2020 Fiscal Year Annual Research Report
光合成生物に広く保存された栄養欠乏時の脂質転換制御とその応用の分子基盤
Project/Area Number |
18H03941
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 啓之 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (20233140)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00242305)
西村 浩二 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30304257)
小林 康一 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40587945)
堀 孝一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70453967)
粟井 光一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80431732)
下嶋 美恵 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90401562)
清水 隆之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90817214)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スルホ脂質 / トリアシルグリセロール / リン欠乏時の脂質転換 / 藻類 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
[クラミドモナスとナンノクロロプシスの脂質転換制御] クラミドモナスLRLについてはホモ二量体を形成し、転写抑制因子として機能する可能性が高い事を示した。またlrl1-1変異株では、窒素欠乏とリン欠乏の両方で転写が誘導されるDGTT1遺伝子について、窒素欠乏に応答した転写誘導についても有意に低下しており、LRL1は窒素欠乏応答にも寄与することがわかった。さらにクラミドモナスLRL類似遺伝子の変異株を解析した結果、細胞の分裂・増殖、貯蔵脂質の蓄積の制御に関与する事を明らかにした。ナンノクロロプシスについては、リン欠乏時の脂質転換の中心制御因子NoPSR1に関する成果を論文として報告した。 [PGとSQDGの機能相補性] シロイヌナズナにおいて酸性糖脂質であるSQDGやグルクロニルジアシルグリセロール(GlcADG)が酸性リン脂質PGの役割をどの程度相補できるかを調べた結果、光合成の電子伝達反応におけるPGの機能はSQDGのみが相補できること、SQDGは光合成以外にも植物の生育全般においてPGと相補的な役割を担うことを明らかにした。 [リン欠乏時の脂質転換の進化と多様性] 車軸藻類クレブソルミディウムのリン欠乏時に増加する未同定の脂質が、種子植物においてリン欠乏耐性に関与するGlcADGである事を明らかにし、車軸藻類が出現するより前に植物のGlcADG合成が誕生した可能性を示した。またユーグレナのリン欠乏応答解明のため実験に用いる培地組成を検討したところ、組成によりパラミロンや色素、膜脂質の含量に違いがみられ、特異的に蓄積する脂質も観察された。さらに、昨年度に引き続き、シロイヌナズナにおけるLRLホモログの遺伝子破壊株の整備を進めた。リン欠応答能が予想されるAtMYBのサブグループ22と23に着目して、AtMYB44,56,70,77,109の遺伝子破壊株のホモラインを整備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、計画していた研究内容に大きな遅れが生じた一方、新たな発見が多数生まれており、結果的に全体としては十分な内容の成果を得つつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
リン欠乏時の脂質転換の仕組みにおいて酸性糖脂質グルクロニルジアシルグリセロール(GLcADG)の合成の仕組みやその機能、進化に関して大きな発見が得られた。これらの成果は本研究の提案当初には予想していなかった成果であるが、重要な発見であり、課題の中に積極的に取りこむ。特にGLcADGの機能、合成機構とその進化について着目し、さらに研究を進める。
|
Research Products
(31 results)