2018 Fiscal Year Research-status Report
A study of the infuence of the induction of emotional feelings by "The Imaginative Playing-Method" on the mind and body of the human
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18K00206
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
武本 京子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (80144179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 康宏 藤田医科大学, 医療科学部, 教授 (40176368)
石原 慎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (40329735)
川井 薫 藤田医科大学, 医療科学部, 教授 (50152898)
飯田 忠行 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (50290549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽と映像と言語 / イメージ奏法 / 同質の原理 / トリプトファン代謝産物 / 感情・気分変化 / 共感性 / 生化学的・心理学的分析 / microbiota |
Outline of Annual Research Achievements |
楽譜の奥にある作曲者の主張、思想、情動などを推測し、演奏者の過去の体験や記憶、思考、言語、色彩を取り入れて演奏者の感情の全てを注ぎ込む音楽の奏法を創造し、これを効果的に表現する「イメージ奏法」を確立し、その理論をまとめることを行なった。それに基づき、演奏者が「イメージ奏法」を使って制作した音楽と映像の視聴覚融合の供与が、視聴者自身の音楽への共感性の認知を導き、精神面・肉体面へのどのような影響と効果を与え、心の再生を促すことができたかを生理学的指標を用いて心理学的・医学的に検討を行なった。同質の原理を応用して、心の再生を目的にストーリーを制作し、「イメージ奏法」による演奏と映像を制作し実験を行なった。演奏と映像にたくした「イメージ奏法」を視聴して、主観指標として不安感と幸福感のアンケートを用い、客観指標として生理活性物質の唾液中のアミラーゼ、コルチゾール、セロトニン、メラトニン、それぞれの変化を観察した。その結果、ストレス応答系の状態不安得点、アミラーゼ活性値が「イメージ奏法」の設計に相似した挙動を示した。下位の生理活性物質ではセロトニンとキヌレニンが同様の挙動を示した。一方、対照実験としたピアノ演奏のみではアミラーゼ活性値が増加しコルチゾール濃度は減少した。また対照実験としたイメージ画像だけを視た場合には「イメージ奏法」と近似した結果になった。これらから「イメージ奏法」の効果は映像の色彩と言葉による感情の誘導が大きいことが示唆された。 これらの結果は、クラシック音楽だけでは感情誘導に乏しい時でも、映像の効果により感情や気分が大きく変わることが示している。変化の大きい物質がトリプトファン代謝に焦点を絞り、国際トリプトファン学会で報告した。それに伴い、「イメージ奏法」の理論をまとめ、音楽を可視化して映像化する理論を学会等で発表を行い、論文にまとめることを積極的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、音楽と映像を組み合わせた「イメージ奏法」とその対照実験である音楽だけおよび映像だけによる実験を行った。 「研究の目的」は、“どのような状況で、どのような音楽がストレス状態を和らげることに有効かを検証し、意図的にストレス状態を解放することが可能かを探る”ことである。この目的を達成するために、次のテーマで「イメージ奏法」および対照実験を実施した。すなわち、【絶望と落胆】→【悲しみの受容】→【幸せの予感と希望】→【未来への情熱と躍動】の各テーマで約70分間の演奏を視聴し、状態不安と唾液中生理活性物質を測定した。 極めて興味深いことに、「イメージ奏法」では免疫促進炎症性の発痛物質であるセロトニンと、免疫抑制抗炎症作用の認められるキヌレニンがともに増加した。実験結果から、キヌレニンとセロトニンが脳腸軸指標として感情などに励起されて腸から分泌される可能性を見出した(論文執筆中)。 単純に総括はできないが、脳腸軸において免疫能の促進と抑制の相殺を生じる生体応答の可能性すなわち、生体に対し意図的にストレス状態を解放する可能性が見えたのではないかと考えている。この結果は神経生理学的にも重要であり、カウンターバランス実験を含め、継続する課題である。 一方、対照実験のうち、音楽だけの場合にはリラックス状態になり、映像だけの場合ではセロトニン以外「イメージ奏法」と差がなかった。このことから、“いかにテーマに合った映像を作成するか”が重要な課題であることが示された。また、「研究実施計画」に則り、研究成果の社会への還元を含めた「イメージ奏法」によるコンサートを開催し、観客である一般市民から極めて好評を博した。これらの事実は、演奏だけを視聴するより、楽曲に合ったイメージ映像を併用すれば音楽の効果がより増幅されることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究は、音楽の人間への感情等の誘導効果をより強く表現するための奏法である「イメージ奏法」を用いた演奏が、視聴者の心身にどのような変化をもたらすかについて、質問紙・生理活性物質を用いて検討するものである。 現在の研究成果は、より感情励起に有用な方法を確立するための知的財産になる。これらは現代の高齢化社会において音楽による生活の質の向上のための動機付けや代替医療への応用へとつながる。 この目的を達成するために、今後の研究推進方策には2つの重要な課題を持たせた。1つは、生理活性物質の誘導につながるように「イメージ奏法」を発展させることである。生理活性物質として、自律神経系反応の指標となるアミラーゼ活性、視床下部下垂体系の指標となるコルチゾールを測定しているが、これらは感情を測る指標となっても、社会性を測る指標にはならない。そこで、音楽による社会性誘導の可能性の指標となるオキシトシンを新たに加える。オキシトシンは既に自閉症児に社会性を発現させる研究がなされている。 これらにより、より鋭敏に「イメージ奏法」の効果と発展を捉えることができると考えている。 もう一つは、脳腸軸からの産物であるセロトニン、キヌレニンなどのトリプトファン代謝産物を測定することである。近年、gut microbiotaからの代謝産物が健康状態を向上させることが示され、社会現象になっているが、脳腸軸の産物はこれらを調節し、あるいは調節されると考えられている。 音楽の効果として血中で検出されるものの多くは腸由来であり、トリプトファン、キヌレニンは血液脳関門を介して中枢神経系を刺激し、気分に影響を与える。セロトニンは血液脳関門を通過できないので、気分に影響しないが、脳内血管を拡張させるなどして気分に影響しているかもしれない。 これらの生理活性物質の詳細な検討を進め、音楽の持つ可能性を社会に還元していく。
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Causes of Carryover |
早期に対照実験等、実験事項に取り組むことで、「イメージ奏法」の音楽と映像の供与の心身に与える影響を検討することができるので、実験のための費用や準備が必要であった。
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Research Products
(14 results)