2018 Fiscal Year Research-status Report
An Interdisciplinary Reconsideration of Sensibility from a New Perspective on Sense(s) and Affect in the Long Eighteenth Century.
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18K00441
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Research Institution | Tohoku Bunkyo Junior College |
Principal Investigator |
阿部 裕美 (今井裕美) 東北文教大学短期大学部, 総合文化学科, 教授 (10248726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 恵 東北生活文化大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50341730)
梶 理和子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (60299790)
川田 潤 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70323186)
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感受性 / 感覚/感性 / 肉体・精神・魂の関係性 / 科学言説 / 宗教言説 / ジェンダー構造 / クウィアな主体 / 「文学」の機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、国内外で重要な成果がもたらされている18世紀の「感受性」研究を、いわゆる「長い18世紀」という長いスパンで、肉体・精神・魂の関係性と感覚/感性の変容という観点から、学際的に再検討することを目的としている。1990年代以降、医学言説を踏まえ、感受性の考察には、精神だけでなく身体との結びつきが重視されているが、本研究は従来とは異なる観点から精神性と身体性の関係を見直す。具体的には、科学、宗教、ジェンダー言説など諸言説と感受性の関係性に着目しつつ、① 肉体・精神・魂の多様な関係性の文化的状況を再構築し、② 感覚/感性がもつ意味/に対する評価の変容と多様化の過程を明らかにし、③ 18世紀後半から提起され始める「文学」の果たす新たな機能、および文化的意味を明らかにすることを目指す。 研究の第1段階として、「感受性」の意義や機能に関し、(1) 17世紀後半の科学、宗教の観点から詩、演劇の研究、(2) 18世紀の宗教、哲学等の観点から詩、演劇、小説の再検討、(3) 19世紀初頭の詩、小説との通時的観点から、感受性の果たす役割の差異と類似性の検討を目標に掲げており、H30年度においては、第73回日本英文学会東北支部大会におけるシンポジュウム実施(今井、梶、吉田)、そして川田、吉田の学術論文発表により、従来よりも広い文化的文脈の中での感受性の役割を明らかにした。これらは、第2段階として想定している研究代表者・分担者間での初期段階の成果の議論とそのまとめ、さらに研究協力者(文学以外の歴史、哲学、科学、宗教等の研究者)との意見交換を含めた研究会開催のための準備段階の成果に相当する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究の第1段階として、「感受性」の意義や機能に関し、本研究の研究者5人全員で最新の理論的な成果および具体的な作品分析の事例についての情報共有を図り、その上で、各自の課題について確認を行った。その上で、以下の3点からそれぞれの専門分野に近い研究を相互に情報交換をしつつ行った。 (1) 17世紀後半から18世紀における、科学、宗教、およびの商業の観点から詩、演劇の研究を行った。具体的には、ケンブリッジ・プラトニストと王立協会について、詩および散文を分析する一方で、演劇をとりかこむ/表象される言説における欲望に注目し、人びとのセンスとテイストという観点から、感受性の揺らぎについて分析を行った。(2) 18世紀の宗教、哲学、政治等の観点から主に小説の再検討を行い、この時期、イギリスが財政=軍事国家となることに注目した上で、「信用」がどのようにセンシビリティと関係しているのかを検討する一方、小説に表象される共感、同情、自己憐憫といった感情表現とセンシビリティの関係性について分析を行った。(3) 19世紀初頭の小説について、18世紀における演劇や絵画との関係性において、感受性の果たす役割の差異と類似性の検討を行った。 これらの研究の成果の一部は、第73回日本英文学会東北支部大会におけるシンポジュウム(今井、梶、吉田)、および川田、吉田の学術論文発表において公にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、ひき続き各研究者レベルでの調査・分析活動を継続しつつ、第2段階として想定している研究代表者・分担者間での初期段階の成果の議論とそのまとめ、さらに研究協力者(文学以外の歴史、哲学、科学、宗教等の研究者)との意見交換を含めた研究会開催準備を本格化させる予定である。これらにより、近代商業社会における「感受性」の問題が美意識、共感、理性などと結びつき新たな価値観の文化的形成過程でいかに機能したか、洗練と狂気の相反する特性が付された「感受性」が新たな商業社会の新旧支配階級(間)においていかに争われていたかを確認する。 また、本研究の第3段階として、研究代表者と分担者の専門を横断する形での研究成果発表を想定し、「感受性」を17世紀にまで遡る肉体・精神・魂の問題との連続性をもったものとして全員が再検討するとともに、19世紀初頭まで続く、認識、意識の変化を伴う新しい社会構造の基盤をもたらすものとして再検討する。それによって、「感受性」が肉体・精神・魂、そして感覚/感性の変容において果たした役割を明らかする。また、このような成果を踏まえ、18世紀後半から19世紀初頭の文学と社会の関係性に対する問題意識(社会変動が激しい時代の人間性の回復における文学の役割)が、現在という地点において、どのように継承され/断続しているのかも明らかにする予定である
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Causes of Carryover |
今年度における研究費使用状況における差額については、研究の進捗状況により、予定していた旅費や人件費・謝金の一部に未使用が生じたり、購入予定の書籍・消耗品等に当初予定との違いが生じたためである。その差額実質20万円については、差額が大きく生じた分担研究者に配当する措置を取り、次年度予算と合わせて、旅費や人件費・謝金などに上乗せする形で研究計画にあった形での使用を予定している。
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Research Products
(6 results)