2020 Fiscal Year Research-status Report
明治~昭和初期の洋楽受容の諸相―演奏の場・人・曲目・ジャンル・メディア
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18K00141
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
武石 みどり 東京音楽大学, 音楽学部, 教授 (70192630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 洋楽受容 / 映画館 / オーケストラ / 交響楽団 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には以下の成果を上げることができた。 ①2020年11月15日に日本音楽学会第71回全国大会において、1916~29年の東京の主たる映画館14館における演奏者と演奏曲目の特徴と変化について、これまでに判明したことを発表した。考察対象年は1920年まで、1921~25年、1926~29年の3期に分けられる。第1期では洋楽合奏の記録がまだ少なく、楽団編成も5~15名程度であった。第2期には楽団編成が20名から最大40名程度にまで拡大され、洋楽合奏が行われる映画館が多くなった。これは軍楽隊の野外演奏や宮内省楽部の演奏が吹奏楽から管弦楽へと移行した時期と並行している。第3期は交響楽団が設立された時期にあたり、交響楽団員の多くは特定の映画館での演奏も副業として兼業していた。交響楽団の創設には映画館楽士も多く参画していたことが確認でき、その要因として、1920年頃から国内において在留ロシア人楽士との合奏体験が交響楽団参画への大きな音楽的刺激となった可能性を指摘した。 ②日本で交響楽団が創設される前段階に出現した各種合奏団体についての資料調査を行った。その中には、来日したロシア歌劇団(1919年、1921年)、舞踊団(1922年)、宮内省楽部オーケストラ、東京フィルハーモニー管弦団、日本交響楽協会等が含まれる。1919年~1925年にかけて、このような楽団にどのような奏者が所属し、どのようなレパートリーを演奏したのか、それが1925年の日露交かん交響管弦楽演奏会、さらに1925年以降の日本交響楽協会(新交響楽団)とどのような関係をもつのかについて、資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の入院(5月)と手術(8月)のため、およびコロナ禍により国内の図書館・資料館等の開館時間と移動が制限されたため、特に東京都外への出張調査がほとんどできなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究年度を2021年度まで延長することが承認されたため、2021年度は以下の課題に取り組む予定である。 ①上記研究実績の①について、積み残しの資料調査を終え、分析を加えて論文として発表する。 ②上記研究実績の②について、さらに未見の資料収集と考察を行い、学会発表または論文執筆により成果を発表する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の健康上の理由、およびコロナ禍による図書館利用と移動の制限により、資料調査とデータ整理に要する旅費・人件費・その他の研究費を使用できなかったため、次年度まで研究期間延長を申請し、研究経費を持ち越すことが承認された。 次年度は研究最終年度として、コロナ禍の状況でできうる限りの資料収集(旅費、物品費、その他)とデータ整理(謝金)、および論文執筆とその準備に必要な経費(物品費、その他)を使用する予定である。
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