2020 Fiscal Year Annual Research Report
Clarifying the mechanism of tropical climate variability based on the life-cycle analysis of wave energy in the atmosphere and ocean
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18H03738
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
相木 秀則 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (60358752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 湧貴 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (10826978)
尾形 友道 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (60716679)
豊田 隆寛 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90450775)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 赤道波・ロスビー波 / 熱帯中緯度相互作用 / MJO/ENSO/IOD / 地図上トレース解析 / 季節内から季節間スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
Li et al. (2021)は、新しいスキームを用いて、インド洋で赤道ケルビン波とロスビー波によるエネルギーの鉛直的な伝達経路について、初めての解析を行った。赤道海洋表層での東向きのエネルギーフラックスは、2月と5月の両方で強く、それぞれ、湧昇と沈降の赤道ケルビン波に関連していることを示した。下向きのエネルギーフラックスがインド洋において最も深く現れる海域は、ベンガル湾南部(3ー5°N、 90°E)であることが明らかになった。この波動エネルギー下方伝達イベントは、赤道外のロスビー波によって年に4回起きて、11月から12月の間に振幅が最大となる。その理由を調べると、アラビア海の南西風が、中深度で赤道ケルビン波による東向きのエネルギーフラックスを強め、8月に振幅が最大になることが関係する可能性が示唆された。これは海洋表層での赤道ケルビン波によるエネルギーフラックスが5月にピークに達することと対照的である。これらの中深度の赤道ケルビン波パケットは、インド洋の東岸境界に到達した後、両極方向に分岐する。その片割れが、ベンガル湾南部で11月と12月に下向きのエネルギーフラックスを引き起こす。中深度の東向きのエネルギーフラックスのピークは海洋表層での東向きのエネルギーフラックスより3か月遅れており、波エネルギーは下向きに伝わっている。このように3次元のエネルギーフラックスの時空間分布が得られることになったことにより、海洋表層と深層を結合した力学的理解が深まった。本年度の実証成果を、今後、他海域や大気にも応用していくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の診断手法の適用範囲が広がり、気象研究所の海洋再解析プロダクトにおける波動エネルギー解析とその枠組みでデータ同化の評価ができるようになった。1997ー1998年のEl Ninoは西部熱帯太平洋における3月の西風イベントがトリガーとなったと考えられている。1997年後期には、SST正偏差に応答した西風偏差により正のエネルギーインプットが行われる。例えば、Toyoda et al. (2021)は、中央部での強い海面インプットが、9月から12月初旬まで断続的に起こり、これらがケルビン波を励起し、東方に伝播して、更に躍層を押し下げている過程について考察した。赤道外域においてエネルギー収支を調べると風応力と同程度のデータ同化によるエネルギーインプットが確認された。即ち、El Nino終息期の予測向上のためには、このプロセスの定量的な改善が鍵となる可能性が示唆される。従来の準地衡理論やスペクトル解析理論で困難であった時空間の統一的な取り扱いが可能となったことにより、海洋再解析プロダクトの評価において、エネルギーフラックスの診断手法が有効であることが実証された。
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Strategy for Future Research Activity |
季節内スケールについては、エネルギーフラックスの解析ツールを、実現性・正確性に応じて3バージョン構成で開発・配布していくための検証を行う。最も正確な(4次元空間におけるErtel渦位の逆計算を含む)完全版の解析ツールとの比較に重点を置いて、インド洋域でMJOの初期発達にとって重要な外部波動強制力は中高緯度起源なのか熱帯内起源なのかイベントごとにエネルギー循環経路を同定できるようにする。MJOがインド洋から太平洋へ進行する際の海洋大陸(MC)障壁効果についてエネルギーフラックス解析で記述する。気候学的側面においては、MJOのMC通過前後の位相伝播特性から海洋大陸で一時減衰し西太平洋で再発達するもの、MC上で衰退するものに分類し、それぞれの波動エネルギーの流れを追跡しその消散過程とエネルギー収支の相違から、海洋大陸障壁効果を定量化することでそれを引き起こす重要な物理過程を特定する。 経年変動スケールについては、(熱帯と中緯度を連続した群速度ベクトルの場という)圧倒的な新規付加価値がもたらされるので、競合研究がほとんどない。本研究が提供する解析ツールの3つのバージョンの内、最も簡単な水平2次元版を用いて論文執筆を続ける。例えば、海洋については、MJOとしばしば結合系を形成し、ENSO/IODイベント発生に重要な海洋長周期波動の東西伝播サイクルのメカニズムを、波動エネルギー伝達経路のトレース解析により明らかにする。大気については、水平方向の波動連鎖と鉛直方向の波動連鎖の定量化比較に着目して解析する。例えば、成層圏を介したグローバルな影響を考察ができるような定式化を進める。
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Research Products
(5 results)