2020 Fiscal Year Annual Research Report
Control of vacancy concentration and hydrogen isotope retention in neutron-irradiated tungsten alloys for fusion applications
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18H03688
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
波多野 雄治 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80218487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大宅 諒 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (10804750)
外山 健 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50510129)
大野 哲靖 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60203890)
矢嶋 美幸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70749085)
大矢 恭久 静岡大学, 理学部, 准教授 (80334291)
Lee HeunTae 大阪大学, 工学研究科, 講師 (90643297)
信太 祐二 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80446450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核融合学 / プラズマ壁相互作用 / 核融合材料 / トリチウム / 照射欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wは融点および熱伝導率が高いなどの特長から、核融合炉プラズマ対向材料として有望視されている。しかし、核融合反応によって生じる高エネルギー中性子の照射を受け格子欠陥が形成されると、その捕捉効果により核融合炉の燃料であり水素の放射性同位体であるトリチウムの蓄積量が著しく増大する。我々は中性子照射による水素同位体蓄積量の増大を合金化によって抑制することを目的として、WにReを5%添加したW-Re合金に中性子の代替として高エネルギーFeイオンを照射し、500℃以上の温度では純Wと比べ空孔型欠陥の形成が抑制され照射後の水素同位体蓄積量が桁違いに減少することを見出した(Hatanoら, Nucl. Mater. Energy 2016)。しかし、その機構を明らかにするには至っていなかった。 本研究では、W中の欠陥との相互作用という観点からReとの比較対象としてTa、Mo、Crに着目した。ReはW中の自己格子間原子(SIA)と引力的に相互作用する。CrはReより強く引力的相互作用をするが、Moは相互作用が弱く、Taは斥力的に相互作用する(Suzudoら, J. Nucl. Mater. 2018)。2020年度はCr含有量が0.3~3原子%のW-Cr合金を調製し、W-0.3%Cr合金では十分に緻密な試料が得られることを確認した。この試料に高エネルギーFeイオンを250~1000℃で照射し、水素同位体蓄積特性および空孔型欠陥の密度を調べた。その結果、0.3%と比較的低濃度であるにも関わらず、W-Cr合金中の照射後の水素同位体蓄積量および空孔型欠陥密度は著しく小さく、W-5%Re合金と同程度であることを見出した。TaおよびMoは添加効果を示さないことが2019年度までの研究でわかっており、合金元素の添加効果がW-SIAとの相互作用で系統的に整理できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「WにReを添加すると高エネルギー粒子の照射による空孔型欠陥の形成とそれに伴う水素同位体蓄積量の増大が抑制される」という研究代表者らの発見をもとにしている。第一原理計算によりReはWの自己格子間原子(SIA)と引力的に相互作用しクラスタを形成することがわかっており、クラスタ形成により自己格子間原子の移動度が低下することで、空孔型欠陥との再結合とそれに伴う空孔型欠陥の消滅が促進されている可能性が示されていた(Suzudoら, Modelling Simul. Mater. Sci. Eng.2014)。しかし、実験による確証は得られていなかった。そこでW-SIAとの結合力が異なる添加元素の影響を系統的に調べることとし、2019年度までにMoとTaの影響を明らかにしたが、最もW-SIAと強い結合を作ると予想されたCrについては、添加によりWの加工性が低下し試料の調製が困難となるいう問題が生じた。2020年度には、Crの濃度を0.3原子%と他の添加元素と比べ1/10程度まで低減することで緻密な試料を得ることに成功した。また、このように低い濃度においても、CrはReを5%添加した場合と同程度の空孔型欠陥形成抑制効果があることを見出した。さらに、添加元素による空孔型欠陥形成抑制効果の違いがSIAとの結合力の差異で系統的に説明できることを明らかにした。以上のように当初目標を達成しつつあり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
W-Re合金では照射に伴いWとReの金属間化合物が析出することが知られている(Tannoら, Mater. Trans. 2008)。照射により析出物が形成されるか否かは空孔型欠陥の消滅機構を考察する上で重要な情報であるため、W-0.3%Cr合金についても、析出物の有無を3次元アトムプローブ法および透過電子顕微鏡法で調べる。 また、重イオン照射で見られた添加元素の効果が中性子照射下で発現することの確認も本研究の大きな目的の一つである。日米科学技術協力事業核融合分野PHENIX計画において、米国の研究炉HFIRを用いて500℃、800℃、1100℃で中性子照射したW試料およびW-5%Re合金試料を昨年度日本へ輸送した。これらの試料を分析することで、中性子照射下でもReの存在により空孔型欠陥の形成が抑制されていることを確認する。具体的には、陽電子寿命を測定することで、空孔型欠陥の密度と大きさを調べる。また、直線型プラズマ装置を用いて重水素プラズマに曝露し、蓄積した重水素量を昇温脱離法により測定する。これらの成果により、当初の目的を達成する。さらに、2020年度に見出したW-0.3%Cr合金についても、中性子照射を開始する。
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