2018 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Study on the Mechanism of Social Stratification in the Aged Society with Low Fertility
Project/Area Number |
18H03647
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白波瀬 佐和子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00361303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 哲 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20401268)
渡邊 勉 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30261564)
中村 高康 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30291321)
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
數土 直紀 学習院大学, 法学部, 教授 (60262680)
佐藤 嘉倫 東北大学, 文学研究科, 教授 (90196288)
吉川 徹 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (90263194)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会階層 / 少子高齢化 / 大規模社会調査 / 実証計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度は、2015年に実施した「社会階層と社会移動に関する全国調査」(SSM調査)の本格的な分析を開始した。特に、2015年調査の実施を中心とする特別推進研究事業(JP25000001)の最終年に刊行した122本の報告論文をもとに、学術書籍への刊行を明示的な目標として研究会を発足させた。そこでは、人生を初期・中期・後期の3つに分けて、それぞれのライフステージ独自の課題をもつ階層性について議論する構成とした。本研究会では、中堅研究者を中心に42名に研究チームを絞り、まず日本語による学術書籍刊行にむけて研究チームを形成した。全体会議を2018年12月と2019年2月の2回開催し、それに加え3つの研究班幹事を中心に所属メンバーへの助言、指導を実施した。第7回SSM調査研究のメインテーマを少子高齢化としたが、既存の階層研究への新たな視点として、現役世代のみならず、高齢化が最も進行する日本における高齢層の就労状況や職業経歴を積極的に考慮したライフステージごとの階層性について理論的検討を開始した。 2018年9月には、台湾のAcademia SinicaからYi, Chun-Chun教授を招いて、日台の若年層における階層性について実証分析研究についてのワークショップを開催した。特に、日本以上に少子化が進行する台湾において、労働や結婚、さらには世代間関係の視点をいれた議論は、きわめて有益であった。同ワークショップでも若手研究者を中心に活発な議論が進んだ。 2015年SSM調査データを用いた研究報告としては、日本社会学会や国際社会学会をはじめ20本程度の学会報告、12本の学術論文刊行、さらに書籍として5本が刊行された。また、人生半ば期の階層性を明らかにするため、2019年の50代調査実施に向けて企画、準備を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究事業の初年度に計画した内容について、学術書籍や学術雑誌、あるいは学会での報告を通して、研究成果を公表している。さらに、5冊の書籍が刊行されたことは、特記すべき成果である。特に、専門家のみならず一般読者に向けて、2015年SSM調査データを分析をもりこみながら、分りやすく日本の階層研究を例えば新書というかたちで刊行したことは、重要な社会貢献である。不平等、人口高齢化のテーマは、日常的に新聞等でも掲載され、指摘されているイシューであると同時に、専門的には高度な分析手法が用いられることも多く、議論自体がごく限定的な専門家の中のみで展開される傾向がある。そのような中、一般書が複数刊行された意味が大きいことを強調しておきたい。 少子高齢化というと、若年層、高齢層に関心が向けられるが、その移行期にあたる壮年層の階層性の特徴、位置づけについて十分な研究蓄積があるわけではない。そこで、50代に限定した実態調査を企画した。そこでは、子どもとの関係、親との関係という縦の世代間関係の階層メカニズムの解明するための調査内容とした。もっとも、来年度実施予定の50代調査は回顧情報が含まれてるにせよ、スナップショットの事実としての特徴を否めることはできない。そこで、将来的には、個人を追跡して加齢効果をも明らかにできるパネル調査とのマッチングによって、人生半ばの階層構造の意味を明らかにしていく。 本調査は、2015年SSM調査と連携し、階層構築のメカニズムを検討し、ひいては社会階層理論研究の新機軸を打ち出すべく、50代調査を活用していく。、本研究を開始する時点では50代調査企画について明確な問題意識として固まっていなかった。しかし、学術書籍の構想を進めるうちに、本企画の重要さを確認し具体的な調査実施にいたる企画を立て、次年度調査に向けた準備を進めたことは、「当初の計画以上の進展」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、3つの研究班を中心に、邦文の学術書籍に向けた研究会を進めていく。さらに、英文書籍の刊行についても、出版社との交渉をはじめ、プロポーザルをまとめて刊行事業を進めていく。国内外の学会においても、引き続き積極的に成果報告を行っていく。また、SSM調査のみならず、所得、貯蓄・資産に関する政府統計調査(家計調査、全国消費実態調査、国民生活基礎調査等)も積極的に活用して、社会の階層メカニズムについての実証分析を進めて行く。特に、少子高齢化に伴う世帯構造・家族構造の変化や、貯蓄・資産を考慮した階層研究を進めていく。若年層においては結婚・出産構造、高齢層においては引退期への移行や社会的ネットワークの保有状況など、パネル調査とも適宜組み合わせて分析を進めていく。 国際的な研究活動を実質的に進めていく。社会階層分野の中堅以上専門家のみならず若手専門家とも積極的に研究会を開催していく。
|