2018 Fiscal Year Research-status Report
Visual/motor intervention for voice, speech, respiration, and swallowing: Development of an anti-aging model by singing
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18K00147
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Research Institution | Showa University of Music |
Principal Investigator |
羽石 英里 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (70350684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城本 修 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00290544)
河原 英紀 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (40294300)
萩原 かおり 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (50649449)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歌唱 / 発声 / 発話 / 呼吸 / 嚥下 / 加齢 / 機能改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢による身体機能の低下、なかでも発声・発話、呼吸、嚥下機能の低下は、高齢者の健康と生活の質を脅かす深刻なリスク要因である。発声・発話機能が低下すれば、他者とのコミュニケーションや社会活動が妨げられ、呼吸や嚥下機能が低下すれば、肺炎のリスクが高まり、低栄養にもつながりかねない。 そこで本研究では、これら3つの機能に共通にかかわる身体器官、すなわち、舌やのど、気管や肺を活発に使う「歌唱」という行為に着目し、発声・発話、呼吸、嚥下機能に与える影響を調査することとした。さらに、これらの機能改善に向けた歌唱を用いたトレーニングプログラム(歌唱による抗加齢モデル)の構築を目指している。 2018年度においては、まず、音楽療法を専門とする研究代表者、言語障害学、音響学、声楽教育を専門とする研究分担者ら、さらに医学系の研究協力者らも交えて上記の諸機能の評価方法について意見交換をおこなった。それをもとに、基礎データ収集のための実験プログラムを作成し、声楽の指導者または合唱団等の団員として日常的に歌を歌っている高齢者(歌手シニア)、歌う習慣のない高齢者(一般シニア)、パーキンソン病の高齢者(PDシニア)を対象に、評価方法の検討を目的とした予備実験をおこなった。 発声・発話機能については、母音発声、文章の音読、声域や音圧の検査などを行い、呼吸機能については努力肺活量を検査、嚥下機能については耳内嚥下音を用いた検査を中心におこなった。また、日常生活の評価や嚥下機能等に関するアンケート調査も同時に実施している。さらに、パーキンソン病患者2名に対して、試行的なトレーニングプログラムを実施し、患者からの意見を募った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
発声・発話、呼吸、嚥下機能の評価方法を試し、その妥当性を分析中である。これまでのところ、評価方法をさらに追加、精査する必要が明らかになっている。たとえば、呼吸機能の評価については、歌唱で鍛えられる呼吸法を、より適切に反映する評価を追加したい。また、嚥下機能の測定については、パーキンソン病患者の場合に体の震えによる雑音で耳内嚥下音が不明瞭になるケースがあったので、侵襲性の低い別の方法もあわせて実施するのが望ましいと考える。 なお、今回のモデルプランに活用する視覚情報の提供方法として当初MRIも計画していたが、研究分担者によって音声をリアルタイムに反映した視覚的ディスプレイのソフトウェア(Realtime Viewer)の開発が予想以上に進んだため、MRIの優先順位が低くなった。Realtime Viewer は非侵襲的で、費用もかからないため、応募時からの予算削減も鑑み、この方法を中心に進めていきたい。Realtime Viewerの開発成果の一部は電子情報通信学会応用音響研究会にて研究分担者である河原らにより発表されている。 さらに、当初2019年以降に実施する予定であったパーキンソン病患者のための歌唱による抗加齢モデルの予備実験を、2018年度中に前倒しに行なった。これについては2019年6月に京都で開催されるパーキンソン病の国際学会(第5回World Parkinson Congress)で発表が確定している。世界をリードする医療やリハビリテーション専門家らとの意見交換が予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
6月のパーキンソン世界大会で、パーキンソン病患者のための試行的な発声・発話、呼吸、嚥下の改善に歌を活用したモデルの試行版を発表する予定である。同時に、データの分析を継続し、よりよい評価方法を検討していく。また、被験者、なかでも歌を普段歌わない被験者の人数を更に確保し、評価方法も追加・調整して、さらに基礎データを採取する。これと平行して、パーキンソン病の被験者を主な対象として、6月発表の試行プログラムをもとに、発声・発話、呼吸、嚥下の改善に向けた歌を使った抗加齢モデルの構築をさらにすすめていく。
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Causes of Carryover |
449円の次年度繰越使用額については、支払額等に端数が生じた結果である。 翌年分の助成金に繰り入れて使用する。
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