2018 Fiscal Year Research-status Report
石水博物館館蔵資料を中心とした伊勢商人の文化サロンに関する総合的研究
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18K00299
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
岡本 聡 中部大学, 人文学部, 教授 (90280081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉丸 雄哉 三重大学, 人文学部, 准教授 (10581514)
早川 由美 奈良女子大学, 大学院人間文化研究科, 博士研究員 (30745310)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 石水博物館 / 木下長嘯子 / 村田元次 / 書誌学 / 川喜田潭空 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科学研究費の本年度の成果は、主に石水博物館の目録分類作業にあてられた。研究代表者及び研究分担者は、監修者である岡崎久司氏のかつての業績である『大英図書館蔵和漢書目録』や『大東急記念文庫』第二書目などの分類を元に、分類作業を行った。途中までは、この二つの目録を元に、分類記号を割り当て、原本確認をしながら、詳細に分類作業を行っていたのだが、それでは時間がかかりすぎる事に気付いた。そこで、おおむね国文学研究資料館の分類などを機械的に変換した後、『大英図書館蔵和漢書目録』や『大東急記念文庫』第二書目を元にした、石水博物館の分類により調整するという方法を用いた事により、ほぼ分類作業を終える事が出来た。今後は、この分類記号によりソートをかけて、更にその分類の中で、年代順にソートをかける事により、目録の基礎データを作っていく作業に移行していく。来年度は、主にこの目録の基礎データを元にしながら、出来る限り間違いを無くしていく方向で一つ一つのデータを調整していく作業が必要となる。またこの段階で、年代不明な著書のおよその年代を特定していく作業も必要となってくる。 また、本年度、研究代表者は、『飛騨高山 地域の産業・社会・文化の歴史を読み解く』(林上編 風媒社、2018年、第10章を担当)や、『芭蕉忍者説再考』(風媒社、2018年)を著し、その中で、石水博物館蔵の伝頓阿作の人丸像や、石水博物館所蔵の茶書などを紹介している。また、研究分担者の早川由美氏は『俳諧水滸伝』から広がる俳諧ネットワーク」(平成30年11月 全国大学国語国文学会『文学・語学』223号)において、蒲生阿蔵という人物を紹介した。更に「紀上太郎作『志賀の敵討』の芭蕉―安永五年前後の俳壇と劇壇―」(平成30年12月 『名古屋芸能文化』28号)を出し芭蕉伝と伊賀越の仇討とを綯交にした作品を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少々作業が遅れてはいるが、おおむね全書籍の分類をほぼ終了したところである。今後は、これらの分類を年代順に並べて目録の基礎データを作っていく。それとともに、村田元次周辺の資料や、川喜田家関係の資料を精査していく事により、石水博物館の文庫をトータルとして考察していく事も必要となってくる。この文庫が、東海圏では恐らくトップクラスのコレクションである事が、こういった調査を進めていくとともにわかってくる。その中でも他には類を見ない資料や、この文庫の性格を特徴付けるものなどを把握していく必要がある。今年度で、目録の基礎作業を終了させているので、來年度からは、もう少し、石水博物館の特徴付けや、文化史の中の位置づけを探る為の調査が必要となってくるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更に目録作成の為に、石水博物館の資料を精査し分類していく事が、まずは大きな目的となる。今後は、概ね『大英図書館蔵和漢書目録』や、『大東急記念文庫』第二書目の分類に従って分類した元データを分類し、精査し、分析していく作業が必要である。これについては、一点一点の資料の分析を通して、分類が間違っていないかどうかという確認作業が必要である。例えば同書名で、違う本を全く別の項目に分類していないかという作業である。また、もう一点は、刊記や識語など、年代情報のない本を、紙の質や、資料の状態などから、おおよその成立時期を特定していく作業である。特に江戸期に入ってからの本は五期(江戸初期、江戸前期、江戸中期、江戸後期、幕末)に分類していくつもりである。 更に、石水博物館所蔵のものについて、特に重要なものを認識していく作業が必要となる。 例えば、石水博物館の川喜田家の資料の中には伝頓阿作の人丸像などという貴重なものが含まれている事は今後もっと着目されても良いかと考える。また、綱吉の時代の幕府歌学方である北村季吟に関連する資料でも貴重なものがのこっている。一つには、石水博物館には、季吟の関わった村田元次の書写したものが多く残っている事である。村田元次は北村季吟が松坂に来訪した折、その講義を受けたものの一人であり、他にはどこにも所在を聞かない『季吟七十賀』や、元次の名前が施された『伊勢紀行』などが備わっている。今後は、この村田元次とその父の書写した資料を精査していく必要を感じている。村田家の資料は、後に本居宣長の母の家である小津家に伝わっており、少年時代の宣長は、これらの村田家の蔵書を見る事が出来たものと考えられる。これについては、第一次の段階で、岡本勝氏が整理している。その後また多くの元次書写の本が出現して来ており全体としての書写の状況や、その集めた本の特性などを考察する必要性を感じている。
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Causes of Carryover |
本年度は、目録分類作業に従事している事が多く、監修者の先生にも、その作業段階では来ていただいても仕方がなかった部分があり、実際には、月一回程度石水博物館においての作業が中心となった。1月以後ほぼ分類作業が終わったので、次の段階では、監修者である元大東急記念文庫の学芸部長だった岡﨑氏に来ていただき、実際の本に対しての時代認識の誤った部分がないかという事を確認していっていただく作業が必要となってくる。年代未詳のものを年代推定する場合に、ある基準を作っていかなければならないからである。今年度は、目録の監修者である岡﨑氏にも来ていただかなければならなくなる機会が多くなる。従って、2018年度はあまり現実的に科学研究費を使う事がなかったが、2019年度は旅費の項目が多くなってくるものと考えられる。
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Research Products
(5 results)