2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H03663
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
緑川 晶 中央大学, 文学部, 教授 (90421833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手 正和 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究員 (00747991)
小山 慎一 筑波大学, 芸術系, 教授 (40420913)
岩木 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究センター長 (70356525)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 感覚過敏 / 認知症 / 自閉スペクトラム症 / 心理物理学 / fMRI / 視覚的パターン / 時間分解能 / 不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、認知症、高次脳機能障害、発達障害における過敏性の性質について明らかにすることを目的とし、以下の研究を実施した。 (1)神経心理学的研究:①脳の損傷が過敏性に与える影響について脳外科手術の術前後での変化を検討し、およそ70名からデータを取得し、現在領域と機能ごとの解析を進めている。②認知症の機能変化について解析を進め、意味性認知症患者において特異な機能変化(機能向上)が生じることを確認した。 (2)心理物理実験:①水玉模様に対して過剰な情動反応が生じるメカニズムを心理物理学的方法を用いて検討した。その結果、水玉模様の背景が人の顔の場合に嫌悪感が増すが、水玉模様と背景の間に奥行の知覚が生じると嫌悪感が減少するという結果が得られた。②日常生活における過敏性の問題について検討するため、市販のカーテン・壁紙等の模様の印象を評価する実験を行い、模様の空間周波数特性との相関を調べた。その結果、中間周波数帯域の明度コントラストが高い模様に対して使用者が不快に感じやすい傾向が見られた。 (3)脳内機構に関する研究:①自閉スペクトラム症(ASD)者の感覚過敏の神経生理基盤に関してMRIを用いた実験を実施した。ASDの1症例と健常群を比較したfMRI解析から高い知覚分解能の基盤となる可能性が示唆された左腹側運動前野について、GABA濃度をMRSで計測した。その結果、ASD者では自己記入式の感覚過敏のスコアが高い人ほど当該脳部位のGABA濃度に低下が見られた。不安を喚起する顔刺激の提示が知覚分解能を向上させたことから、過敏の背景に抑制性の神経伝達物質と情動の調節が関与することが示唆された。②fMRIを用いて、水玉模様に過敏に反応する際の脳内活動を調べた。その結果、頭頂側頭連合野の一部に水玉模様と顔背景の組み合わせに対する活動増加が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)神経心理学的研究:被験者数・分析数を確保することができ、脳の損傷によって過敏性が生じる可能性について確認することができた。 (2)心理物理実験:心理物理学実験は順調に進んでいる。 (3)脳内機構に関する研究:ASD者で見られる高い知覚分解能の基盤となるGABA低下による神経活動の脱抑制について明らかにしたことに加え、情動によって過敏の状態が変化する可能性を示すことができた。成果は学術雑誌に掲載され、招待講演や学会発表の場で公表した。加えて、アウトリーチ活動を活発に行い、科学的に明らかになった知見を一般向けに紹介した。定型発達者に対するfMRI実験の結果では統計的な有意差が明確に表れておらず、被験者数の増加や、視覚刺激・課題の変更、さらなる詳細な分析を必要とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)神経心理学的研究:認知症に関する研究はまもなく英文誌に投稿する予定である。脳の損傷が過敏性に与える影響については解析を進め、年度中に論文を執筆する予定である。 (2)心理物理実験:成果はまもなく英文誌に投稿する予定である。 (3)脳内機構に関する研究:昨年度着手した不安がASD者の高い知覚分解能に及ぼす影響について、fMRIを用いた神経基盤の検討を進める。年度上旬に実験実施の準備と予備実験まで終わらせる。下旬には参加者を呼んだ実験を終了し、論文を執筆する。定型発達に対するfMRI実験については被験者数の増加や、視覚刺激・課題の変更、さらなる詳細な分析等を検討する。 年度中に過敏性に関するシンポジウムを実施し、研究全体の総括を行うとともに、チーム全体で過敏性についての総説を執筆する。
|
Research Products
(44 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Contraction of distance and duration production in autism spectrum disorder2019
Author(s)
Honma Motoyasu, Itoi Chihiro, Midorikawa Akira, Terao Yasuo, Masaoka Yuri, Kuroda Takeshi, Futamura Akinori, Shiromaru Azusa, Ohta Haruhisa, Kato Nobumasa, Kawamura Mitsuru, Ono Kenjiro
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-