2022 Fiscal Year Research-status Report
ロマン主義的想像力の方法論史―18世紀ニュートン・パラダイムの帰納主義と仮説思考
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18K00439
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 仁紀 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (30582564)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コウルリッジ / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、18世紀末から19世紀初頭にかけての経験科学がロマン主義との間で共有している方法論上の問題意識がどのように展開したかを大きなテーマとしつつ、具体的な論証にあたって、以下の二つの問題に取り組んだ。 1)S. T. コウルリッジが主張するような、自然や社会の現象を「原理」から説明する仮説演繹的思考の実践が、いかに彼自身の読者啓蒙のアプローチの中でジレンマを抱えながら現出しているかを、彼の1810年代のジャーナリズム活動と哲学的著作群との関連の中で考察した。成果はイギリス・ロマン派学会でのシンポジアム、および『イギリス・ロマン派研究』に掲載された論文で発表した。 2)1820年代以降の英国内で発展した生理学や解剖学(J. H. GreenやR. Owen)がカント的な統制的原理でもって生命現象を理解するに至った道筋を辿りつつ、それがコウルリッジの国家観において社会や国家を理解するメタファーとしていかに転用されていったか、またそうした彼の国家観がいかに1830年代以降の英国内の“constitution”概念をめぐる議論にも寄与しているか、その影響の射程も考察した。成果は論文として執筆中であり、2023年度中に学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
校務および学会事務局業務で十分な研究の時間が確保できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は「研究実績の概要」で記した2)のテーマを中心に論文執筆を進めつつ、総括として18世紀末から19世紀前半の生命科学の方法論とロマン主義における思考様式との間に見られる影響関係や緊張関係を取りまとめる。とりわけ自然現象・生命現象を理解する上で想定されている「原理」という概念が生理学、解剖学、化学、電気磁気学等の当時の科学言説の中でどのように機能しているかを分析しつつ、同時代のロマン主義と親和性のある複数の学問領域(歴史、道徳、宗教、言語など)の中でそれがどのように適用されて現れているかも考察する。
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Causes of Carryover |
2022年度も研究以外の業務(校務、学会運営など)のため計画通りに研究を進めることができず、予定していた経費も使用しないものが多く発生した。次年度に繰り越した分は文献の調達、出張費、英文原稿校正に充てる予定である。
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