2018 Fiscal Year Annual Research Report
Central Bank Communication Design
Project/Area Number |
18H05217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 浩介 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30263362)
梶井 厚志 京都大学, 経済研究所, 教授 (80282325)
宇井 貴志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (60312815)
上田 晃三 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30708558)
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / ゲーム理論 / 中央銀行 / 金融政策 / 透明性 / 信認 / 関心 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の成果を挙げることができた。第1の成果は,日銀の情報発信が民間の物価予想に及ぼした効果に関する新たな知見である。日銀の積極的な情報発信にもかかわらずインフレ期待が高まらず,その原因がわからないという混迷した状況にあって,本研究では,理論と実証の両面で新たな知見を発信し,大きな貢献を行うことができた。第2の成果は,中央銀行の情報伝達に関する理論モデルの構築である。中央銀行の発信する情報の精度とフィリップス曲線の傾きの関係について新たな知見を得たほか,最適情報設計問題のプラットフォームとして,LQGゲームを用いたものを提案した。第3の成果は非構造化データの分析手法の開発である。中央銀行コミュニケーションの定量的な分析には,発信者である中央銀行の発行する文書と,受信者である金融機関やマスメディアなどの発行する文書の類似度の計測が不可欠である。しかし登場する単語の種類や頻度を比べるだけでは精度の高い分析はできない。そこで本研究では経済文書の分析手法として,①経済因果の検出手法,②ヒエラルキー構造を考慮したトピックモデルという2つの手法を新たに開発し,経済文書データへの適用を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,①中央銀行から発信された情報が民間主体に理解・信認される度合い(どのような種類の情報がどの程度の精度で伝わるか)を決める要因は何か,②中央銀行の発信に対する民間主体の理解・信認の度合いはインフレやGDPの変動にどのような影響を及ぼすか,③中央銀行の発信に対する民間主体の理解・信認の度合いは金融政策運営にどのような影響を及ぼすかを理論と実証の両面から明らかにし,④最適な情報発信の制度設計を行う。2018年度は,「理論モデル」班,「実証・サーベイ」班,「非構造化データ」班,「事例研究」班のそれぞれが当初の計画に即して着実に研究実績を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「理論モデル」班では,情報の内生性に関する基礎分析:中央銀行の政策に対する情報取得やその他の経済変数に対する情報取得が内生的に決まる仕組みを分析する。経済主体の情報処理能力に限界がある場合は一部の情報のみを使う。また,高精度の情報の取得には費用がかかるので費用と便益の比較によって取得量が決まる。さらに,自分の得た情報を開示することで,他の経済主体の私的情報に影響を与えることができるほか, 複数の経済主体が協力をして情報を共有することもあり得る。こうした内生的情報構造がどのように決まるかについての基礎研究を行う。「実証・サーベイ」班では,①中央銀行の発信に対する資産価格(株,国債,為替)の反応を調べるとともに,②消費者と経営者を対象としたアンケート調査により,消費者・経営者の将来予想がどのように形成されるか,その過程で中央銀行からの発信はどのような影響をもつかを明らかにする。「非構造化データ」班では,各国の中央銀行の発信が民間の関心と信認を獲得しているか,獲得していないとすればそれは何故か,それによってどのような不都合が生じているかを明らかにする。その際,テキストマイニングの手法を用いる。具体的には,(1)日銀から発信される文字情報(政策決定文書,総裁記者会見など),(2)Bloombergなど経済ニュースを扱う報道機関から発信される日銀関連の文字情報(報道記事,識者コメントなど),(3)投資家(金融機関等)が発信する日銀関連の文字情報(日銀の政策に関するコメント・分析など)の3種類のデータセットを作成し,LDA(Latent Dirichlet Allocation)などテキストマイニングの手法を適用する。
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Remarks |
水野貴之「金融リスクのナウキャスト」 横断型基幹科学技術研究団体連合 2018年度木村賞
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Research Products
(26 results)