2019 Fiscal Year Annual Research Report
身体逆投射と記憶生成のためのバーチャルリアリティの基礎構造の解明
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18H04118
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池井 寧 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任教授 (00202870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北崎 充晃 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90292739)
雨宮 智浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70396175)
笠松 慶子 首都大学東京, システムデザイン学部, 教授 (90296385)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体運動感覚 / 能動感 / 歩行運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,他者の全身の身体運動状態とその技能を伝達共有して体験全体の記憶を生成するためのバーチャルリアリティの構造を解明することである.このためにバーチャル身体の多感覚提示下の身体感覚の変換投射範囲を解明すると同時に認知的シミュレーションの特性の解明を行う. 歩行を対象とした実験により,実際歩行時の能動運動感は約70%であり,約20 %の受動運動感が存在することが示された.実際歩行時の能動運動感は,ランダムさを含む身体制御への負荷の程度に依存した.実際歩行をせずに歩行感覚を生成するVR では,歩行イメージによる運動意思によって内部モデルを賦活することで,能動運動感・歩行感覚の増加と受動運動感の低下の効果があることが示唆された.また,歩行感覚は,実写映像提示による無意識下での内部モデルの賦活によっても,増加することが示唆された.歩行イメージは,能動運動感と歩行感覚を増加させるが,実写映像と一定足音の同時提示によりその効果が増大した. スティックを持った右上腕部の回旋運動によって物体を打撃する運動を例として,運動感覚を伝達する手法の能動感を評価した.運動を伝達する過程の水準は,実際運動実行,受動運動受容,運動イメージの3水準であり,その際に得られる能動運動感覚を評価した.その結果,受動運動においても感覚フィードバックを与えると片手運動の場合に約50 %の能動運動感覚が得られている.能動運動感覚への寄与が最大となる要因は,運動指令と結果の一致であり,次いで感覚情報であることが示唆された.すなわち能動運動感覚に寄与する要因について粗い推論を行うと,運動指令との一致感が最も寄与が大きく約35%,次に視聴触の感覚と固有感覚がそれぞれ約25%となることが推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動の能動感を生じさせるメタ認知VR(認知シミュレーション)の増強効果に関して,歩行運動と打撃運動を対象として実験的評価を進めることができた.自律駆動の場合と他律駆動の場合を個別に評価することで,その融合のための基礎特性を得ることができた.計画の修正として重心移動と筋電による意図の検出の検討を行うことができた.さらに,身体感覚の変換投射範囲に関して,体幹の回旋および冠状面角度の姿勢要因の効果について予備評価を行うことができた.それらのための計測装置が構築できたため,おおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
歩行運動としては,旋回する歩行を検討することにより,体験の範囲を拡大することを予定する.これまでの前庭感覚提示装置では,旋回運動は対象外であったが,体幹と下肢に対して旋回運動刺激を同期して提示することで,全身の運動としての歩行の投射範囲についてより広い知見が得られる.また,上肢運動を加える際の冠状面の角度の効果を調べることにより,姿勢における重力方向の影響を明らかにする.能動と受動の融合についての評価も継続する.
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