2021 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical Composition of Disk Forming Regions of Solar-type Protostars and its Evolution to Planetary Systems
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18H05222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大屋 瑶子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00813908)
坂井 南美 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (70533553)
相川 祐理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
花輪 知幸 千葉大学, 先進科学センター, 特任教授 (50172953)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 准教授 (10325764)
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20469604)
渡邉 祥正 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (20586929)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星系形成 / 星間物質 / 電波天文学 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて、ALMAによる観測データの解析により、低質量原始星天体の物理構造と化学組成分布の研究を進めた。特に、低質量原始星CB68について、詳細な解析と分子存在量の定量的見積もりを行い、この天体がホットコリノ化学とWarm Carbon Chain Chemistry(WCCC)が空間的に分離して共存するハイブリッド天体であることを確定した。また、進化の進んだ低質量原始星Elias 29の化学組成分析を行い、ホットコリノ化学もWCCCも示さない天体であることを確認した。
ALMAでは多数の分子スペクトル線が観測される。それらの原始星天体周りの分布と速度構造をもとに無バイアスで分類するために、3次元(分布+速度)の主成分分析を本格導入した。低質量原始星天体L483について適用し、有効性を示した。ALMAを用いた天体の化学分析の新しい手法として注目される。さらに、それぞれの分子輝線がケプラー回転円盤を表すか、あるいは、回転落下エンベロープを表すかを区別する手法として、機械学習を導入した。ケプラー回転円盤、回転落下エンベロープのモックデータを生成するプログラム(FERIA)を用いて教師データを作成し、Support Vector Machineを用いて区別する方法を開発した。この方法により、どの分子がどの物理構造を反映するかを特定でき、分子マーカーとしての利用が可能になると考えられる。また、近年、原始星天体周りの構造として注目されているストリーマー構造について、質量塊が原始星円盤に降着するモデルを考え、流体力学シミュレーションを行った。その結果、TMC1-Aで見られる構造を再現できることを示した。
SUMIREによる分子分光研究では、分光装置の立ち上げが終わり、その概要を報告するとともに、観測研究で重要になっている13CH2DOHのスペクトルを測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1) 化学的多様性の全貌と原始惑星系円盤への進化の探求、(2)原始星円盤形成とそこでの物理・化学過程の解明、(3)化学的多様性の起源の探求、および、(4)分子スペクトル線静止周波数の精密測定の4つの課題に取り組んでいる。いずれも研究は順調に進行しており、当初計画を達成できる見込みである。(1)については、ホットコリノ化学もWCCCも示さない天体を確立できたことから、原始星天体での化学的多様性が大まかに4類型に分類できることを示してきた。また、原始惑星系円盤形成に伴い、回転落下エンベロープと円盤構造の遷移領域で化学組成が劇的に変化する現象が普遍的に見られることがわかった。(2)については、ALMAの最高分解能による詳細観測が進展しており、原始星天体の内部構造や降着衝撃波による加熱現象が代表的天体で明らかになりつつある。(3)については、先に述べたホットコリノ化学もWCCCも示さない天体(Elias 29)が近傍のB型星からの強い紫外線輻射場にあることから、その影響を考えている。(4)については、放射型サブミリ波分光計(SUMIRE)が本格的に稼働し、観測的に重要なメタノールの同位体種について精密な測定を行う段階となった。周波数測定はもとより、絶対強度測定も可能であるので、メタノールのような内部回転を伴う分子の双極子モーメント関数の決定・検証にも資するものと考えている。
これらに加えて、当初想定していなかった成果も得られつつある。その一つが原始星からのアウトフローの大きな方向変化で、形成初期の原始星天体の一つの特徴である可能性が出てきた。異なる角運動量を持つ質量塊の間歇的降着を示唆し、星・惑星系形成の研究にインパクトを与えた。また、機械学習を用いた分子輝線分布の分類が極めて有効であることを示したことも、当初では想定していなかった成果として特筆される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ALMAの観測データの解析を進め、物理モデル、化学反応ネットワーク計算などと連携して研究を進める。次年度が最終年度であることに鑑み、(1) 化学的多様性の全貌と原始惑星系円盤への進化の探求、(2)原始星円盤形成とそこでの物理・化学過程の解明、(3)化学的多様性の起源の探求、および、(4)分子スペクトル線静止周波数の精密測定の4つの研究項目について、それぞれ取りまとめるとともに、それらを通して、本研究の目的である原始惑星系円盤形成領域の化学組成とその進化の描像を明らかにする。
特に、(1)の項目についてはFAUSTのデータ解析を進め、同一感度、同一解像度で13個の原始星天体の化学組成を明らかにし、化学的多様性の全貌を提示する。(2)の項目についてはALMAの最高分解能の観測データの解析を進めるとともに、そこで起こっている物理過程と化学組成の関係を明らかにする。分子分布を無バイアスに類型化するために、これまでの研究で確立してきた主成分分析による方法を適用する。(3)の項目については、特に近傍の恒星からの紫外線輻射の影響を強く受けている原始星天体に焦点をあて、紫外線環境が原始星天体に与える効果を調べる。(4)の項目については、ALMAによって観測されるCH2DOH分子に着目し、その周波数と遷移強度を測定する。この分子は非対称な内部回転を有することから、遷移強度が不確定となっている。しかし、観測研究ではしばしば重水素濃縮の指標として用いられることから、正確な遷移強度が必要となっている。この分子以外にも主にCH3OHの同位体種を網羅的に測定し、観測データの解析に資する。
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