2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00164
|
Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
金子 晋也 札幌市立大学, デザイン学部, 助教 (70594224)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 近代木造建築 / 大空間 / 漁家 / 商家 / 武道場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北海道沿岸部にみられる近代木造建築を対象とし、なかでも漁家と商家の空間構成や木造架構の類似性や差異に着目し、それらの特徴を大空間という視点から調査、検証を行っている。当該年度は、日本海沿岸部の調査を行い、5件の漁家と2件の商家の現地調査を行った。加えて、同時代の空間構成や架構の比較資料を得るため、全国の武道場や北海道の体育館などの学校建築の大空間についても現地調査を行った。 その結果、漁家の大空間の特徴について整理することができた。従来の北海道における漁家に関する建築学の研究では、民家緊急調査報告および北海道における漁業関連建築の歴史的研究の研究成果によって対象リストと一部の図面資料が整理されている。その研究成果を踏まえて、漁家のニワやダイドコロからなる漁夫収容部分の大空間について、各領域の分割と架構の対応からその特徴を把握した。このことにより、巨材や和洋の架構形式が混在したあり方や、生活様式の観点からとらえられてきた番屋建築の文化的価値についても記述することができると考える。また、武道場の調査からは、外観、内部空間から3つのパタンを抽出し、建築当時の時代背景や武道の歴史や捉え方、また木造技術や資材などの影響によって差異が生じたことについて考察を加えた。 これらの研究成果は、2019年度の日本建築学会北海道支部大会での口頭発表を予定している。しかしながら、現地調査での実測調査が少し遅れており、2019年度は調査方法の見直しを行い、効率的なデータ収集方法を検討する。また、アドバイザーとの連絡関係ができ、研究内容について討論することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
漁家の事例は、旧下ヨイチ運上家(余市町)、積丹町鰊伝習館ヤマシメ番屋(積丹町)、はまます郷土資料館(石狩市旧青山家漁家住宅(札幌市)では図面の収集と空間の写真撮影を行い、濃昼の番屋(旧濃昼茶屋)(石狩市濃昼)については正確な図面資料がないため実測調査と空間の写真撮影を行った。旧余市福原漁場(余市町)など現地での写真撮影のみ行った事例に関しては、次年度で詳細な調査を計画している。商家の事例は、増毛町の事例調査を行い、対象空間の断面図の実測調査と大空間の写真撮影を行った。 しかしながら、特に漁家の事例については公開時期が制限されていることや、敷地が遠隔地にあること、個人所有のものなど、調査準備に時間が取られ十分な現地調査を実施できなかったため、研究の進捗状況はやや遅れており、研究範囲の見直しが必要であると考えている。 一方、比較対象として調査を行った武道場や学校建築の事例については、十分な資料が得られ一程度の研究成果が得られたと思われる。この成果を踏まえて、北海道における近代木造建築を大空間という視点から検証できると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、2019年度には太平洋沿岸(伊達市、釧路市、根室市、鹿部町、八雲町、日高町、厚岸町、羅臼町)での現地調査を予定しているが、2018年度の未実施の日本海沿岸(江差町から寿都町にかけての範囲、天売島や焼尻島などの離島)での現地調査も並行して行う。そのため、当初予定していた60件程度の調査対象について、詳細な実測調査を行う事例と、簡易な写真撮影などの現地調査を行う事例と順位差を設け、調査を効率的に実施することとする。 また、対象事例のデジタルデータとして整理することを計画しているが、図面のCAD化が遅れており、写真資料のデータ容量が想定より大きくなったため、それらのデータ処理についても検討を行う。このように作成した資料や図版をキーワードやカテゴリーにより整理し、初学者や一般にもわかりやすいイラストレーションを用いたデータベースの構築を行うことを予定している。 さらに、北海道における近代木造建築の大空間という観点から、関連雑誌や論文への執筆を行う。その内容を通じて、研究アドバイザーとの議論を行い、対象事例に対する研究を推進していく。
|
Causes of Carryover |
調査の進捗がやや遅れており、調査結果をデータ化する際の人件費が当初予定より少なかったため、次年度使用することとした。
|
Research Products
(2 results)