2018 Fiscal Year Annual Research Report
浸潤病変の局所制御と術後機能温存を両立する微弱衝撃波パルスジェットメスの開発
Project/Area Number |
18H04157
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 特任准教授 (10447162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 悌二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00217548)
遠藤 俊毅 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00535370)
中西 史 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00547408)
大沢 伸一郎 東北大学, 大学病院, 助教 (00813693)
齋藤 竜太 東北大学, 医学系研究科, 講師 (10400243)
山下 慎一 東北大学, 大学病院, 講師 (10622425)
唐澤 秀明 東北大学, 大学病院, 助教 (30547401)
辻田 哲平 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (40554473)
荒船 龍彦 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (50376597)
大谷 清伸 東北大学, 流体科学研究所, 特任准教授 (80536748)
近野 敦 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90250688)
西嶌 泰生 東北大学, 大学病院, 助教 (90816307) [Withdrawn]
森田 隆弘 東北大学, 大学病院, 助教 (80836289)
八木橋 真央 東北大学, 大学病院, 技術補佐員 (80801927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医工学 / 産学連携 / 低侵襲治療 / トランスレーショナルリサーチ / 流体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが原理開発から臨床研究まで開発を進めたパルスジェットメスに微弱衝撃波を印加することで、内視鏡下に脳内浸潤病変境界部への薬剤深達が得られることを非臨床試験で明らかにすることである。パルスジェットメスの特徴である細血管・神経の温存下の切開、剥離に加えて手術摘出腔周囲に薬剤を浸潤する機能を付加することで、最大限の局所病変制御と機能温存の両立が期待できる。期間全体では、内視鏡下に衝撃波を印加可能なパルスジェットで流体工学的検討、非臨床試験(ラット浸潤病変モデル)で有効性と安全性を検討、脳を含めた悪性疾患の浸潤病変に対する新たな治療戦略の提供、機器の事業化につなげる。
H30年度は、浸潤病変部の物性値(破断強度/ヤング率/粘弾性)計測、パルスジェットの流体工学的検討を行った。従来実施してきた開頭手術を念頭においたデバイス(15cmの直管から射出に対して内視鏡環境下射出デバイスで検討を行った(ステンレス管先端に60、130、195 cmのPEEK製のカテーテルを接続)。その結果、曲率半径(1.5 、15 cm)、曲角(0、60、120°)、エネルギー(駆動電圧 30-50V)、周波数(100-400Hz)、流量(2.4-5.8 ml/分)、操作速度(0.50 / 0.25 / 0.12 mm/s)が組織深達度、10点平均粗さにおよぼす影響を検討した。その結果、切除深達度はカテーテル長依存的に減少、カテーテルを曲げた時の切除深達度への影響は標準誤差内であった。また、操作の移動速度より周波数が切除深達度に大きく関与することが示唆された。また、高速度画像解析により、移動速度より周波数が切除深達度に大きく関与する機序解明に目途をつけた。また、安全性を確立するために、電圧/吸引量/吸引形状と拡散量の関連を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は、肝臓も含めて浸潤病変部の物性値(破断強度/ヤング率/粘弾性)計測に加えて、パルスジェットの流体工学的検討を行った。従来実施してきた開頭手術を念頭においたデバイスに対して内視鏡環境下射出デバイスで検討を実施し、空中照射環境下と比較し、水中環境下では射出距離の増加によって切除深達度が低下し、算術平均粗さが増大すること、また、水中環境下では、空中環境下より少量の水量での切除が可能であることが示唆された。また、水中照射時には、曲率半径、曲角、エネルギー(駆動電圧)、周波数、流量、操作速度が組織深達度、10点平均粗さにおよぼす影響を検討し、カテーテル長、周波数が切除深達度に大きく関与することが示唆された。高速度画像解析により、同一流量であれば、周波数が高い場合は、先進流効果におり、後続流の打ち込み効果が高くなる可能性が示唆され、流体制御の見地から知見を得ることができた。また、安全性を確立するために、水中での拡散に関する評価方法を確立し、電圧/吸引量/吸引形状と拡散量の関連を検討し、電圧が拡散量に強く相関、吸引量が強い負の相関を認めること、距離は拡散量と強い相関、底面積は強い負の相関を示すことを明らかにした。その一方、模擬モデルからの距離が1mm以下で吸着してしまうことから、3Dプリンターでノズル形状の改良を試み、出力 / 吸引量と拡散量の関係を外筒の有無で比較した。その結果、先端構造を変化により拡散量は一定量減少を認め、従来の形状と新しい形状の拡散量に有意差が示された。その一方で、拡散範囲を狭めることで吸引管付近の拡散量は制御可能であったが、移動切除によって拡散物質が制御範囲外に漏出する可能性は排除できず、引き続き検討を行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度は、H30年度に引き続き、浸潤病変部の物性値を物性工学的検討、微弱衝撃波印加後のパルスジェットの流体動態と組織内深達効果を流体工学、組織学的検討で臨床的に有用性をもたらすことができる条件まで明らかするための検討を継続する。その後、脳腫瘍浸潤ラットモデルで内視鏡下手術用パルスジェットメスに微弱衝撃波を印加、照射し、従来の切開、剥離に加え局所病変制御効果を評価、次段階での医師主導治験に必要な安全性、有効性に必要な知見を蓄積する。工学的検討として、浸潤病変部の物性値(破断強度/ヤング率/粘弾性)計測を継続、データ蓄積を東北大学脳神経外科の大沢と物性工学が専門の防衛大学の辻田、人間工学が専門の産業技術総合研究所の鷲尾が行う。東北大学脳神経外科の油川大輝、岩渕直也が物性測定に協力する。模擬モデルでの検討(物性値が異なり混在の空間的組成を変えたモデルで検討)と冶具調整(種々のサンプル条件への対応を東北大学病院臨床研究推進センター内開発拠点の既存設備で行う。治具作成に際しては東北大学脳神経外科針生新也、ならびに機械計測が専門の東京電機大学荒船龍彦が担当する。次に、微弱衝撃波印加後のパルスジェットの流体動態に関する流体工学的検討を東北大学流体科学研究所で衝撃波工学が専門の大谷清伸が行う。流体工学的検討では、可視化/ 圧測定を東北大学流体科学研究所の現有設備で、理論解析での最適化を行う。東北大学脳神経外科の長田佳整、古知龍三郎、佐藤加奈子、田代亮介が可視化/ 圧測定実験の支援を行い、理論解析は大谷と北海道大学で理論解析が専門の近野敦が行う。さらに、非臨床試験に関する倫理申請を東北大学脳神経外科冨永悌二と齋藤竜太、東北大学外科の中西史、東北大学泌尿器科の山下慎一、東北大学外科の唐澤秀明が組織学的検討を行い、流体工学的検討で明らかになった条件を用いて、非臨床試験を開始する。
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Research Products
(15 results)
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[Book] 脳・脊髄外傷の治療2018
Author(s)
中川敦寛、Rocco Armonda、冨永悌二
Total Pages
7
Publisher
メジカルビュー社 新NS NOW
ISBN
978-4-7583-1574-6