2023 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental Research on the Scholarly Interactions of Qing Dynasty Literati Artists Who Came to Western Japan
Project/Area Number |
18K00179
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
呉 孟晋 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50567922)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 来舶清人 / 書画合作 / 廉泉 / 森琴石 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度として研究のとりまとめに力点をおいたが、一方でコロナ禍により滞っていた作品調査も継続し、当初計画の遅れを取り戻すことに努めた。追加調査はこれまでの蓄積がある明治期の来舶清人の書画を対象にしたため、当初計画に挙げた九州への調査は見送ったが、長崎に関係する江戸期の作品も熟覧することができた。 調査はおもに広島の海の見える杜美術館と、個人収蔵家2氏のもとでおこなった。前者においては、6冊揃いで全300頁を超える書画を収めた「名家書画帖」のなかに、王冶梅や陳曼寿、王鶴笙、馮鏡如、馮雪卿、郭少泉らの作が含まれていることを確認した。この帖は明治13年(1880)ごろに京都の老舗である和菓子店の店主に贈られたものらしく、清人たちが日本の文人サークルに溶け込んでいたことをうかがわせる。後者のうち、胡鉄梅筆「鍾馗舞剣図」は花鳥が多い胡には比較的珍しい道釈人物画であり、長文の題詩をともなう。別の個人宅にある酒井抱一の「月雲図」には、明治25年(1892)、秋田の六郷にいた王治本が賛を寄せている。長山孔寅、上田公長、そして「松年」の落款がある「尉と姥、鶴亀」は文化14年(1817)に江芸閣や朱柳橋、楊少谿ら長崎の清人のほかに蘭人が着賛した三幅対であり、東東寅の山水図で文政5年(1822)、周藹亭や朱開圻が薩摩の片浦で題詩を記した一幅も確認できた。清人の字句が珍重され、数多くの「合作」がなされていた実態をうかがうことができた。 研究成果の公開では、これまで調査を重ねてきた廉泉旧蔵の「小万柳堂扇面書画集」について東京国立博物館での展示に関与したり、日本の伝統文化にかんする論文集に寄稿したりした。後者の論文は、大阪の森琴石に焦点をあて、作品と文献、両方の調査を連環させるかたちで明治期の清人の動向を示したものであり、本研究で提示した「書画の道」の実態を明らかにすることができた。
|