2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of heterogeneity-induced colon cancer malignant progression
Project/Area Number |
18H04030
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 大腸がん / オルガノイド / 転移 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト大腸がんの発生や悪性化に関与するドライバー遺伝子の中でも、Apc、Kras、Tgfbr2、Trp53、Fbxw7の5種類の遺伝子変異頻度が高く、それぞれの遺伝子変異を異なる組み合わせを導入したマウスモデルを作製して悪性化形質を解析した結果、良性腫瘍発生にはApc遺伝子変異(A)が必須であり、それに加えて粘膜下浸潤の誘導にはTgfbr2変異(AT)、Trp53変異(AP)が関与しており、さらにKras変異の導入により(AKT、AKP)、腫瘍細胞はEMT様の変化を呈して脈管浸潤する事を明らかにした。また、AKTP、AKTPFなどの4重、5重変異により高い転移能を呈することも、この実験系により明らかにされた。一方で、ヒトのがん組織は遺伝的背景の異なる多様なサブクローンの集合体で形成されており、その多様性が悪性化に関与する可能性も指摘されている。本研究は、我々が樹立したマウス腸管腫瘍由来のオルガノイドシステムを用いて、遺伝的多様性による悪性化誘導機構を解明する事を目的として推進している。 令和元年度は、転移誘導に関わるp53遺伝子変異に着目した研究と、異なる遺伝的背景のサブクローンによるポリクローナル転移機構についての研究について以下の成果を得た。多くの大腸がんで検出されるp53変異はアミノ酸変異をともなう機能獲得型変異(gain-of-function, GOF)であり、樹立したAKTP細胞もGOF変異と野生型のヘテロ接合体だが、集団内で野生型をLOHで欠失したクローンが転移能を獲得することを明らかにした。また、転移性のないATやAP細胞は、転移能の高いAKTP(LOH)細胞とクラスターを形成して肝臓類洞に到達すると、協働的に転移巣を形成する現象を明らかにした。以上の結果は、「多段階発がん」の概念を超えた、大腸がん悪性化機構の理解へ貢献が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大腸がんの肝転移巣形成過程に着目し、樹立したオルガノイドを用いた研究を展開した結果、令和元年度の研究により以下の成果が得られた。 (1)野生型p53のLOHによる欠損と機能獲得型p53変異(GOF)の相互作用による転移能の獲得: p53のGOF変異をヘテロで有するAKTP細胞をマウス脾臓に移植すると、肝転移巣を形成する。転移巣の組織病理解析により形態学的に悪性化が亢進しているため、レーザーマイクロダイセクションにより、転移AKTP細胞を回収してp53遺伝子型を解析した結果、50%以上の領域で野生型p53をLOHにより欠損している事を明らかにした。in vitroの実験によって、AKTP(ヘテロ)細胞をサブクローニングすると、樹立したサブクローンの全てでLOHにより野生型p53遺伝子を欠損していたため、p53GOF変異に加えてp53LOHにより、がん細胞の生存性とクローン拡大能が亢進して転移巣を形成すると考えられた。 (2)AKTP(LOH)細胞と、転移性を獲得していないAT、AP細胞を混在させて脾臓移植すると、一定の頻度でAT、AP細胞を含む転移巣が形成され、これらの細胞もAKTP細胞と同様に肝臓組織内で分裂している事を明らかにした。この結果は、細胞集団の中に転移能を持つサブクローンが存在すれば、転移能の無い腫瘍細胞もポリクローナル機構により転移することを示した。一方で、 原発巣で浸潤能を獲得していない、A、AK細胞はAKTP細胞と一緒に脾臓移植しても転移巣に含まれないため、ポリクローナル転移するための必要条件となる腫瘍形質の存在も示唆された。 (3)オルガノイド発現解析結果から得られた、転移クローン特異的遺伝子を対象にshRNA解析を実施し、複数の候補遺伝子を抽出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
p53は多くのがんで変異が認められる重要な「がん抑制遺伝子」であり、p53の機能解析が分子生物学的手法により世界的に推進されているが、個体レベルでの研究は十分に実施されていない。この研究状況において、本課題で明らかにしたp53LOHによるp53GOFがん細胞の転移能獲得機構は、個体での解析で初めて明らかにされた重要な知見であり、令和2年度も引き続き p53研究を実施する。とくに、腫瘍細胞が単独になった時の生存性や、少数の腫瘍細胞の移植による転移巣形成効率、またGOFとLOHの相互作用による遺伝子発現解析により、転移能獲得の分子機構を明らかにする。本研究により、転移巣形成のコアとなる遺伝子変異クローンの必須条件を解明する。 また、ポリクローナル転移機構の可能性を示す論文が、すでに報告されているが、実際に異なる遺伝的形質を持つ細胞集団による転移形成機構は明らかにされていない。今後の解析により、転移能を獲得していないAPやAT細胞が、転移性のAKTP細胞と共存することで転移巣を形成するメカニズムを、経時的な観察により解析を推進する。とくに、転移巣形成に重要に関与する線維性微小環境形成過程や、その細胞成分と想定される肝星細胞(HSC細胞)の活性化誘導における、各サブクローンの役割に着目して解析を進める。 さらに、これまでの遺伝子発現解析により転移性の高いオルガノイドに特的に発現誘導する遺伝子群を特定し、shRNAにより候補遺伝子を得ている。これらの遺伝子産物による転移性獲得についての解析も継続して行う。以上の解析で得られた結果について、ヒト大腸がんから樹立したオルガノイドを用いて検証実験を実施する。
|
-
-
[Journal Article] Interleukin 1 upregulates microRNA-135b to promote inflammation-associated gastric carcinogenesis in mice.2019
Author(s)
Han TS, Voon DC, Oshima H, Nakayama M, Echizen K, Sakai E, Yong ZWE, Murakami K, Yu L, Minamoto T, Ock CY, Jenkins BJ, Kim SJ, Yang HK, and Oshima M.
-
Journal Title
Gastroenterology
Volume: 156
Pages: 1140-1155
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
[Journal Article] CRISPR-Cas9 mediated gene knockout in intestinal tumor organoids provides functional validation for colorectal cancer driver genes.2019
Author(s)
Takeda H, Kataoka S, Nakayama M, Ali MAE, Oshima H, Yamamoto D, Park JW, Takegami Y, An T, Jenkins NA, Copeland NG, and Oshima M.
-
Journal Title
Proc Natl Acad Sci USA
Volume: 116
Pages: 15635-15644
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-