2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J00193
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
吉田 直広 中央大学, 理工学部, 特別研究員(PD) (90829855)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 平均―分散投資 / 証券投資 / ポートフォリオ / 粘性解 / 特殊関数 / ケリー基準 / 確率変数 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は次の三つの研究成果が得られた。 一つ目は離散時間の効用最大化問題における離散ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式(HJB方程式)の解が、時間幅を極小にするように極限をとったときに、ある条件の下、対応する連続時間の効用最大化問題のHJB方程式の粘性解に収束することを証明したことである。連続時間の効用最大化問題から導出されるHJB方程式の粘性解は、多くの場合元の効用最大化問題の一意的な最適解であることが知られている。したがって今回得られた結果は連続時間の効用最大化問題の最適解を見つける一つの方法の発見につながる可能性をもつものである。 二つ目は多期間の平均―分散ポートフォリオ選択問題の一つの解法を得たことである。平均―分散ポートフォリオ選択問題とは、投資の期待リターンとリスクのトレードオフを考慮し、リスクを一定値以下に抑えるという制約の下で期待リターンを最大化するという制約条件付き最適化問題である。報告者の得た解法は、この問題に対してラグランジュの未定乗数法を適用し、ラグランジュ関数を書き直すことによって平均―分散ヘッジ問題という金融オプションの価格付け問題に帰着させて解くというものである。この方法によって連続時間連続セミマルチンゲールモデルでの平均―分散ポートフォリオ選択問題の最適投資戦略が、対応する平均―分散ヘッジ問題の最適ヘッジ戦略の定数倍であるという結果を得た。 三つめは、証券市場で一つのリスク資産と一つの無リスク資産が取引されている場合の証券投資問題において、ケリー基準を計算する方法についていくつか結果を得た。ケリー基準を計算するためには、期待対数成長率の最大化問題を解けばよいが、報告者は当該年度の研究で、市場で取引されているリスク資産の価値のファンダメンタルズ項が任意の値で、ノイズ項がいくつかの特定の確率変数で表される場合にその問題を解くことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、数理ファイナンスのポートフォリオ理論において三つの研究成果を上げることができ、そのうちの二つを査読付き学術雑誌で公開することができたので、研究計画をたてた当初の想定よりも成果をあげることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度までの研究成果をもとに、複数危険証券モデルにおけるケリー基準という投資戦略について調べる。ケリー基準を計算する際にはある種の期待効用最大化問題も解く必要があるが、今年度の研究で得られた結果を応用して研究を進めていくことを予定している。
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Research Products
(2 results)