2023 Fiscal Year Annual Research Report
Romantic Imagination and the History of Methodology: Inductivism and Hypothetical Thinking in the Eighteenth-Century Newtonian Paradigm
Project/Area Number |
18K00439
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 仁紀 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (30582564)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コウルリッジ / 想像力 / 仮説 / 体質/体制(constitution) |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍により3回の延長申請を経て最終年度となった2023年度は、サミュエル・テイラー・コウルリッジの想像力概念を支えている経験科学的な「仮説」思考の実践例を2つ考察し、それぞれを論文にまとめ公表した。 1)1800年代のコウルリッジが個人ノートで頻繁に行っていた類義語区別(desynonymization;これまで混同されてきた類義語を明確に区別しつつ、両者の関係を原理的に考察することで、洗練された哲学言語体系を作ろうとする試み)が当時の文献学ベースの語源研究だけでなく、A・ラヴォアジエやH・デイヴィら化学者たちの元素観に影響を受けていることを跡付けた上で、それがいかに1810年代以降のコウルリッジの観念論的弁証法へと発展しているかを論じた。 2)コウルリッジの最後の出版作品であるOn the Constitution of the Church and State (1829)における“constitution”(「国家体制」)概念が、伝統的な政体/生体のアナロジーに依拠しながら、同時に19世紀初頭の生理学・病理学の知見に基づいて刷新された意味合いを備えており、それが彼の保守的な英国国家史観のアナロジーとして機能していることを論じた。 研究期間全体の成果としては、コウルリッジ中心の研究が多くなったため当初予定していた対象範囲を網羅することはできなかったが、それでも文学批評の言説におけるワーズワス詩学の思考様式、19世紀初頭のメディアにおける読者像構築の問題、19世紀前半のビルドゥング(形成・教養)概念の科学史的文脈等、ロマン主義パラダイムにおける仮説思考の射程や可能性について様々な角度から考察したことにより、今後さらに深く考察すべきテーマや論点をいくつか提示することができた。
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