2022 Fiscal Year Research-status Report
文学テクストによる論理的想像力の涵養ー英語教育の転換を図るための基礎研究
Project/Area Number |
18K00397
|
Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
杉村 寛子 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 教授 (20411267)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 多恵 関西学院大学, 工学部, 教授 (70342350)
南津 佳広 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 准教授 (70616292)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 英語圏文学 / 文学テクスト / 論理的想像力 / 推論発問 / 翻訳 / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
文学テクストと想像力の関係という観点から、これまでの文献研究の成果を踏まえ、杉村は文学テクストの性質を再整理するために、Sternberg, M. (1987) The Poetics of Biblical Narrative: Ideological Literature and the Drama of Readingを読み、読者が文学テクストに向き合う時に生じている思考の過程を以下のように整理した。従来より読者反応理論において指摘されているように、文学テクストには空隙が存在する。読者はテクストを理解するべく、テクスト内の要素を一つ一つ結合させ、空隙を埋めていく。しかし、このような単純な過程だけではなく、読者は読み進むうちに加わる情報に基づき、絶えず読みを修正するという複雑な過程も経験しており、そこでは推論が働いている。 ひとがあらゆるタイプのテクストを読む際に働かせている推論は、これまでのところ、主に二つの推論「橋渡し推論」と「精緻化推論」によって説明されているが、文学テクストを読む時にはこの二つの推論では説明され得ない(第三の)推論が働いているのではないかというのが本研究において明らかにしたい課題である。その端緒をこれまでの文献研究および試行授業の結果からある程度導き出すところまではたどり着くことができた。すなわち第三の推論という仮説としての「論理的想像力」とは論理に裏打ちされた想像力によって個人的な経験も含む、より多くの関連する事柄を思い起こし、それらを論理的にテクストに関連づけ、テクストを理解し解釈できる力のみならず、この過程においておのおのの読者に独自の気づきが生じ、文学テクストに新しい諸相を見出す創造的な読みへと発展させることのできる力である。 このような想像力を引き出すために、工藤は翻訳を取り入れた短編小説に基づく教材(推論発問および翻訳を取り入れた教材)を開発し、それを用いた試行授業を数回実施し、データの収集を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、研究代表者の大学における職務上の負担が増え、当該研究課題に費やせる時間に制限が生じたため、コロナ禍による研究の遅滞を取り戻すことが難しかった(文献研究および試行授業の実施と結果の整理や分析を計画通りに行なえなかった)。そこでさらに一年の研究期間延長を申し入れ、次年度に本研究において明らかにしたかった課題「文学教育による論理的想像力の涵養の可能性」について総括することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に口頭発表や研究論文によって発表した内容を見直した上で、2022年度に一旦「論理的想像力」という新しい概念の定義を試み、口頭発表を行なった。しかし、本研究課題で明らかにしたい「論理的想像力」について、より実証的に、より具体的な形で明確な定義づけを試みたい。
|
Causes of Carryover |
研究期間の延長を希望したため、2023年度に執行する予算として繰り越すこととした。
|
Research Products
(2 results)