2020 Fiscal Year Research-status Report
石水博物館館蔵資料を中心とした伊勢商人の文化サロンに関する総合的研究
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18K00299
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
岡本 聡 中部大学, 人文学部, 教授 (90280081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉丸 雄哉 三重大学, 人文学部, 教授 (10581514)
早川 由美 奈良女子大学, 大学院人間文化総合科学研究科, 博士研究員 (30745310)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 石水博物館 / 蔵書目録 / 伊勢商人 / 村田元次 / 北村季吟 / 本居宣長 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、目録作成の方は、最終段階の全体のチェックの段階に入っている。コロナの関係で、大東急記念文庫の目録や大英図書館の目録に関わった岡崎久司の原本を見ながら確認するという作業が出来なくなってしまったので、科学研究費の期間内での目録の刊行という事は不可能になった。それぞれの研究実績としては、研究分担者の早川由美が、もう一つの書簡の科研費(「伊勢商人の文化的ネットワークの研究‐石水博物館所蔵書簡資料をもとに‐」研究課題番号15H03183)との関連で出版した『石水博物館所蔵 小津桂窓書簡集』(和泉書院 2021)が最も大きな業績であると言えよう。この書簡集の紹介により、石水博物館全8000点の書籍の内のおよそ十分の一にあたる800点ほどの資料が、小津桂窓との関係の中で、有機的に捉える事が可能になった。また、早川氏による口頭発表「『石水博物館所蔵小津桂窓書簡集』中の演劇記事」(東海近世文学会令和2年12月例会)及び「並木五瓶『入間詞大名賢儀』の当代性‐小津桂窓書簡を手がかりに‐」(演劇研究会令和2年度3月例会)ももこの成果によるものである。また、もう1人の分担者である吉丸雄哉も同じく石水博物館の資料から「川喜田石水の教訓歌」『人文論叢』(三重大学人文学部文化学科研究紀要38 2021年3月)を出している。研究代表者の岡本聡は、石水博物館にもその関連資料がある木下長嘯子の『挙白集』について、「『挙白集』評釈(三)巻八」及び「『挙白集』評釈(四)巻九」(『近世文芸 研究と評論』98号、99号)を発表した。また、石水博物館にある多くの本草学絡みの資料を参照しながら、『和食文芸入門』(臨川書店 2020)に「食べる牡丹から観る牡丹へ‐蕉門の牡丹狂騒曲‐」を書いた。またその延長線上で、「宣長と牡丹‐「漢心」批判への一視点‐」(『アリーナ』23号 2020年10月)を書いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度以来のコロナ騒ぎにより、大英図書館や、大東急記念文庫の目録と関わった岡崎久司氏に来ていただけなくなってしまった。岡崎氏に来ていただいていたのは、特に写本の分野における鑑定を伴うものを見ていただく為である。正確な目録を作る上では、鑑定眼は欠かすことが出来ない。軸物などは、大概岡崎氏に鑑定をお願いし、筆跡鑑定を含めて行ってきた為、2021年度中の目録の出版もという事が、現段階では見通しがつかなくなってきた。東京であてにしている汲古書院とも細かい詰めの話し合いが出来なければ、出版が遅れてしまう可能性がある。その際は、研究成果の報告書だけを提出し、後日蔵書目録を出版するという事にもなりそうである。現在目録に関しては、書誌カードの記入情報と入力された目録データの照合を行うなどして、目録出版が出来るように詰めの作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
石水博物館の蔵書目録は多くの研究者が期待しているものである。今後は目録出版の為に今の段階で詰める事が出来るものを詰めておいて、目録の分類や、署名、時代鑑定に齟齬がないようにつとめていかなければならないものと考えている。同時に、村田元次の蔵書や、石水博物館の蔵書の中で、特筆に値するものの紹介につとめたい。2021年6月の日本近世文学会春季大会において、研究代表者の岡本聡は「長嘯子関連の狂歌資料 ‐石水博物館蔵[狂歌書留]をめぐって‐」と題する発表をして、石水博物館資料の内、特筆に値する資料の紹介をし、研究分担者の早川由美は「書物としての芝居 ‐小津桂窓書簡中の演劇記事を手がかりに‐」と題する発表をして、『石水博物館所蔵 小津桂窓書簡集』(和泉書院 2021)と関連する発表をする予定である。伊勢商人の集めた蔵書の中に、これほど文化的に重要なものがあるという事を指し示す事は、本文庫が三重県において文化的価値が高いだけではなく、全国区で見た時にも、指折りの文庫である事を指し示す事になる。今までは、目録調査にかかりきりであって、この文庫の魅力について述べてこなかった部分があるが、今後は、特筆するものについて紹介していき、本文庫が、全国区で見ても重要な文庫である事を指し示す必要性があるものと感じている。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由については、最終年度に研究成果の報告書を作成しようとしている為である。簡単な報告書にはするつもりであるが、製本印刷費として次年度使用額を残した。研究代表者と研究分担者2名及び石水博物館の学芸員の方にも執筆を依頼する予定である。また、目録の最終段階のチェックの為に、国文学研究資料館の古典籍総合目録データベースなどを用い別の目で確認作業をしてもらう為、アルバイトの大学院生を依頼するつもりである。その為に人件費が必要になる為、その分を確保していたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額に関しては、おおむね、報告書と人件費の為である。
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Research Products
(9 results)