2020 Fiscal Year Research-status Report
ダイクシスの動的側面への認知類型論的アプローチ:日韓英の指示詞と関連表現を中心に
Project/Area Number |
18K00541
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
小熊 猛 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (60311015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 智賢 宮崎大学, 多言語多文化教育研究センター, 准教授 (40612388)
井筒 勝信 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70322865)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイクシス / 指示詞 / 動的要因 / 方向性要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、指示詞の使い分けを包括的に対照分析することで、指示詞選択メカニズムの異同の本質に迫り、認知言語学的類型論に寄与することを目的とする。指示詞および指示表現は伝統的に指示対象の静的位置関係に基づいて特徴づけられるが、本研究は、指示対象が話者に「近づく・離れる」あるいは話者が指示対象に「近づく・離れる」といった〈動的〉要因、更には指示対象が話者の視線に正対するか否かという〈方向性〉要因を考察の中心に据え、映像提示実験によって指示詞選択の原理を探り、検証する。 被験者に近づいてくるバス(バス正面が見える)と離れていくバス(バス背面が見える)が行きちがう場面の視覚刺激を与えて、近称指示「このバス」"this bus"それぞれの指示を実験調査した。視覚提示刺激としは、3種類の静止画像と、2つの動画を用いた。静止画像は、(1)離れていくバスがより近くに大きく描かれたもの、(2)向かってくるバスがより近くに大きく描かれたもの、(3)2台のバスが横並びに同じ大きさで描かれているもので構成される。動画は、(1)の配置から2台のバスが時間経過とともにそれぞれ進行方向に前進し、(3) の配置で終わるもの(4)と、完全に行きちがい(2)の配置に至るもの(5)から成る。日本語母語話者の一部が(3)の指示に戸惑うとする一方で、英語母語話者は(1)-(3)すべてで指示の同定が難しいとする傾向が見られた。また、日本語話者が近称指示で距離的に近い方のバスを指示する傾向を示す一方で、英語母語話者は近づいてくるバスを指示する傾向が見て取れた。これらの観察については応募採択された国際会議(INPRA 9)にて発表することになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため、当初予定してた対面での実験調査が実施できず、予備的な調査に留まっている。興味深いデータが確認できているものの、より多くの被験者を対象とした調査によって、現在の分析の妥当性を検証する必要がある。併せて、国際会議での発表ができないこともあり、他言語研究者からの十分なフィードバック等が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本来はIpad等の電子機器端末を用い、開発した直示概念実験支援システム(DeicCESS)にて視覚映像刺激を提示し、指示詞選択を調査する予定だった。日本語、英語を問わず対面での調査の見通しがたたないため、2020年度に直示概念実験支援システム(DeicCESS)のプログラム開発をお願いした業者に、オンライン上で調査およびデータ回収ができようにプログラムをアップデートするよう依頼し、ほぼ問題なく稼働する段階にある。今後はこの改変した直示概念実験支援システム(DeicCESS)のプログラムで調査を進める。
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Causes of Carryover |
研究発表を予定していた国際会議2件がいずれもコロナ禍のため、延期されたため。
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Research Products
(4 results)