2019 Fiscal Year Research-status Report
和解の政治哲学――後期ロールズにおけるヘーゲル主義の解明
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18K00002
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
佐山 圭司 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80360965)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロールズ / ヘーゲル / 政治哲学 / 和解 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目の本年度は、北海道哲学会・北海道大学哲学会共催の「マルクス生誕200年記念シンポジウム」(2018年12月)で発表したロールズのマルクス解釈にかんする考察をさらに深めた。というのも、後期ロールズの著作の土台となった『道徳哲学史講義』『政治哲学史講義』の検討を進めるうちに、ロールズのヘーゲル再評価の背景に、ヘーゲルと並ぶリベラリズム批判者であるマルクスに対する解釈の変化があることが分かったからである。 ロールズは、通説にしたがって、マルクスが正義を一種のイデオロギーとみなしていたと考えていた。しかし、分析的マルクス主義を標榜するG.A.コーエンの影響を受けて彼は、マルクスも一種の規範的な正義概念を構想していたという解釈を採用する、『政治哲学史講義』のマルクス解釈は、まさにそうした新しい立場から書かれており、この経緯を「ジョン・ロールズのマルクス解釈」という題名の論文にまとめた。この論文は、令和2年夏に刊行予定の北海道哲学会『哲学年報』第66号に掲載されることになっている。 他方、ロールズがヘーゲルから学んだ「和解」概念については、昨年の文献調査出張で手に入れた文献を読み漁った。そのなかでもっとも啓発的だったのは、『法哲学要綱』の序文に登場する「十字架」と「薔薇」というメタファーの含意を解読し、ヘーゲルの和解概念を読み解いたラッソンの論文「十字架と薔薇――ひとつの解釈の試み」(『ヘーゲル研究への寄与』1909年に所収)であった。いずれこの論文を活用して、このテーマにかんする研究論文を発表する予定である。 本研究は、文献解釈にもとづく思想研究であり、関連文献の調査・収集が、研究遂行に当たって非常に重要である。そのため本年度も、国内外の拠点大学の図書館で集中的に収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに述べたように、本研究は、文献解釈にもとづく思想研究であり、関連文献の調査・収集が、研究遂行に当たって非常に重要である。本年度も、関連文献の収集に努めたが、年度末の新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、海外出張はもちろん、国内の移動も不可能になり、文献収集もほとんどできなくなってしまった。これにより現在の状況は、当初の予定より、やや遅れたものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス問題が落ち着くまでは、国内外での文献収集は困難のため、これまで収集した文献の講読に努めるが、コロナ感染防止のための移動の自粛期間が長引くようであると、研究計画の変更も考えざるをえない。
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Causes of Carryover |
アメリカ合衆国への海外出張を年度末に計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止措置のため、合衆国への入国が許可されず、出張が急遽取りやめになったため。今のところ、キャンセルになった出張は、次年度(3年目)に実施する予定である。
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