2018 Fiscal Year Annual Research Report
Concerted research in physics of anomalous phenomena around metal-insulator transition and development of neuromorphic devices
Project/Area Number |
18H03686
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 公 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00356502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 浩之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00415762)
渋谷 圭介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00564949)
矢嶋 赳彬 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10644346)
浅沼 周太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30409635)
押川 正毅 東京大学, 物性研究所, 教授 (50262043)
白川 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (60357241)
富岡 泰秀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (60357572)
Stoliar Pablo 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40824545)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニューロモルフィック / 人工ニューロン / 人工シナプス / アトラクタ / 超伝導 / 近藤効果 / 強誘電 / 量子臨界点 |
Outline of Annual Research Achievements |
深層学習の成功で脳型計算(現在のフォンノイマン型の計算ではなく脳の神経構造にヒントを得た計算方法)のソフトウェア研究が盛んですが、ハードウェア研究は「深層学習に特化」した電子回路を従来のデジタル素子を用いて構築しようという研究しかありません。そこで本研究は「ニューロンの発火パターンが自発的に形成される新しい脳型電子回路」の構築を目指します。この自発的形成は数学的に「パラメータ空間上でのアトラクタ形成」と呼ばれるものです。本年度は、SrTiO3という物質を用いた新しい人工ニューロンと人工シナプスを開発することに成功しました。それらを用いてアトラクタを形成する電子回路を構成するために、4x4のアレイ構造にすることを考案し、実際に作製に成功しました。さらに個々の素子をField-Programmable Gate Array (FPGA)というユーザーがプログラミングによって書き換えできる汎用の集積回路を用いて仮想配線でつなぐことにも成功しました。まずこれによって明らかになったことがあります。半導体電子回路でニューロン動作の基本であるLeaky Integrate (LI)を模倣賞という従来の研究では、巨大容量(時定数が0.1秒ならば10cm角ほど)の大面積コンデンサを必要としますが、我々の人工ニューロンではそれが必要ないということです。これは回路の微細化にとって非常に大きなメリットになります。なぜそれが可能になるかという背景にはSrTiO3が大きな誘電率を示すのに強誘電転移をしないということがあります(強誘電量子臨界点のそばにあるといいます)。そのSrTiO3に、1000個あたり1個ほどのごくわずかな電子をドープすると超伝導を示します。本年度はこの超希薄キャリア超伝導と強誘電量子臨界点の関係を探って成果を論文発表しました。さらに近藤効果などの数々の物理現象の原因も探りました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SrTiO3基板上のFET素子を100個程度フォトリソグラフィーで作製可能にするという目標を達成し、この基板をチップキャリアに装着して3D配線するのに有効なマスクパターンを検討しました。最終的に4x4のアレイ構造に決定して設計しました。パルス発生回路には当初VO2を用いる予定でしたが、当面はField-Programmable Gate Array (FPGA)というユーザーがプログラミングによって書き換えできる汎用の集積回路を用いて仮想配線し、FPGAに組み込まれたパルスユニットを使用することにしました。まずはニューラルネットの研究を進展させるためです。実際に上記の4x4アレイの作製に成功し、年度内にFPGAで仮想配線もしました。まだ連動はしませんが個々の素子を単体でコンデンサ不要の人工ニューロン動作させることにも成功しました。順調な進展です。さらにSrTiO3 FET中で起きている酸素欠損のマイグレーションや相転移のタイムスケールに関しても実験的考察を行い、前者がニューロン、後者がシナプス動作に影響することを明らかにしました。これらで2018年度のVLSI国際会議に応募しましたが不採択になったので、現在構成を見直した論文を準備中です。 18O酸素同位体置換したSrTiO3単結晶を作製し、La置換によってキャリアをドープする研究については、1年目から大きな進展がありました。18O酸素同位体置換試料はキャリアドープしなければ強誘電転移を示しますが、この強誘電転移の量子臨界点の影響で超伝導転移温度が2倍近くも上昇することがわかったのです。この成果をNature Communications誌で発表しました。さらにこの試みによって、SrTiO3のFETの示す近藤効果と非線形ホール効果が強誘電と関係しているのではないかという新たな発想につながりました。こちらも現在論文執筆中です。
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Strategy for Future Research Activity |
SrTiO3の電子ドープをSrのLa置換だけでなくTiのNb置換でも試み、それらの酸素同位体置換で強誘電性を増すとどうなるか検証します。強誘電と超伝導の共存についてさらに研究を進めます。SrTiO3 FETの2次元電子系が、磁気抵抗に異常がない(磁場に依存しない)通常とは異なる近藤効果を示すことを確認しました。SrTiO3は強誘電転移近傍にいることを考慮すると、1980年代に研究されて最近見直されている「電気分極の介在する近藤効果やRKKY相互作用」が格好の舞台を与えてくれそうです。この点について、さらに研究を進めます。 こうした特異物性のせいでSrTiO3のFETはゲート電場の印加履歴により閾値が変化しては元に戻るという現象を示します。これをうまく利用すると、ニューロン動作の基本であるLeaky Integrate (LI)を模倣することが出来ます。通常の半導体素子を用いた電子回路でLIを模倣するには巨大容量(時定数が0.1秒ならば10cm角ほど)のコンデンサが必要で、せっかく他の素子を微細化しても意味がなくなります。本研究のSrTiO3 FETならばその巨大コンデンサが不要。人工ニューロン開発にとって革命的な素子になります。 本年度はこのSrTiO3 FETを4x4に集積化したものをさらに複数個用意し、FPGAで仮想配線し、パルス生成器と人工シナプスなどを組み合わせて簡単なニューラルネットワークを構築することを試みます。この回路に定常パルスを入力すると、人工ニューロンが発火するようになりますが、そのうちにいくつかのニューロンの発火のタイミングが周期的になり、時間軸上で秩序を示すようになると期待されます。アトラクタ形成と呼ばれるものです。生物の神経回路はこの自発的なアトラクタ形成がその動作の鍵だと考えられており、本研究でそれが再現できるかにも本年度は取り組みます。
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Research Products
(29 results)