H03636
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧井 克也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70346138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡澤 亮介 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (30707998)
平田 憲司郎 神戸国際大学, 経済学部, 講師 (70423209)
中嶋 亮 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (70431658)
北野 泰樹 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (70553444)
佐野 晋平 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (80452481)
小嶋 健太 関西大学, 経済学部, 助教 (00634247)
森 知晴 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (00733057)
佐々木 勝 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10340647)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本経済論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は下記のような研究成果をあげた。 1.Sasaki, Takii and Wan (2012)の論文の、Journal of the Japanese and International Economiesへの掲載が決まった。また、Kojima and Takii (2019)や、Hirata, Suzuki and Takii (2019)や、これらの論文は、日本の企業や公務員の内部労働市場の分析道具を提供しており、学歴がその後のキャリアに与える効果の分析を行う時に必要な道具立てを開発している。また、ディスカッションペーパーとして公表されたOkazawa and Takii (2019)は有権者の意識を調べており、政治家の行動に、学歴と政治家のインセンティブの構造が複合的に与える効果が分析する際の基盤研究の役割を果たす。 2.また、研究発表については、以下のものがあげられる。1)平田・佐野・瀧井は、共通一次の導入の結果、強制的に入学に必要な科目数を増価させた大学の偏差値は下がったが、上場企業の役員への昇進比率は上がったという結果の頑強性を別の計量手法で確認し、3月の「人材配置の経済学」カンファレンスで報告した。これによって、役員になる人間は多様な学術的知識を学ぶ力がある人であるという結果に間違いがないことが確認された。2)森・瀧井は模試において追加的情報を含まないB判定が受験生の出願大学に関する行動を変えているという結果を得、その結果をLimited Attentionの立場から説明するモデルを作り、6月の「人材配置の経済学」研究会、10月の関西労働研究会、1月の大阪市立大学で発表した。Limited Attentionが大学選択に与える役割を明示したという点において、意義が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトは確実に前進している。上記に上げた成果に加えて、明確な成果という形で行われていないが、下記作業が進んでいることが指摘できる。 I.国公立優位の偏差値構造の社会的影響の分析:瀧井はBlinder and Oaxaca 分解で得られたファクトを説明するために、評判に基づく大学偏差値均衡モデルの開発を始めた。 Ⅱ.共通一次と人材配置:上記成果に加え、リクルートの「大学別就職先調べ」を使って、共通一次が就職活動で上場企業へ就職をする確率をどの程度引き上げるのかの分析を行うための準備を進めている。 III.学歴と社会的成功:上記成果に加え、瀧井は大阪大学経済学研究科博士後期課程の中村文香と初職に正社員になるかどうかがその後の人生に与える影響を学歴別に分析しているが、途中経過を、10月の「人材配置の経済学」研究会と3月の「人材配置の経済学」カンファレンスで発表した。 IV.大学入試の効率性分析:現在、北野・森・瀧井・中嶋は、マイクロデータとマクロデータを組み合わせて大学入試の構造モデルで大学の価値の推計を行っており、途中経過を3月の「人材配置の経済学」カンファレンスで発表した。 V.データ整備:リクルートの「大学別就職先調べ」のデータと日経ニーズの財務データを組み合わせ、分析を行うための準備を進めている。残念ながら、2020年度の高大接続改革の分析は政府の政策変更により変更を余儀なくされてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は次のことを行う。 1)国公立優位の偏差値構造の社会的影響の分析:佐野・瀧井は、偏差値決定モデルのBlinder and Oaxaca 分解の結果をDPにまとめる。瀧井は、評判に基づく大学偏差値均衡モデルの定量分析を模索する。 2)共通一次導入と人材配置の関係の分析:平田・佐野・瀧井で現在進めている「入試における科目数増大が役員の出身大学・出身学部をどのように変化させたのか」という分析を、DPとしてまとめる。次に、入試における科目数増大が、官僚・政治家としての成功に与えた影響を分析するためのデータ整備を、小嶋・佐野・瀧井・岡澤で協力して進める。また、瀧井・佐野・平田は、大阪大学経済学研究科博士後期課程の中村と共同で入試における科目数増大は、上場企業への就職率にどのような影響を与えたのかという分析を始める。 3)学歴と社会的成功の関係の分析:現在投稿を行っているHirata, Suzuki and Takii (2018)やKojima and Takii(2018)を出版する。また、瀧井は中村と進めている初職が正社員であるかどうかがその後のキャリアに与える影響を学歴別に分析しているが、DPとして仕上げる。日本における学術試験が出世に与えるの影響の歴史的起源をさぐるために、1792年に開始された学問吟味のはたした役割についての分析を行うことを山崎と検討する。 4)現在の日本の大学入試制度の効率性分析:北野・森・中嶋・瀧井で進めている大学入試の構造推計モデルの精緻化を行う。また、森・瀧井で進めている「模試におけるB判定がどの程度、その後の志望校変化に影響を与えるのか」という分析を精査し、DPとしてまとめることも目標とする。 5)2020年度高大接続改革の経済分析:2020年度の高大接続改革の変更に伴い、分析の変更を求められている。その対応について検討する。
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Research Products
(13 results)