2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of the functional prediction of polymer materials base on informatics and structural data
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18H03850
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
前川 康成 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所, 副所長(定常) (30354939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川勝 年洋 東北大学, 理学研究科, 教授 (20214596)
小泉 智 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00343898)
大和田 謙二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, グループリーダー(定常) (60343935)
趙 躍 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (30450307)
大道 正明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員(定常) (10625453)
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10370462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インフォマティクス / 高分子材料 / 機能予測 / 中性子小角散乱 / X線小角散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、放射線グラフト重合技術を用いて作製する高分子機能性材料について、インフォマティクスによる機能予測の実証を目指し、各テーマの研究を行った。 高分子機能性材料のデータセットに関する研究では、昨年度に引き続き、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体 (ETFE) にスチレン誘導体やビニルイミダゾール等のモノマーを放射線グラフトし、プロトン伝導性やアニオン伝導性の高分子電解質膜を作製するとともに、機能予測に必要なパラメータの設定を行った。量子化学計算により材料物性データの拡充を行うことができた。また、光学的文字認識等を活用することで、文献からデータを効率的に抽出できた。 高分子機能性材料の構造解析研究では、グラフト重合により作製したアニオン伝導性の高分子電解質膜に対し、X線小角散乱(SAXS)測定や中性子小角散乱(SANS)測定を行い、アニオン伝導性を支配する高分子階層構造に関するデータを取得した。イオンチャンネルであるイオン伝導相(イオン伝導性高分子の層)と非イオン伝導相(ETFEの結晶/非晶層+疎水性グラフト鎖の層)から成る構造モデルに基づき解析することで、イオン伝導相中のグラフト鎖体積分率が定量的に評価できることを明らかにした。また、マルチスケールシミュレーションに基づき算出したプロトン伝導性高分子電解質膜のX線小角散乱スペクトルが、実際のグラフト重合により作製した電解質膜のSAXS測定結果と一致することを確認できた。 数理統計解析による機能予測研究では、説明変数となる高分子の物性データを、文献等から抽出するとともに、実測定のほか、分子記述子ソフトウェアを用いて推算した。多重共線性を確認して決定した15個の説明変数を用い、人工ニューラルネットワーク法でプロトン伝導度の予測モデルを作成した結果、予測精度0.9程度で予測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子機能性材料のデータセットに関する研究においては、グラフト型高分子材料の文献からの効率的なデータ抽出を行うとともに、ETFEを基材とした機能性材料の作製と実測によりデータを拡充することで、信頼性の高いデータセットの構築を進めることができた。 高分子機能性材料の構造解析研究においては、放射線グラフト重合技術により作製したアニオン伝導性高分子電解質膜のSAXS/SANS測定、構造解析から導いた新たな構造モデルにより、イオンチャンネル中のグラフト鎖の体積分率を定量的に評価できた。また、シミュレーションによる構造解析研究では、シミュレーション結果と実際のSAXSスペクトルとが一致したことから、本シミュレーションが妥当であることを確認できた。 統計解析によるプロトン伝導電解質膜の機能予測研究においては、実測値に加え、量子化学計算や分子記述子ソフトウェアにより物性データを取得し、最適な説明変数の選定を進めた結果、従来に比べ、高い予測精度でプロトン伝導度を予測することができた。 尚、適当な博士研究員が見つからなかったが、人件費分の予算を5連式合成装置の購入等に充て、効率的な機能性材料の作製・データ収集を行うことで、研究の大幅な遅延を回避した。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子機能性材料のデータセット構築では、グラフト高分子材料に関する文献を整理するとともに、自然言語処理、テキストマイニングを取り入れ、効率的に英文・和文からデータ抽出を行い、インフォマティクス活用に不可欠な信頼性の高いデータの収集に取り組む。また、高分子基材としてフッ素系樹脂であるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体や芳香族炭化水素系樹脂であるポリエーテルエーテルケトンやポリフェニレンスルフィドを、機能性グラフト鎖およびその前駆体を形成するモノマーとしてスチレン誘導体やビニルイミダゾールを用いて作製したグラフト高分子機能性材料に関して、機能予測に必要な物性パラメータを選定する。 計測・シミュレーションによる構造解析研究では、引き続き、グラフト重合により作製した電解質膜等の高分子機能性材料に対して、SPring-8でX線小角散乱 (SAXS) 測定やJ-PARCで中性子小角散乱 (SANS) 測定を行い、機能性を支配する高分子階層構造に関する構造データを取得する。また、粗視化分子動力学法を用いた高分子電解質膜(アモルファス領域)の構造シミュレーションにより、イオンチャンネルの形状、サイズや連結性を評価する。 統計解析による機能予測研究では、プロトン伝導度や含水率などの予測に適した解析アルゴリズムの探索を進めるとともに、量子化学計算や分子記述子ソフトウェアを活用して推算した説明変数の中から寄与度の高いものを選定することで、高精度予測モデルの構築を図る。
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Research Products
(13 results)