2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00376
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 新 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (80363654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋文学 / 海文化 / 環境文学 / 環境思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の計画では、これまでの調査の要領を踏まえ、基礎的な作品・事例について情報を集め整理する(6月~9月、 12月~翌年3月)を予定していた。訪問予定であったハーバード大学の関連図書館は大学用務の関係で訪問スケジュールの調整が付かず、来年度以降に持ち越しとした。収集した資料として、19世紀後半から20世紀初頭にかけて出現するアメリカ文学におけるモダニズム的表現分析において、アメリカの代表的SF作家であるラブクラフトの全作品を解題した。初期のSF作品の世界観(異界)は海環境の描写に依拠する傾向が強く、また、登場する異界の生物・怪物は深海生物的な特徴を備える傾向がある。今回の分析ではラブクラフトの描くSF的世界像を一つの例として、海環境的要素がどのようにモダニズム的表現として援用されているかについて分析を進めた。また、現代芸術表現、特に現代絵画における海環境の要素の影響関係についても調査を始めるとともに、20世紀の海運行や物流、及び造船技術を通して流通するモノの移動がどのように変化したかについても資料収集した。教育の面では、琉球大学の共通教育科目「総合環境論」のフィールドワークに参加し、首里・那覇地区の歴史的展開の中で、海環境の果たした役割について説明した。また、その他講義を3回担当し、19世紀欧米の琉球来航たちが琉球の自然環境をどのように表現したかについて史料を踏まえて講義した。これらの講義の史料は今回の科研を通して購入した史料の考察の中で見つけたトピックを講義用に発展させたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度調査予定地であったハーバード図書館を訪問することができなかったため、特に欧米文化関連資料の調査と収集が遅れている。初年度では収集した資料の整理と解題を重点的に行った。その中で今後の調査の方向性としてモダニズムにおけるSF的世界観の中で深海生物や海底環境がどのような役割を果たしているのかについての考察、そしてグローバルな海運業をとおして海路を介してモノの移動がどのような・どのように文化変容に貢献したのか検討を始めた。それぞれ、必ずしも米国文化(領土)に限定されないが、海環境と海文化の構成要素を考える際に重要な要素であることを確認した。また、人々と海環境の関わり方が多様化したことの具体的事例として「水中パフォーマンス」の実践例についても情報を収集した。今後はこのような20世紀ー21世紀的海文化の展開をとおして、海概念をどのように理論的に整理するかを検討することになる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で訪問できなかった調査地を訪問できるようにスケジュール調整し、欧米文化関連の資料調査を充実させたいと考えている。米国ハーバード大学と英国グリニッジの国立海事博物館の両方を訪問したいと考えているが、もしスケジュール調整が難しくなった場合には、まだ訪問したことのないグリニッジ国立海事博物館を訪問し、モダニズム美術・建築の中における海文化の動態について知見を広げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
前年度調整が付かなかった海外調査出張を本年度に実行できるように計画中である。また、今年度の調査出張で収集する資料購入、複写、郵送費としても予算執行する予定である。
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