2021 Fiscal Year Research-status Report
A Syntactic Study of Null Arguments in Japanese Sign Language
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18K00576
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤巻 一真 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (60645985)
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本手話 / CL / tracing-SASS CL / RS / 項削除 / 空目的語 / 動詞句削除 / 手話通訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、以下の3点であった。(i) 日本手話のネイティブサイナーの言語知識の一部を日本手話における空項の指示現象から明らかにすること。(ii) 本研究の成果を,日本手話の「音形を持つ指示表現」の言語的記述研究へも,還元すること。(iii) 日本手話からの知見が言語教育および言語理論の発展に寄与することを,正式な形で社会に発信すること。 上記(i)に関し、本年は、CL動詞およびレファレンシャル・シフト(以下、RS )を伴う文の削除と空項解釈に関し研究を進めた。CL動詞、特に tracing-SASS CL( 以下、tSASS-CL)を伴う動詞を取り上げた。アメリカ手話のCL動詞がCLの種類に応じ、その動詞の結合価を変え、それにより異なる動詞句構造をなす(Bebedicto and Brentari 2004)およびt-SASS CL は動詞的要素と結合しない(Sandler and Lollo-Martin 2006)に対し、日本手話のtSASS CLは動詞と結合するが、その結合価は変えないことを観察した。また、tSASS CL動詞を含む削除文の解釈は、従来の項削除分析でも動詞句削除分析でも説明できないことを指摘し、tSASS-CL動詞は先行文と同じ構造の一部を削除して派生するものではないことを示した。また、RSを伴う文の削除文では、非手指表現としてのVP様態副詞相当表現の動詞への波及に関し、[+RS]素性のc統御領域との関連性や空目的語がpro(something)と解釈されるケースについても観察・議論した。 上記(ii)に関しては、音形のある指示表現として文末指さし(PT)の指示性に関しての議論を行った。 上記(iii)に関しては、上記(i)-(ii)の成果をそれぞれ国内学会で公開した。また、ろうの参加者も想定し、全ての学会発表には手話通訳をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況としては概ね順調であったが、コロナの影響で、出張旅費を伴う成果発表ができず、想定外に旅費を残すことになった。研究成果を論文としてまとめることが年度内に間に合わなかったため、こちらは次年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で扱ったtSASS-CL動詞やRSを伴う文は事実がかなり複雑であることも、本年度の研究から分かったところである。来年度は、より慎重な事実確認のための追加の調査を行いながら、論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、コロナにより計画していた研究打ち合わせおよび成果発表のための出張が、オンライン発表等に変更され、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、論文執筆のための追加調査およびこれまで収集したデータを効率的に視聴できるようにするデータ整理に使用する(謝金:専門知識提供者であるネイティブサイナー、手話通訳、学生アルバイト各1名)。
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Research Products
(4 results)