2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel photo-induced phase conversion materials based on quantum dynamics control of Charge-Structure-Spin-Photon coupled systems
Project/Area Number |
18H05208
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
腰原 伸也 東京工業大学, 理学院, 教授 (10192056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 忠彦 東京工業大学, 理学院, 助教 (70313327)
東 正樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40273510)
林 靖彦 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50314084)
羽田 真毅 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70636365)
桑原 真人 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50377933)
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
石原 純夫 東北大学, 理学研究科, 教授 (30292262)
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Project Period (FY) |
2018-04-23 – 2023-03-31
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Keywords | 光誘起相転移 / フェムト秒パルス電子線 / 量子ダイナミクス / 超高速ダイナミクス / 隠れた物質秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物質と光子が一体化した場で極短時間に発現する、光励起特有の新秩序状態(Hidden State)の特性や生成過程を、フェムト秒分光・電子線構造観測手法を用いて解明し、超高速可逆光相換物質の開拓や新奇(光誘起マルチフェロイクス)物質の開拓に挑戦することを目的としている。 本年度は研究初年度であるため、この物質開発に必要不可欠な、30fs超短パルス電子線回折装置のデザインと構築を当初計画通り実施した。電子銃、加速装置、パルス幅圧縮装置やそのRF回路等市販品は皆無なため、全て独自にデザインし導入した。特に後年度実施のパルス圧縮用RF空洞、スピン偏極線源導入に備えた独自デザインチャンバーに、昨今の物質探索面から必要性が急速に増しているTHz域励起光導入を可能とする設計変更を施した。現在真空槽を組み上げ真空度の向上を行っている。さらに超広帯域励起光源(含むTHz域:自作)の構築準備設計も開始した。 観測装置の準備と並行して、超高速光学測定によって超高速光スイッチ・マルチフェロイック物質開拓にとって有望な有機物(複合スピンクロスオーバー系や磁性転移を伴う中性-イオン性転移系)、Co酸化物系に関して(浅香とも密接に薄膜試料準備で連携)、現有のサブピコ秒電子線発生装置を活用して構造変形と光電機能の関連解析に集中的に取り組んだ。この結果、Co系酸化物絶縁体で、巨大光学特性変化を伴う酸素イオンの大規模な光誘起移動現象や強誘電性変化が起きることを発見した。これらの結果は、スピン状態の変化も伴った、光励起状態特有のHidden Stateの出現を強く示唆している。これらの成果は理論解析グループにとっても格好のターゲットであり、データ解釈の物理基本モデルに関して理論との密接な協力を行い、光励起による高スピンポーラロン相出現の可能性の検討など新概念提案に向けた計算を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究初年度であるため、以下の2つの研究を並行して実施した。 1:研究に必要不可欠な、30fs超短パルス電子線回折装置のデザインと構築開始。 2:超高速光学測定による、超高速光スイッチ・マルチフェロイック物質の有望候補の探索と観測に適した薄膜試料準備。 このうちテーマ2に関しては、当初計画以上に進展した。特にCo系酸化物絶縁体で、巨大光学特性変化を伴う酸素イオンの大規模な光誘起移動現象や強誘電性変化が起きることを発見した。この結果は、スピン状態の変化も伴った、光励起状態特有のHidden Stateの出現を強く示唆しており、理論グループと連携しながら、光励起による高スピンポーラロン相出現の可能性の検討など新概念の提案を準備中である。また有機金属スピンクロスオーバー転移物質と他の転移を組みわせた系では、励起光の波長による光誘起相の選択、さらには磁性転移を伴うと期待される超高速光誘起中性-イオン性転移を世界に先駆けて発見するなど、今後の光マルチフェロイック材料開発に直結すると期待される成果を上げることができた。 一方でテーマ1に関しては、世界的に前例のない装置であるため、全部品を独自にデザイン・加工依頼するしか無い。これら装置部品いずれもが、当初計画に沿って納入され、実際の組み上げと真空度向上への努力が開始され、この点では当初計画は達成することができた。ただし当初計画を上回る速さは達成できなかった。基幹となる電子線加速用高電圧発生装置と導入用高電圧絶縁材料(碍子)の納入スピードアップが研究計画立案時には期待されたが、当該企業での研究人材の枯渇が急激に進み困難となってしまったためである。この点に注意を払い、2年度目の発注部品に関しては、大学当局の協力も得て、入札・技術評価・発注作業の迅速な年度当初スタートを行えるよう、事前準備作業、打ち合わせを実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度、30fs電子線回折装置に必要な独自装置のデザインと根幹部分の組み上げ等を予定通り実施した。これを受け、電子線パルス幅圧縮用のRF空洞、そのための高出力RFアンプ回路の設計と発注を当初計画通り実施し、30fs程度のパルス幅電子線発生を目指す。また温度可変試料ホルダーの作製も行う。加えてTHz励起光への巨大光学応答を示す候補物質が発見された為、OPAを基盤とする超広帯域励起光源(THz域を含む)の構築も行う。 観測装置の改良と並行して、超高速分光法による評価から選抜した、無機・有機結晶に関して、現段階(パルス幅未圧縮)のパルス電子線装置の試運転も兼ねて構造変形と光電機能の関連解析を開始する。 初年度の準備分光実験で、光マルチフェロイクス発現が期待される一連のCo系酸化物絶縁体や有機誘電体で、強誘電性変化が光励起後100fs以内で起きることを示唆する結果を得た。さらにFeイオンの電荷秩序が誘電性の起源となっている電子強誘電性酸化物でも、その誘電性が光で高速変調可能なことを示唆する結果を得た。これらの結果は、光誘起による強誘電性制御、マルチフェロイック制御が、Hidden Stateを通して可能であることを強く示唆している。そこで超短パルス電子線装置を用いて光誘起超高速構造変化の実証に取り組む。この研究のために、分担者に加え無機誘電体に精通した池田、有機金属錯体専門家(加藤)と試料調整で密接に協力する。また、ミクロな物理メカニズムの理論解析とも分担者間で密接な連携を引き続き行う。加えて、光誘起超高速構造変形の化学的視点への展開を目指し、酸化グラフェンなどの反応解析への電子線の活用にも挑戦を開始する。 理論グループは、電子強誘電体やスピンクロスオーバー物質などを対象とした量子動的現象を理解するために有効模型を構築する。これをもとに大規模、高速の数値計算を実施する。
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Research Products
(51 results)
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[Journal Article] Optical Study of Electronic Structure and Photoinduced Dynamics in the Organic Alloy System [(EDO-TTF)0.89(MeEDO-TTF)0.11]2PF62019
Author(s)
T. Ishikawa, Y. Urasawa, T. Shindo, Y. Okimoto, S. Koshihara, S. Tanaka, K. Onda, K. T. Hiramatsu, Y. Nakano, K. Tanaka, and H. Yamochi
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Journal Title
Appl. Sci.
Volume: 9
Pages: 1174
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Direct Observation of Magnetization Reversal by Electric Field at Room Temperature in Co-Substituted Bismuth Ferrite Thin Film2019
Author(s)
Keisuke Shimizu, Ryo Kawabe, Hajime Hojo, Haruki Shimizu, Hajime Yamamoto, Marin Katsumata, Kei Shigematsu, Ko Mibu, Yu Kumagai, Fumiyasu Oba, and Masaki Azuma
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Journal Title
Nano Letter
Volume: 19
Pages: 1767-1773
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultrafast Control of Ferroelectricity with Dynamical Repositioning of Protons in a Supramolecular Cocrystal Studied by Femtosecond Nonlinear Spectroscopy2019
Author(s)
Tsugumi Umanodan, Keisuke Kaneshima, Kengo Takeuchi, Nobuhisa Ishii, Jiro Itatani, Hideki Hirori, Yasuyuki Sanari, Koichiro Tanaka, Yoshihiko Kanemitsu, Tadahiko Ishikawa, Shin-ya Koshihara, Sachio Horiuchi, and Yoichi Okimoto
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Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 88
Pages: 13705
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Tuning and Tracking of Coherent Shear Waves in Molecular Films2018
Author(s)
Lemke H. T., Breiby D. W., Ejdrup T., Hammershoej P., Cammarata M., Khakhulin D., Rusteika N., Adachi S., Koshihara S., Kuhlman T. S., Mariager S. O., Nielsen T. N., Wulff M., Soelling T. I., Harrit N., Feidenhans'l R., Nielsen M. M.
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Journal Title
Acs Omega
Volume: 3
Pages: 9929-9933
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Structure and photoinduced dynamics of graphene oxide revealed by ultrafast time-resolved electron diffraction2019
Author(s)
T. Sawa, M. Hada, K. Miyata, S. Ohmura, Y. Arashida, K. Ichiyanagi, I. Katayama, T. Suzuki, Wang Chen, S. Mizote, T. Nishikawa, Y. Yamashita, T.i Yokoya, T. Seki, J. Matsuo, T. Tokunaga, C. Itoh, K. Tsuruta, R. Fukaya, S. Nozawa, S. Adachi, J. Takeda, K. Onda, S. Koshihara, Y. Hayashi, Y. Nishina
Organizer
6th Banff Meeting on Structural Dynamics
Int'l Joint Research
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