2020 Fiscal Year Annual Research Report
日本の大学入試制度の役割と問題点:人材の育成と選別の観点から
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18H03636
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧井 克也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70346138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 健太 関西大学, 経済学部, 准教授 (00634247)
森 知晴 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (00733057)
岡澤 亮介 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (30707998)
平田 憲司郎 神戸国際大学, 経済学部, 准教授 (70423209)
中嶋 亮 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (70431658)
北野 泰樹 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (70553444)
佐野 晋平 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (80452481)
山崎 潤一 神戸大学, 経済学研究科, 助教 (80800606)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本経済論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は下記のような研究成果をあげた。 瀧井が佐々木、万との共同で執筆した"Synchronized Job Transfer and Task-Specific Human Capital”が、20年6月にJournal of the Japanese and International Economiesに出版された。 また、平田・佐野・瀧井は、長年にわたり大学入学に必要な科目数を増加させることの長期効果の分析を行ってきたが、「偏差値は下がったが、上場企業の役員への昇進比率は上がった」という結果が頑強であることを確認した。その成果を、9月の京都大学の応用ミクロ経済学セミナー、12月の「人材配置の経済学」研究会、1月のRIETIでのセミナーで報告し、最終的に、 "How can a college's admissions policies help produce future business leaders? ”というタイトルのディスカッションペーパーにまとめ1月に公表した。 また、今年は、次のような形で成果の報告も行ってきた。瀧井が中村と共同で行っている論文 "The Effect of Initial Job in Japanese Labor Market”を中村が8月の「人材配置の経済学」研究会、Search Theory Workshop, 10月のOSIPP Lunch Seminarで発表した。最後に、森は瀧井と共同で行っている”The Impact of Test Score Labels on University Choice: A Regression Discontinuity Design” を行動経済学・社会心理交流会において報告した。これらの論文は、発表におけるコメントを踏まえ論文の改定を急ぎディスカッションペーパーにまとめることが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
着実に進展しているプロジェクトと停滞しているプロジェクトのギャップが明確になってきた。 I.国公立優位の偏差値構造の社会的影響の分析:佐野・瀧井で現在進めている偏差値決定モデルのBlinder and Oaxaca 分解の結果の説得力を増すために、各大学・学部ごとの志願者数や合格者数のデータを追加した。 II.共通一次と人材配置:日経ニーズのデータとリクルートの「大学別就職先調べ」とさらには、河合塾の「栄冠を目指して」のデータを結合した。その結果、佐野・瀧井・中村・平田は、入試の科目数の増大の結果、卒業生が初職で上場企業に就職できる確率に影響を与えるかどうかの分析を開始した。また、政治家や官僚のキャリアのデータと学歴を結合する試みも進めている。 III.学歴と社会的成功の関係の分析:ディスカッションペーパーとして公表されているKojima and Takii (2019)や、Hirata, Suzuki and Takii (2019) Okazawa and Takii (2019)は改定を加えながら今年度も投稿を続けている。また、1792年における学術試験である「学問吟味」の合格者の名簿と幕臣のキャリアのデータである「柳営補任」の電子化に乗り出した。これにより、日本における学術試験が出世に与える影響というものの歴史的起源をさぐるというプロジェクトを始動した。 IV.大学入試の効率性分析と2020年度高大接続改革の経済分析:この二つのテーマは様々な理由から停滞を余儀なくされている。特に、2020年度高大接続改革の経済分析は、2020年の高大接続改革の変更に伴い、分析の変更を求められていたが、残念ながら、コロナが入試にもたらした影響のため、さらに分析の難しさに拍車をかけ、対応策ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は次のことを行う。 1)国公立優位の偏差値構造の社会的影響の分析:昨年度作り上げた志願者数・合格者数のデータを使って、佐野・瀧井で現在進めている偏差値決定モデルのBlinder and Oaxaca 分解を再度行う。それをもとに、瀧井は、その中で発見された事実を説明するためにつくられた評判に基づく大学偏差値均衡モデルの定量分析の可能性を模索する。 2)共通一次導入と人材配置の関係の分析:入試における科目数の増大が上場企業への入社を高めたかどうかの分析を、瀧井・平田・中村・佐野で行う。また、入試における科目数増大は、官僚・政治家としての成功にどのような影響を与えたのかを分析するためのデータ整備を、小嶋・佐野・瀧井・新居・岡澤で進めていく。 3)学歴と社会的成功の関係の分析:現在、DPにしあがっている論文の出版を目指す。そのうえで、現在瀧井は中村と共同で行っている「初職が正社員であるかどうかの有無がその後のキャリアに与える影響の分析」をDPとして仕上げることを目標とする。最後に、1792年に開始された学問吟味と、幕臣の出世のデータである柳営補任の電子化を山崎と本格化する 4)現在の日本の大学入試制度の効率性分析:北野・森・中嶋・瀧井で進めている大学入試の構造推計モデルの分析は、構造モデルの予測とデータとの乖離をどのように埋めていくかが今年の課題となる。森・瀧井で進めている「模試におけるB判定がどの程度、その後の志望校変化に影響を与えるのか」という分析は、論文のメッセージを明確にし、DPとしてまとめることを目標とする。 5)2020年度高大接続改革の経済分析:2020年度の高大接続改革の変更に伴い、分析の変更を求められていたが、コロナによる入試環境の変化が起こり、さらに対応が難しくなった。効率的な研究資金の配分のために、このテーマからの撤退も含めて、真剣な検討が必要になる。
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Research Products
(8 results)