2019 Fiscal Year Annual Research Report
Preservation of mammalian genetic resources and study for the developmental mechanism using freeze-dried cells
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18H03953
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00532160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 琢磨 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10754567)
市川 明彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (20377823)
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (30175228)
武田 久美子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (60414695)
黄川田 隆洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (60414900)
赤木 悟史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (70414696)
及川 俊徳 宮城県畜産試験場, 畜産試験場, 上席主任研究員 (70588962)
坂本 修士 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (80397546)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凍結乾燥 / 遺伝資源保存 / 哺乳類の初期発生機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
【精子】本研究では、冷蔵輸送精液を供試し、凍結乾燥 (FD) によって調整したウシ精子による体外受精胚の作出を試みた。採精したウシ精液は、一次希釈液で希釈し冷蔵輸送した。到着後、精子を8 mM GSHあるいは5 mM DTTで10分間処理し、Na-EGTAで浮遊させFDをおこなった。FD精子はコメットアッセイ法によってDNA損傷を評価し、TEMで観察した。FD後-30℃で保存した精子をウシ卵母細胞に顕微注入し、イオノマイシンおよび6DMAPによる活性化処理後7日間の発生培養をおこなった。FD精子のDNA損傷はGSH処理区では認められず、DTT処理区では25%の損傷が検出された。さらに、TEMによる観察によってDTT処理区では精子先体部の著しい損傷が認められた。顕微授精後の卵割率は69%、胚盤胞期胚発生率は13%となった。 【体細胞】本研究では、FDウシ線維芽細胞を使用して、NT胚の前核期のエピゲノムと胚盤胞期の遺伝子発現を調べた。細胞をFD溶液に懸濁し、11.5時間凍結乾燥した。 FD細胞のDNA損傷をコメットアッセイで評価した。H3K4およびH3K27のトリメチル化を、前核期のNT、単為生殖および雄性発生胚において免疫染色により調べた。 8日間の培養後、NTおよび体外受精胚盤胞をOCT4およびIFN-tau遺伝子発現を評価した。FD細胞を使用したNT胚は、前核期のヒストンH3トリメチル化の低下と、胚盤胞期の胎盤機能の異常な遺伝子発現を観察した。これらの結果から、FD細胞を使用したNT胚の胚移植後にリプログラミングおよび妊娠認識の欠陥が妊娠の損失を引き起こす可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究グループ間の緊密な連携により、ウシ凍結乾燥精子によって作出した受精卵の胚移植後の受胎を2例確認しており、精子では凍結乾燥によるゲノム機能の維持が認められた。 一方、体細胞の凍結乾燥では、核移植後のクローン胚の作出は恒常的に可能なものの胚移植後の受胎には至らず、その原因がエピゲノムや遺伝子発現の異常にあることが判明した。 本年度は、凍結乾燥技術の遺伝資源の保存としての有効性が示唆されただけでなく、哺乳動物の初期発生機構の探求につながる知見が蓄積されており、今後の研究の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
凍結乾燥精子については常温での保存性を検討する。ウシ凍結乾燥精子によって作出した受精卵からの産子生産に成功すると、これでの液体窒素保存に替わる新しい家畜精子の保存技術の実用化研究への進展が見込まれる。しかしながら対象一つとなる和牛の遺伝資源の海外流出の防止と食の安全性いう観点から、実装化に対しては国、国民との議論が必要であると考えられる。 体細胞については、作出したクローン胚の網羅的な遺伝子発現の解析及びエピゲノム解析を詳細に行い、初期発生機構の探求を行う。あわせて発生過程のライブイメージング手法を確立し、核移植後の核の動態等の観察を行う。
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Research Products
(6 results)