2021 Fiscal Year Research-status Report
20世紀ドイツ児童文学における「おじさん」表象の変遷についての研究
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18K00446
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 文彦 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (30452098)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 児童文学 / おじさん / 父娘関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は延長を申請した本研究の最終年度であり、また、研究代表者が前年度に行なったサバティカル研修の成果も含めて、本研究の成果を集中的にまとめて公開する予定であった。しかし感染症の流行継続にあって予定していた研究の成果発表のための旅費(とくに外国旅費)を使用することがかなわず、当初計画の変更を余儀なくされた。その結果、本研究に対する補助事業期間の再延長を申請し、令和4年度末まで1年間の再延長が承認された。したがって本研究の総括的な成果発表は来年度に持ち越されることになった。しかし本年度中にも雑誌論文2件、学会発表1件の研究成果を発表することができた。 本年度に発表した論文の特長をもとに本年度の研究の深化について述べると、本研究の主要テーマである「旅するおじさん文学」に関する研究を、ケストナーの知られざる作品に即して考察した点が挙げられよう。両大戦間期ドイツでは異質な空想的児童文学をもおじさん文学に引き付けて考察できたことは、本研究の広がりを保証するものと考えられる。 同じくケストナーの作品を中心に、クリスマス児童文学における父親あるいはおじさん表象を1933年という時代状況に関連させて考察した論文では、ややもすると家族内の人間関係の分析に終始しがちな本研究に社会性や時代性を付与することができた。なぜなら1933年はナチスが政権を掌握した年であり、この年の児童文学に描かれた男親を論じることは、その背後に国父、すなわち強い父親像を体現しようとしたヒトラーの姿が見え隠れするからである。 この態度は、おじさん的存在の軽視と濃密な父娘関係に特徴づけられるナチス少女文学の研究にも通底する。研究代表者が本年度に行なった学会発表は、本研究を発展的に継承したテーマであり、この学会発表が契機となって、令和4年度からナチス少女文学における父娘関係についての科研費を新たに獲得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、20世紀ドイツ児童文学に描かれたおじさん表象の分析を通じて、近代家族制度の変遷とその多様化の実態の解明を目指すものである。本年度は延長申請後の最終年度として、海外で開催されるものを含め複数の学会等において成果を公表する予定であった。しかし感染症の流行継続により、また、それに伴う社会情勢の変化により、当初計画の変更を余儀なくされた。その結果、本研究に対する補助事業期間は令和4年度末まで1年間再延長されることとなった。3年間での遂行を妥当としていた本研究を1年延長し、それでも再延期せざるを得なかった点で、現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している。」とは言い難い。 しかし本研究は、研究代表者がサバティカル研修中だった前年度に、当初想定していた「おじさんと甥あるいは少年」の関係のみならず、「おじさんと姪あるいは少女」の関係にまで考察の対象を広げた。そして今年度は、ヒトラー政権が喧伝する家父長的家族像を背景に、近代性や都市性を体現していたおじさんに代わり、従軍経験のある、農業に従事する父親像がクローズアップされるナチス少女小説について論じることができた。上述の通り、研究代表者は令和4年度からこのテーマでも科研費を獲得している。 以上の通り、本研究の最終年度に行なうべき成果発表のあとの道筋がすでに立っている点を重視し、現在までの進捗状況は「遅れている。」ではなく「やや遅れている。」を選択できると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
再延長後の最終年度に当たる次年度は、これまでの研究成果とすでに準備を終えたものの、いまだ公表していない研究成果(具体的には、両大戦間期ドイツ児童文学に見られるドイツの子どもとジプシーの子どもとの交流および両者の家族像の相違について)を接続し、おじさん文学を中心に据えた両大戦間期ドイツ語児童文学に関する研究書の書籍化を目指す。 加えて本研究を発展的に継承した新たなテーマ「父娘関係を背景にしたナチス少女文学の成立と展開についての研究」への接続を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由)感染症の流行により、研究の成果発表のための旅費(とくに外国旅費)が使用できなかったため。 (使用計画)次年度も旅費での使用は困難を伴う可能性が高いため、本年度に購入できなかった文献および今後の研究計画遂行の過程で生じるであろう不足文献の購入に充てることも想定している。その他、本研究の完成(書籍化)のために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)