2020 Fiscal Year Research-status Report
ロマン主義的想像力の方法論史―18世紀ニュートン・パラダイムの帰納主義と仮説思考
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18K00439
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
中村 仁紀 大阪医科大学, 医学部, 講師 (30582564)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コウルリッジ / ロマン主義 / 科学哲学 / 経験科学 / 方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、今年度は18世紀経験科学に由来するS. T. コウルリッジの方法論上の問題意識が19世紀中期の科学哲学にどう流れ込んでいったかを検証する予定であった。これは当研究テーマである仮説概念の思想史上の位置付けをより長期的な視座で捉えるためのアプローチとして設定したものである。しかし校務の関係で研究時間に制約がある中、若干の軌道修正をし焦点をある程度ロマン主義時代そのものに絞った研究に切り替えざるを得なかった。 具体的に行った研究は主に以下の二つである(下記の二つのテーマは全く学問領域が異なるが、研究課題の中心的人物であるS.T.コウルリッジがこうした複数の領域にまたがって共通の方法論を実践しているように、いずれもロマン主義における仮説の運用のあり方およびその射程の広さを検討する上で重要なものである)。
・ロマン主義において生命科学における「生命」概念がコウルリッジ、シェリー、ブレイクなどの作品や論考の中でどのように表象されているかを確認し、とりわけ経験科学の方法論に基づいてその受容のされ方を整理した。現時点では一次・二次文献の整理の段階にとどまるが、来年度以降に論文としてまとめる予定である。
・リベラル・アングリカニズムの伝統、啓蒙主義時代の歴史学、あるいはヴィーコやミシュレらの歴史観を踏まえながら、イギリス・ロマン主義においては歴史生成のあり方がどのような原理や説明モデルで提示される傾向にあるのかを考察した。これは前年度から引き続いて論文執筆を行っている課題であるが、こちらも来年度以降にまとめて投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上記の通り研究時間が十分に確保できず、また2020年度は研究対象の射程や問題設定を少し見直す予定もあったが、結果的にはそうした時間をかけた取り組みや軌道修正をする余裕もなく2019年度の成果の継続的な研究に留まった。2020年度は最終年度であったが期間延長を申請し承認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は19世紀の科学哲学(W. ヒューウェルが中心)の発展にロマン主義の思考様式がどのように関わっているかに焦点を当てた上で、コウルリッジを軸にしながらロマン主義時代の複数の学問領域(言語、歴史、政治)でのその萌芽のあり方を確認・考察する。
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Causes of Carryover |
2020年度は大学業務の関係で研究に多くの時間が取れず、計画通りに研究費を使用することができなかった。またコロナ禍の影響で出張費を使う機会がなかったことも次年度使用額が生じた理由である。当該助成金は主に資料調達と英文原稿校正に充てる。
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