2021 Fiscal Year Annual Research Report
19th-Century Music Culture of the Middle Classes and Opera Paraphrases
Project/Area Number |
18K00131
|
Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
上山 典子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (90318577)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オペラ編曲 / ピアノ / 19世紀 / 市民階級 / 交響曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋音楽史上、19世紀前半は編曲譜の作成と出版の空前の興隆期に当たる。本研究の最終年度は、この編曲興隆期に活動したベートーヴェン(1770-1827)の作品に基づく編曲に注目した。まずはベートーヴェンの唯一のオペラ《フィデリオ》op.72の編曲流通状況の調査を行い、多種多様な編成の編曲譜が出回っていたことを把握した。例えば、「人気曲の抜粋」と名打たれたフルート二重奏版(1819)、三重奏(Fl, Vn, Gt)版、ピアノ2手用が、いずれもウィーンで出版されていた。またモシェレスによる幾つかのアリアのピアノ2手用のほか、人気曲の2手用がウィーンの複数の出版社から出されるなど、室内楽用、ピアノ用、そしてギター伴奏付等々、音楽愛好家やアマチュア奏者といった市民階級向けの編成が多く出回っていた。 本研究の本来のテーマはオペラ編曲だが、ベートーヴェンにおいては交響曲とオペラ作品の編曲流通状態の比較も有益と考え、交響曲全9曲それぞれの編曲譜の作成、出版を整理し、紀要論文にまとめた。一方、《フィデリオ》については、編曲譜のすべてを入手することが難しく、全容を確認出来ていないため、本研究の期間終了後も継続して調査し、その結果を論文としてまとめていきたい。 また本研究の期間全体としての目的は、仏革命以降のブルジョワ市民階級の台頭を背景に、ピアノ用オペラ編曲が音楽市場で果たした役割を明らかにすることにあった。その主要成果としては、1) 1830-40年代フランスのグランド・オペラの超ヒット作《悪魔のロベール》に基づく編曲譜の流通状況を明らかにしたこと、2)ピアニスト兼作曲家としてヨーロッパのみならず、北米でも演奏ツアーを展開したタールベルクによる数々のオペラ編曲の詳細を整理したこと、3) ベートーヴェンのフィデリオおよび交響曲ジャンルの編曲流通状況を調査したことである。
|
Research Products
(1 results)